第?話 うま娘 現る?!

---【注意!!】---番外編です


高くそびえ立つ城壁。


その前には「百人近く」はいるであろう

屈強な兵士達が彼らの到着を待ち構えていた。


「あれー?、、話が違うんですがぁ、、、」


ルシフ達は「ある依頼」のため

その城の前まで来ていた。


それは「とあるゴブリン族の長」からの依頼で、

人間達が村に攻め込んできて、子供達を拐って行ってしまったので

「どうかその子らを取り返して欲しい」というものだった。


「まぁ、最初からおかしいとは、、、思ってたんだよね。」


そう、この依頼には不可解な点がいくつかあった。


1つは、依頼を出したゴブリン族の長が「前払い」で報酬をギルドに預けた後に失踪し、それ以来連絡がつかなくなっていた事。

 

 通常そんな深刻な依頼であれば、成功率を上げるため「依頼成立後」にハンター達に少しでも多くの情報を伝えようと「当事者」が残るはずだ。


 任務の前に依頼者を含めた「作戦会議」が行われることも多々ある。

ギルド側からも、その旨は伝えられていたにも関わらず、長は行方を眩ませていた。


もう1つは、報酬である。


「報酬が金貨15枚とは変だと思ったんだよなぁ、、、」


ため息をつきながら、俯くルシフ。


ゴブリン達は通常あまり「通貨」を使用しない、彼らは普段「狩りや採集」をして暮らしている。

「上位種」ともなると、亜人や人間等「他の種族」とも交易を持つこともあるが、その際も基本は物々交換である。


ゴブリンからの依頼は、今までも何度かあったが、その報酬はやはり「採掘した魔石」や「干物にした肉」などの現物支給ばかりであった。


それを疑問に思わなかった訳でもないが、、、


現にこの地域では「ゴブリンの群れが襲撃される」という事件が何度か起きていたし、今回の報酬である「金貨」も“もしかしたら”この依頼の為に「一生懸命モノを売って」貯めたか「何処からか盗んできたもの」であるかもしれない。

 

モンスターや亜人の依頼者が多い

「ルシフ達が所属するギルド」でも、やはり

「現ナマ」のほうが依頼が通りやすいからである。


「こいつぁ、ハメられたなぁ、、、」


敵の前だというのに、馬車の中で酒を飲んでいた『ビリー』がひょっこりと顔を出した。


そして、感心しながら、、、


「しかし、悪知恵の働くやつがいるもんだ。真実にブラフを『ちょっぴり』かけ合わせる、、、。そうすりゃ相手は臆測で勝手に『都合良いように』信じ込むってな! わっはっはっは!」


