daydream story

病窓の夢


「由香、映画どうだった?良かった?」


 俺たちは上映が終わって外を歩きながら、今日観た映画の感想を話す。

『覆って隠して願って』ってタイトルの恋愛物で恋人の片方が、病気にかかるんだけど、それを最後まで隠すってありきたりな話。ちなみに俺はスパイ映画が観たかった。

 まぁ由香が喜んでくれるなら良いや。


「良かったよ。ありがとう。でもさ、主人公が病気のこと隠すのわかんないんだよね。私だったら話してほしいって思う。好きなんだから、かっこいいとかどうでもいいって思っちゃう。健くんはどうだった?」


 由香とこうやって1日を過ごす時は、足が軽くなって空が綺麗に見えるなと思う。付き合って2年目になった今でも。俺の知らない事を知っていて、俺の出来ない事を出来る。そんな由香の事が大好きだ。

 由香と歩いてる時のペースで、普段も歩くようになってしまった。


「俺はさ、主人公の気持ちがわかるよ。好きな女の子の前ではかっこよくしたいじゃん」


「でもさ、それは男の子の論理でしょ。そんなの分からないじゃん。私だったら全部話してくれて、最後の瞬間まで一緒にいたいって思う」


「そうだね。じゃあ俺が主人公みたいに病気になったら、全部話して最後まで由香と一緒にいるよ」


 こうやって由香の感想を聞くのいいなぁって思う。二人で手を繋いで歩いていく。


「じゃあさどこが1番好き?」


「私はお父さんが主人公ために小説用のパソコンを買うところかな。元カノと喫茶店で話すとこも雰囲気出てて良かったけど」


「あ、俺もそこ好き。青信号で棒立ちになるお父さんの背中が、なんか分からないけど良かった。手に電気屋さんの紙袋持ってんのがなんかさ」


 違う意見の時も、同じ意見の時も、いつだって由香といたいと思う。何も隠さずに何も覆わないで由香といたい。由香の前ではかっこよくありたい。


「由香、就職決まったら一緒に住もうよ。それでずっと一緒にいよ」


「うん、いいよ。健くんと一緒なら私は幸せだもん」




 由香一緒に生きていこう 幸せになろう。僕は眠っている。白い天井を眺めながら。なんでここにいるんだろう。


終わり

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覆って隠して願って 土蛇 尚 @tutihebi_nao

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