第7話「孤立」

『××月 ××日 ××時 ××分

 録音件数が一件です。


 ――――プー


 あっちゃん、元気にしてるかな?

 もうクリスマスもとっくに過ぎちゃったね。

 クリスマスまでに終わるっていうのはなんだったんだろう……。


 戦争、全然終わる気しないよ。



 今ボクは南の島にいます。

 なんか旅行のパンフでよく見るハワイやグアムみたいな、もうイメージどおりな南の島、

 敵がそこに立てこもっているっていうんで、ボクたちがそいつらを追い出すために上陸しました。


 いいところだね、南の島!

 でも新婚旅行にここに来るのはやめておくよ。

 めっちゃ怖い目にあったから。


 ……上陸戦って怖いんだね。

 上陸艇が浜辺に乗り上げて前の板が降りた時、バリバリバリ! って機関銃で撃たれたんだ。

 ボクの前の列にいた奴等がみんな死んじゃった。


 戦場で死ぬか生きるかなんて運なんだね。

 ボクよりずっとベテランばっかり死んじゃった。


 そんなボクにも部下ができたから、ビビってばかりいられない、とにかく走ったよ。

 走って伏せて撃って手榴弾を投げて……あとなにをしたっけな、よく覚えてない。

 気が付いたら顔が血で真っ赤に濡れていて……大丈夫、ボクの血じゃなかったから。

 でもあの血、どこで被ったかな……全然覚えてないや。


 とにかく上陸には成功したけど、その後がちょっとダメだった。

 あいつら、島にある高い山をものすごい砦にしやがっていたんだ。

 ボクたちの戦力じゃ到底太刀打ちできないくらい。


 引き返そうにも、制海権……わかるかな、海が敵の軍艦ばっかりになっちゃって、味方の船が来ないんだ。

 山の要塞と海の軍艦に挟み撃ちのできあがり。


 あいつらを孤立させるために送られたボクたちが、気が付いたら孤立しちゃってた。

 どうしよう。


 ――ピ――

 ――録音された内容の再生が終わりました。残り録音件数、0件です』

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