こいつは「傑作だ」とばかりに大笑いした。


「どうする?引き返すか?」


まだ、笑いが収まらない様子のビリーが尋ねると、

ルシフはまた『ため息』を一つ吐いて答える。


「蒼ちゃんが城内に『分身体』を潜り込ませてるから、、それ次第だねぇ」


今回の件は『明らかに』ルシフ一行を狙った罠であったが、

もし、ゴブリン達が本当に捕まっているとするのならば

『それは助けなければならない』。


「行商人になりすまして、コッソリと、、、だったはずなのになぁ、、、」


そう言ってルシフは変装用に羽織ってたローブを渋々と脱いだ。


ーーー。


しばらくして、蒼の分身体から念話で連絡が入った。


『 “どうやら、ゴブリン達が囚われているのは本当のようだ。城内にはゴブリンの奴隷が目立つ、、、例の「子供たち」とやらはまだ見当たらないが、、、” 』


「りょーかーい。引き続き捜索よろしく〜」


そう言って、ルシフは武器を取る。


「行くのかい?」


まだニヤニヤしながら聞くビリーに、

ルシフは「ニカッ」っと牙を輝かせながらこう言った。


「ヒーローが、悪者を前に逃げる訳にはいかないでしょー!!」



ーーかくして戦闘は始まったーー


相手は百人規模だ。

こちらは「取り囲まれない」ように距離を取って、飛び道具や魔法で戦う。 


しかし、敵軍の動きがどうも怪しい、、、

圧倒的数を有して尚、突撃や展開する気配がない。


壁上の弓兵や魔道士による遠距離攻撃だけ、、、

歩兵は城壁前にベッタリだった。


「誘ってるな、、、」 

『ああ、弓にしろ魔法にしろさっきから攻撃が単調すぎる』


前線に出ていた蒼とルシフは

余裕な様子でその魔法攻撃を躱し

短刀で矢を叩き落としながらも

「敵の思惑」について探っていた。


『んじゃ、その誘いに乗ってみますかね』


2人の会話に返事をするよう呟いたのは、

少し後方からその様子を伺っていた『シゲ』であった。


緑色の髪を後ろに束ねた眼鏡の青年、

彼は『魔獣使い』だ。魔獣を召喚して戦う。

『魔獣使い』と言っても、彼と魔獣の間に主従関係がある訳ではない。


特に契約を結んでいる訳でもなく、、、

その都度の“交渉”で『召喚』の可否が決まる。


そして、その対価のは大抵は、、、


ーーーお金(現ナマ)である!!ーーー


もちろん、契約では無いので、

「安いから嫌」だの「眠いから無理」だの

交渉が失敗に終わることも多々ある。


その対応は魔獣によって千差万別だ。


そして、この日彼が呼び出したのは、、、


『出でよ!!ケンタウロス!!』


ーー彼の前に魔法陣が出現し、

激しい光と共に魔獣が召喚される!!ーー


「グワァぁぁ!あぁぁ、ふぁぁ」(欠伸)


それはそれは、眠そうな女の子だった。。。


女の子には「馬の耳」と「シッポ」が生えているが、

其れ以外は普通の人間にしか見えない。


「あ〜おはよ〜、シゲちぃ、ここ何処ぉ??」

女の子は寝ぼけ眼で、ムニャムニャと尋ねる。


『起き抜けに悪いけど「ひとっ走り」お願いできるかな??』


「う〜ん、むにゃむにゃ、、」


『人参10本でさ!!』


「人参っ!!」

そのワードに、急に興奮して飛び起きる女の子。

耳と尻尾はピンと立ち、まさに『全身』で

嬉しさを表現しているかのようだった。


【先程、対価は「現ナマ」と説明したが、例外もある。。。

 「単細胞」には「現物支給」が一番効果的なのだ!!】


「よーしぃ!」

女の子は腕と足のストレッチを始めだしたが、

途中で思い出したようにシゲに注意をする。


「シゲちぃさぁ、『ケンタウロス』って言うのは

『オバン臭い』から辞めてって言ったねぇ、、、 

 これからは『うま娘!』そう呼ばないと出てこないからね!」


『ごめん、ごめん、気をつけるからさぁ』

片手の掌を軽く上げて平謝りするシゲ。


彼女はストレッチを終えると、

「えっほ!えっほ!えっほ!えっほ!」

まるで、ジョギングでもするかのように敵陣に向かって走っていく。そして途中で、、、


「きゅぴーん!!」と目を光らせると


ーーーダンッッ!!ーーー


地面が『陥没する』踏み込みをみせ、

そのまま疾風のような速度で突っ込んで行った。


突撃に慌てる兵士達、

急いで弓や魔法で撃退しようとするが、

彼女のその速さは『早馬をも優に超え』

全く捉えきれない。。。


あっという間に、

兵士たちの真ん前に立っていたのだった。

そして、彼女が通り過ぎた後、、、


敵陣の少し前方に『爆炎』があがる。


「ありゃりゃ?」驚くうま娘。


どうやら「埋め込み式」のトラップが仕掛けてあったようだ。


『地雷か??』

「そだね、重さか魔力かどっちを感知してるか分かんないけど、、、蒼ちゃん行ける?」


「問題ない、、、」 

蒼がそう言って、両手で印(いん)を結ぶと、、、

彼の影がたちまち両横に増えていく、、、

そして影達は立ち上がり、、、

やがて蒼『そっくり』の分身体となった。


「いけ、、、」

蒼の合図で分身たちは敵陣に突っ込んでいく。


そして、一斉に先ほどの“爆発地点”に差し掛かると、

案の定『トラップ』が作動し、

分身体たちは皆消し飛んで行ってしまった。


「蒼ちゃぁぁん、うえぇん、蒼ちゃんがいっぱい死んじゃったよ〜。えーん」

敵を目の前にして号泣きするうま娘。


--それを見て『もらい泣き』するルシフ一同 --


「今度は明るい奴に生まれ変わるんだぞ、、、」

誰かがポツリと言った。


「毎回やるのか、この下り、、、(怒)」

蒼は小声ながらも怒りのツッコミを入れる。

 

