長編ばかり書いている僕のような人間からすると、この無駄のなさ、巧みなドラマのバランス展開には圧倒されます。以前拝読した際の記憶が明瞭でしたので、途中からの拝読だったのですが、これは凄いとしか言えません。
『ある人物』の『ある出来事』に関わる物語を一旦描き、そこに至る過程を、周囲の人々の目線で描写する。短編でしかできない展開だと思います。
その一つ一つに込められた人々の想いたるや、絶句してしまうような切なさに満ち満ちています。
しかしそれは、描写がくどいとか、同じことを繰り返している、というわけではありません。逆に、不要な描写を削り切ってこの世界を描くことで、逆に読者の想像に任せ、心にじっくり染みこませるという超高度なテクニックが自然と用いられており、正直なところ憧れます(;^ω^)
圧巻の一言に尽きます。