きょう何食べたっけ

第1話 玉虫色のボトル

角度によって色が変わるとか、玉虫じゃん。

これは一体何色？苦労して手に入れたマニキュアを手の中で転がしながら光に翳す。

ピンクに見える。けど、ボトルを傾けるとオレンジ。もっと傾けると金色っぽい。メタリックな金色の感じが玉虫っぽいなぁ。

こんな色が今の流行りなのか。

こんな色、昔は無かったよなぁ。ビックリするわ。

不器用なヤツにとって左手で右手に塗るのって難しいんだ。利き手じゃないんだから、ガタつくのもムラになるのもしょうがない。

塗り終わった両手を電気に翳す。

LEDじゃない、煙草のヤニで黄ばんだ昔ながらの蛍光灯。

きったな。

爪からはみ出して指先が全体的に玉虫になったわ。

それに臭すぎて鼻が痛い。こんなに臭かったっけ。

まぁ、苦労して手に入れたから大事にするけどさ。無くなったら悲しいし。

この臭いどうしようかな。頭まで痛くなりそうだ。

玉虫色の指先で煙草をつまみ、火を付ける。

マルメンと混ざって最悪。

一口吸うごとに指先からシンナーみたいな臭いが流れ込んでくる。

あの時は臭いなんてしなかったけどな。

この色だってもっと素敵に見えた。

やっぱり全然違うなぁ。

白くて細い指してたもんな。

『あれ？マニキュアどこ置いたっけ』

可愛い声がイヤホンから聞こえてくる。あー、探してるんだな。

手のひらで玉虫色のボトルを転がす。

『とりあえずご飯作んなきゃだーめんどくさいなー』

そうだ、俺もご飯作らないと。

マルメンを押し潰して、玉虫色のボトルを飾る。

香水のボトルと当たって高い音がなった。

きょうのご飯は何にしよう。

挽き肉あるからハンバーグでいいか。

可愛い声に倣うことにした。