一方、、、。

『こっこのっ!、、、!?』

兵士の一人が、目の前で大泣きしていた「うま娘」に槍を突き立てるが、彼女は「残像」を残しつつそれを余裕で躱す。。。


そして別の兵士の前で、

「くんか、くんか、あれー?今日人参食べましたぁ?」

と匂いを嗅いだりしていた。


「おーい、戻っておいでー」


人参を片手に手を振るトシの姿を見ると、

彼女はまたもや疾風の如く飛んで帰って行った。


「ボリボリ、むしゃむしゃ、、、」

「あぁ〜やっぱり仕事した後の人参は最高ですわぁ〜」


そう言って食べ終えると、パンパンに膨れた腹を出しながら

仰向けに寝転がり、そのままいびきをかいて爆睡してしまった、、、


彼女はそのまま『強制送還』されることになった。



ーーー。



『くそー!!アレを出せぇー!!』


「地雷作戦」が破られた敵の「指揮官」が城内の兵たちに何かを命令する。


すると、中から出て来たのは無数の『ゴブリン達』であった。。。


「!?、、、奴隷兵か?」


それにしても、どうも様子がおかしい。


装備は、まるで薪割りでもするような「粗末な斧」だけ、、、

それに全員「呼吸」が荒く苦しそうにしている。


『行けーー!』


指揮官の合図を受けゴブリン達は、ルシフ達に突撃してきた。


「おい!俺たちは助けに来たんだ、、必ず開放してやるから、、」


そう言いながら攻撃をいなした瞬間だった。。



----ドオォオオン!!----



ゴブリンが爆炎とともに弾け飛んだ


「??!」

「いったい、何だ??!」


爆風を受けながらも後方に飛び「直撃」を免れたルシフは、エルフのシルフィーヌに治癒魔法をかけてもらいながら、突然起こった出来事について確認する。


彼女はゴブリン達の身体を「魔力感知」で凝視すると、

冷や汗を垂らしながら状況を説明し始める。


『身体からゴブリンではありえない程の「魔力反応」。考えたく無いけど、、おそらく魔石を細かく砕いて身体に注入されている、、。その後に過剰な魔力を加えて暴走させて、、。 彼ら自身の魔力で必死に抑えてるけど、耐えきれなくなると「爆発」するような仕組みだと思うわ、、、』


唇を噛みしめるその表情には、怒りと悲しみの感情が入り交じっていた。


「解除は?」


ルシフが尋ねるが、シルフィーヌは首を横に振る。


『いえ、難しいわ、、、、1つの魔石ならまだしも、体中に散らされたものを抑え込むのは、、、』


すると、、、。


身体が吹き飛び、ボロボロの上半身だけになったゴブリンが

「死力」を振り絞るようにルシフ達に「念話」を飛ばしてきた。


『 “コ、ドモ、、イル、ナカ、、” 』

そして、こときれた。。。


ちょうどその時、城内に潜入していた蒼の「分身体」からも

念話による連絡が一同に入った。


『 “地下にゴブリンの監禁施設を発見したが、子供たち以外はメスばかりだ、、、しかし「この様子」おそらくは、無理矢理「繁殖」させられていたのだろう、、兵器にするために、、、” 』


「一旦引いて立て直すか?」

ビリーがルシフに訪ねたが、その時すでに彼の腹は決まっていた。


「いや、そうすれば『残ったやつら』が、また兵器として使われるだけだ、、、」


ルシフは控えているゴブリン達に大声で叫ぶ


「お前らの事情はわかった!仲間、子供は必ず助けてやる!」


「だからっ!...」


「安心してかかってこい!!」

 

----武器を構える一同----


ゴブリンたちは次々と、

彼らの前に飛び込んで行く。


それ等を苦しませぬよう

『確実に一撃で』絶命させる。


首をはねられ、頭を潰され、、、

ゴブリン達の体は地面に倒れ込むと、

次々と爆発していった。


「くそう、なんて強さだ、、、!」


その様子に圧倒された兵士達は

『このままでは不味い』と、残ったゴブリンたちに「一斉に突撃」するよう命令する。


「かかれーーっ!!」


しかし、ゴブリンたちは動かなかった、、、


「どうした!?お前たちの行かぬか!!」


そう叫ぶ兵士の横で、

互いの顔を合わせて頷くゴブリン達、、、


----次の瞬間----


彼らは次々と兵士たちに抱きつくと、自らの意思で『自爆』していった。

ゴブリン達の捨て身の反撃に混乱する兵士達、、、。



----すべてのゴブリンがいなくなり、爆発で立ち籠めた煙が収まる頃----


兵士達の前にはルシフが『ひとり』立っていた。


その見た目はもはや、

先ほどまでとは『別人』、、、。


逆だった頭髪。

鮮血を注ぎ込んだような深紅の瞳。

先程は無かったはずの『ツノや翼』も生えている。


その姿はまさに

『闇より出でし地獄の王』


『もう十分だ、、、これ以上、テメェ等の糞みてえな魂喰ちまったら、、腹壊しそうだぜぇ、、』


彼は口から「ハァァ」と湯気を吐きながら、

怒りに溢れた表情で大鎌を振りかぶる


横一文字に薙ぎ払らわれた大鎌からは

一瞬の激しい閃光が放たれた、、、


【 ギフト・オブ・デス --愚者への返礼品-- 】


兵士たちの間を生温い風が吹き抜けた、、、


----ピシッ!----


彼らの背面の城壁に、『横一直線』の不自然な亀裂が入った頃

全ての胴体は二分にされ、地に転がっていた。。。

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モンスターハンター・ハンター(仮)【不定期連載】 山原 もずく @mozukune-san

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