一匹狼と噂の銀髪ガールは超がつくほど人見知り、なのに何故か俺に懐いてます!?

花見 はな

第1話雨と銀髪ガールと俺

ザーッ、、、ザーッ、、、


「はぁ、バイト終わりで雨って最悪かよ。」


この所梅雨の時期なのに晴れ続きで油断していたせいか、雨に対する絶望度は高かった。

正直誰かに迎えに来て欲しい気分だったが歩いて帰った方が早いので、靴が濡れることを覚悟し店を出て歩き始める。

思ったよりも外は寒く、薄着な事を後悔し震えながら歩みを進めていると俺が歩く予定の道の脇に大きな物体がある様に見えた。


(んー、ゴミでも転がってきたのか?)


俺は深く考えず避けて通ろうと考え、そのまま歩き続けた。

その間もずっと雨は降り続け何となく強くなった様な気もし、もう手遅れな靴に不快感を募らせているとさっき見つけた大きな物体の近くまで来ていた。

微かな街灯の光がその物体を照らし、俺が目に力を込めた瞬間俺の目に映ったのはゴミでは無く人だった。


「えっ、マジかよ!?」


こんな大雨の中、傘もささずに道にうずくまっている様に見え無事かどうか確かめようと急いで近づく。

近づいてみるとうずくまっている人の容姿が見えてきた。

長い銀髪に制服姿、俺が近づいたのが分かったのか俯いていた顔を上げ鋭い眼光で俺の事を見つめてくる。

何となく狼を連想し、保護しなければと思ってしまう。


(綺麗な髪だなぁ。じゃなくて、震えてる助けねぇと。)


俺は彼女にもっと近づき自分がさしていた傘で雨から守り、タオルを差し出し彼女に話しかけた。


「えっと大丈夫?

その、綺麗な髪がずぶ濡れだし、このままじゃ風邪引いちゃうから俺の家で雨宿りする?」


初対面でキモイ事を言っている自覚はあったがお節介な性格もあわさって見て見ぬふりなんて出来なかった。


(あー、いきなりこんな事言われたら怖いよな・・・。)


彼女からの返答が無いまま沈黙の時間が続く。彼女の様子を伺うとさっきの鋭い眼光が揺らいだ様に見えた瞬間、彼女は何も言わず走り去ってしまった。


「えっ、ちょっ!待っ・・・。」


俺が到底追いつけない様なスピードで去ってしまったので立ち尽くしてしまう。


(はぁ、やっぱりキモかったか・・・。

まだ雨振ってるし、気をつけて帰って欲しいけど。)


俺は落ち込みながら、道を歩き家に着いた。


「ただいまー。」


時刻は夜の9時、親も俺の妹も帰って来ている時間だが誰も返答してくれず静かな玄関で靴を脱いでいると。


「あー、お兄ちゃんじゃん。おかえり~」


俺の妹である【高原夕希 タカハラ ユウキ】茶髪のボブヘアーで少しつり目ゆったりとした口調で兄を小馬鹿にする。

夕希がスマホを弄りながら玄関に来た。


「おかえり~じゃなくて、雨に濡れたお兄ちゃんに何か言うことあるでしょ??」


「んー、あっ!家の中に水滴落とさないでよ~。」


「まぁ、それも合ってるけど違うだろ!

タオル持ってくるとか風邪引かないように心配するとかさ・・・。」


「たしかに~、じゃあお大事に~。」


「ちょっ、頼む妹よ、タオル持ってきて下さい。」


「も~、最初から言ってよ~。

ちょっと待ってて。」


鈍感なのか俺を試しているのか、よく分からない夕希がタオルを取ってきてくれてる間も俺は彼女の事を考えていた。


(あの子も家に着いてちゃんと温まったり出来てんのかなー?)


ぼーっとしていると夕希が俺の頭にタオルを投げつけてくる。


「ほら持ってきたよ~、なんかぼーっとしてるけど大丈夫?」


「ん、あぁ、ありがとう!

大丈夫、さみぃから風呂入ってくるわ。」


「はいよ~、あっ、お母さん達今日は会社泊まるって。明日の朝ごはんとかテキトーに食べとけって。」


「おー、了解。

じゃおやすみ、夕希。」


「んー、おやすみ~。」


夕希が自分の部屋に戻っていくのを玄関から見送り、タオルで体やバックを拭いていく。


(あーあ靴もびっしょり、明日学校なんだけどなぁ。)


明日の事を思うと憂鬱になり、さすがに寒くなって来たので風呂に入り今日はさっさと寝ることに。

寝る間際でさえ彼女の事を思い出し、彼女が風邪を引いていないことを願っていたらいつの間にか寝てしまっていた。


朝になりいつも通り部屋で準備をし、朝飯を食うためリビングに向かうと夕希が既に食べている所だった。


「おはよ。」


「はよ~、風邪引いてないみたいじゃん。」


「まぁ、心配してくれた妹のおかげかな。」


「うわ~それはちょっとキモイ‪w」


「はいはい、今日は一緒に学校行くか?」


「んー今日はいいや、じゃ先行くからよろしくね。」


「気をつけろよ~。」


夕希が先に出て、俺も続いて学校へ向かう。

昨日の事をまだ思い出すが今から向かう学校が憂鬱で直ぐに消えてしまい、そのまま忘れてしまった。

そのまま俺は雨の日の彼女を思い出す事無く数日過ごしていたが、出会いはまた突然にやってきた。

いつも通りに学校へ行き授業を受け帰っている途中、後ろから声をかけられた。


「あっ、あの・・・。」


俺は振り返り声の主を見た瞬間驚いてしまう。俺の目線の先には雨の日に出会った、あの銀髪の彼女が居たからだ。


「あっ、あの時は逃げて、ごっ、ごめんなさい。あんなに優しくしてもらったの久しぶりで、その、わっ、私と友達になってください!!」


いきなりの告白でびっくりしてしまい、反応出来ずにいた俺だが彼女の体が微かに震えているのに気づき俺は直ぐに返事を返した。


「大丈夫だよ!

俺の方が不審者みたいでごめんね・・・。

俺も友達になりたいなって思ってたんだ!」


俺が笑顔で答えると彼女は安心した様子だったが、恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見てくる。


「えっと、お名前教えてもらえませんか?」


そう俺らはまだ自己紹介もしていない仲、あの雨の日の出会いが俺らの人生を大きく変える出来事だったなんてまだ気づいていなかった。






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