タイ、バンコク・アユタヤ

異邦にて

同胞と遭う

ありがたみ


航空機

窓からのぞく

異境の都

妖しく光る

南の宝石


怪しげな

通りを渡る

旅の者

陰間に踊る

美男美女


旅ごこち

シンハビールの

沫のなか


魚(うお)におう

船着く岸の

雑市場

はるかにそびゆ

暁の寺


かわいらし

売り子の笑みに

誘われて

手に取るルビーも

廉きかな


万客を

日がな寝て待つ

主かな


ハイウェイの

スタンドわきの

はばかりに

蜘蛛の子散らす

爬虫類


渋滞を

たてよこに縫う

オートバイ


あざやかな

法衣に向かい

手を合わす

挨拶さえも

功徳なるらん


南北に

ゆきつ戻りつ

うち眺む

船にも岸にも

人間の営み


帰る日の

別れを惜しむ

濁り水

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【詩】古い書棚から 紀瀬川 沙 @Kisegawa

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