第7話 レイ子とミキ
レイ子はそろりと少しドアが開く気配を背中で感じたが、なるべく振り返らないようにした。ミキの視線を感じる。きっと現実を受け入れるために状況把握をしているのだろう。ミキの行動を待つことにした。
「あの・・・。本当に私の守護霊をやってらっしゃる方なんですか?」
ミキは部屋に足を踏み入れないまま、ドアの隙間から話しかけてきた。
レイ子は背中を向けたまま答える。
「そうだよー。てかミキちゃん的にあたしどうするのがいい?顔向き合うのとか怖い?」
「あ…、一応確認なんですけど、さっき鏡越しに一瞬しか守護霊さんのこと見てなくて。あの、目玉飛び出てたりとか顔面血だらけとか…」
「あーー、ないない。大丈夫。」
「あっ、なら良かった…です。……い、今ホットミルク作ってるんですけど守護霊さんも飲みます?」
「あーー、ごめん、霊だから触れないんだよね。お気遣いありがとう。それと、あたし、レイ子。敬語じゃなくていいよー」
言いながら、レイ子はミキのほうに顔を向けた。
ミキは小さく肩をぴくりと動かし身がまえた表情を見せたが、レイ子の笑った顔を見てすぐに笑顔を返した。
レイ子はホットミルクをいらないと言ったが、ミキはマグカップを2つ持って戻ってきて、1つをレイ子の前に置いて言った。
「これ、お供え的な…いつもお世話になってます。」
その言葉にレイ子は思わず吹き出す。
「あはは!ミキちゃんおもしろい~かわいい~!…でもね、私ミキちゃんの守護霊になったのって最近なんだよね。正直、まだ全然お世話してないの。」
「え、そうなの? でも私なんとなく誰かがそばにいてくれてるような気がして…。それが何なのかわかんなかったけど、セージ焚いたり鐘の音を流して空間を浄化しようとしてたんだけど…」
「…!」レイ子の表情が曇る。それはこの一週間、レイ子が考えあぐねていたことだ。
「ミキちゃん、実はさあー、この部屋ね、あたしより先に同居人がいるんだよね!よくわかったね!」
レイ子はミキがなるべく怖がらないように明るく言ってみたが、あまり意味がなかった。
港区女子のレイ子さん @mitsuki-c
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