第3話 兄妹の絆(上)
ここの人間界に属する種別からすれば、さしずめ『
————だからこそ、『
パント村とこの地を治めるベッレルモ公国の都と呼ばれる聖都テポルトリとの距離は、日々人々の噂が耳聞こえするには少しばかり遠すぎたようだ。この事が彼等
そんな彼等に丁度、大嵐の前に吹き始めた風で静かだった
§ § §
リアムはベッレルモ公国の辺境地域にて
剣技の
魔術師の才能はその発生する
リアムは孤児院出身の身の上で天涯孤独だった為、彼の血筋は不明と言うことなのは仕方の無いことだった。血縁としては明確な血筋が分からないため、彼の眼の色が唯一の手掛かりなのであるが、
そんな状況であるからリアムの魔術
余談になるが
因みに魔術と魔法は根本的にそのあり方から違うと言う。魔術は術式を
そんな魔法を人間が目にする事はあまりない。何故なら、魔法は魔族種と呼ばれる魔族そのものや高位の魔物、又は妖精にしか使えないからと言われている、のでまず魔族種に会わない普通の生活では見る事は無い。例外として聖女も魔族的と言える事なのだが、なので
そんなリアムに公国の聖都テポルトリにある
と言うことで話しは今朝までいっきに
その日、リアムはパント村を管理する
しぐれの森の中からは小鳥のさえずりが朝の爽やかな訪れを知らせてくる。そんな心地の良い癒やしの空間に小気味よいヴァレリアの呼び声が響き渡った。
「リアムお兄様……朝ごはんですよ~ぉ」
ヴァレリアの澄んだ呼び声で、リアムはひとまず畑仕事の手を止めた。
「お兄様、今日はここで食べよっ!」
「リアっ、そんなに急がなくっても……転びますよ!」
そう叫ぶとリアムは持っていた鍬を地面にドカッと差し込み、急いで妹に駆け寄っていく。そして彼女の持つ手提げ籠を半ば強引に引き取った。
「大丈夫ですよ、ここは。崖の端じゃないんですから」
兎に角、ヴァレリアと
「おっと!」
そんな妹の事を良く分かっているのであろう、兄の支え手は的確であった。咄嗟にヴァレリアの細腰に腕を廻して彼女を抱き留める。
「ぇへっ、ありがとう、お兄様」
リアム腕に抱えられながらも彼の胸元に自ら抱きつく様に倒れ込むヴァレリア、そしてその位置から兄の顔を見上げて嬉しそうに
「おっ、おう。どういたしまして」
一瞬にして花が咲き誇った様なヴァレリアの満面の笑みを投げかけられて、リアムは恥ずかしげにそっぽを向いた。彼としても返事としてそう呟くのが精いっぱいのようであった
§ § §
畑の端に据え置いていた腰掛けにふたり並んで腰を降ろす。ヴァレリアは彼女が持ち寄った手提げ籠から、焼いた鴨肉と香味野菜をパンで挟んだ品を取り出してリアムに渡した。そしてその後に自分の分もひとつ取り出すとふたり揃って齧り付いた。ヴァレリアの其れはリアムのものよりひと回り小さいサイズだったことは彼女の名誉の為に付け加えておくこととする。
「お兄様は今日、何の予定があるのでしょか?」
「そうですね……
「……そうなのですね」
ヴァレリアの返事に一抹の不安がよぎっていたことに、リアムは
「んっ? 何かありましたか?」
「あっ……何でも無い……です」
彼女の言葉は次第に尻すぼみになっていく。
「んっ! 大丈夫よリアムお兄様……あたいひとりで出来るから」
「……そうですか。無理はしないで下さいね……。それと念のために言っておきますが、薬草採取にひとりでしぐれの森に入らないで下さい。出来れば私を待って。でもどうしても必要だったらヴァレリア自身しっかり保護具を纏ってきっちり帯剣してから出掛けて下さい」
「うん、わかってますわ、お兄様」
いまいち彼女の憂いの原因を伺い知れず、しかも話しの内容も要領を得ていなかったのだが、ヴァレリアがひとりで大丈夫と言うならリアムは信じるしかなかった。薬草採取はヴァレリアの趣味が高じたものだったが、それから作る薬はリアムだけに及ばず村人達も重宝していた。彼女には昔の記憶が無かったのに薬草の種類は何となく分かっているらしかった、喜々としてしぐれの森の中で薬草採取する妹の姿をいつもはリアムが傍らで微笑みながら見守っていたのである。
————しかし何でもかんでも兄として口出しするのも妹の成長の目を摘む悪手だし、まあ、もしもの時は武器さえあれば、彼女の剣技はもうそれなりのものだし、あとは魔術で何とかするだろうしな……大丈夫だ。
と、リアムは心苦しくなる自分の想いをねじ伏せながら己を納得させていたのだった。
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