幼馴染に指圧をしてあげたらえらい事になった話
月之影心
幼馴染に指圧をしてあげたらえらい事になった話
「あっ……そこっ……っ!」
※本作品に性描写はございません。
「もっとぉ……強くぅ……」
※本作品に性描写は一切ございません。
「あぁっ!そこっ!いいっ!」
※本作品に性描写は全く欠片もございません。
「あぁぁ……最高ぉ……」
※本作品に(以下略
僕は
これといって目立つ事のないただの高校生。
今、僕の前にTシャツとホットパンツという無防備な姿でうつ伏せに寝転がっているのは幼馴染の
むちむちの太腿に息苦しくないのかと思う程潰された胸の膨らみ、緩めのTシャツなのに腰のくびれがはっきり分かる抜群のスタイルの持ち主。
僕は今、亜美に指圧をしてあげていた。
別に指圧の資格を持ってるとかじゃないんだけど、体のツボについて興味を持って色々調べていた事を亜美に知られ、
『それなら私が実験台になってあげよう!』
と、頼んでもいないのにこうして暇になると……と言うか毎晩のように僕の指圧を受けにやって来る。
「ふぅ~……武留ちゃんの指圧はホント気持ちいいわぁ~。」
「そりゃどうも。」
亜美は天然の長い睫毛がくるっと上を向いた二重の大きな目をトロンとさせて僕に緩い笑顔を見せていた。
「女の子が誰にでも見せちゃいけない顔になってるぞ。」
「いいのいいの。武留ちゃんにしか見せない顔だから。」
「どういう事だよ。」
亜美が蕩け切った顔のまま僕の首に腕を回して抱き付いてきた。
「こういう事だよぉ~!」
そのままの勢いで僕は亜美に押し倒されるような形で後ろに転がった。
幸い、ある程度体は鍛えてあるので、亜美くらいの重さなら何という事はなく支えられる。
「……っと……危ないなぁ。」
「ふっふ~ん♪」
亜美は僕の上に圧し掛かるように乗ってきたかと思ったら、そのまま僕に馬乗りになって上から僕を見下ろしてきた。
「さすが武留ちゃんだね。私が乗ったくらいじゃビクともしない。」
「亜美が軽いからだよ。」
「まぁ嬉しい事を言ってくれるじゃないの。」
そう言って亜美は人差し指で僕の体のあちこちを突き出した。
「くすぐったい。」
「今度は私が武留ちゃんに指圧してあげる!」
「素人が知らずに押したら危ないツボもあるから止めておこうか。」
「武留ちゃんだって素人じゃん。」
「僕は勉強してるからいいんだよ。」
「まぁそうだねぇ。武留ちゃんの指圧でおかしくなった事無いもんなぁ。」
亜美は僕の体から離れて立ち上がると、小さく背伸びをした。
「帰る?」
「うん。気持ちよくなってるこの状態で寝ると最高に熟睡出来るから。」
亜美は眠たそうな顔になっていた。
「じゃあまた明日。」
「うん。おやすみなさぁい。」
亜美はふらふらと僕の部屋を出ていった。
僕は床の上に敷いてあったマットとバスタオルを片付け、少しだけ指圧の本に目を通してから夢の世界へと入り込んでいった。
**********
翌日、何事も無く学校から帰宅して宿題をしていると、いつもなら風呂を済ませてから来る亜美が、随分早くやって来た。
「今日は早いじゃん。」
「う、うん……ちょっと……ね……」
いつもの勢いは何処へやら……何だか落ち着かない様子だ。
「どうした?何かあったか?」
「えっと……その……指圧……なんだけど……」
「指圧?あぁ、構わんよ。ちょっと待ってな。用意するから。」
僕は宿題の手を止めて椅子から立ち上がり、マットとバスタオルを置いてある棚の方へ行こうとした。
「あ……いや……そ、そうじゃなくて……じゃない事もなくて……急いでない……から……」
「ん?そうか?じゃあ……もう少しで宿題終わるから待っててくれ。」
「う、うん……」
絶対おかしい。
いつもの亜美なら僕が宿題を終わらせるのを待ったりしない。
宿題を優先させようものなら『先に押せぇ~!』と後ろから抱き付いて来るようなのが普段の亜美なのに……何だか拍子抜けする。
しかし、待ってくれると言うのだからさっさと片付けて指圧してあげようじゃないか。
「よし終わった。」
「わひゃっ!」
「え?」
椅子をくるっと回して亜美の方を向くと、何故か亜美は僕のベッドに寝転んで枕に顔を埋めていた。
まぁ、亜美が僕のベッドで寝こけるなんて珍しい事じゃないのだけど、何を驚いていたのだろうか?
「じゃあ今日もいっちょ押してやりますか。」
僕はマットとバスタオルを棚から持って来ると、慣れた手付きで床に広げた。
「あ……えっと……」
「ん?」
「先にちょっと……教えて欲しい事があって……」
「何?」
ベッドの縁に座り直した亜美は、抱き抱えた枕の端を引きちぎりそうな勢いで指を忙しなく動かしていた。
「あ、あのね……昨日押してくれたツボなんだけど……」
「昨日……と言うか大体いつも同じツボだぞ?」
亜美の顔が赤く染まっている。
「何か……違うツボ……押さなかっ……た?」
「違うツボ?」
そりゃ、いくら勉強しているからと言っても全部のツボを知っているかと言われるとそこまで自信は無いけど、少なくとも毎日のように押しているツボは間違えたりはしない。
「調子悪くなったか?」
「う、ううん……そうじゃなくて……」
俯き加減の亜美が上目遣いで僕の方を見てくる。
何だこの可愛らしい仕草は。
そして亜美が言った。
「武留ちゃんを好きになっちゃうツボ……とか……」
「はい?」
人を好きになるツボなんか聞いた事無いぞ。
しかも『武留ちゃんを』ってそんなピンポイントなツボがあるわけないだろ。
ぽかんとする僕の足元に、ベッドの縁に座っていた亜美が膝でスライディングをするように滑り込んで来て、僕の膝に手を乗せてきた。
「だってね?昨日押して貰ってからヘンなのよ!寝ても覚めても武留ちゃんの事で頭がいっぱいになってて、考えるの止めようとしても全然止められなくって、考えれば考えるほど心臓はドキドキするし顔は熱くなるし……」
なにそれ?
「でも武留ちゃんの事を考えてる時は心がほわぁ~っとするって言うか幸せぇ~って気分になるって言うか……でも武留ちゃんが目の前に居たらその気持ちがぶわぁ~!って溢れ出してきて止まらないって言うか……もう全部止まらないから色々ググッたのよ。」
ググるんかい。
「そしたら、『それは相手を好きになった証拠です』っていっぱい出て来て、これはもう間違いない!私は武尊ちゃんを好きになっちゃったんだ!って思ったの!」
そんなストレートにネットに出てる事信用していいのか?
「それが昨日、武留ちゃんに指圧して貰った後突然だから、これは武留ちゃんがいつもと違うツボを押して私に武留ちゃんを好きになるようにしたんじゃないかって思って……」
最後の最後で僕の仕業になっとる。
「だからっ!私が武留ちゃんを好きになったのは武留ちゃんのせいだよっ!」
何でじゃ。
そもそもそんなツボがあるわけないのに、無いツボを押した僕のせいと言われてもな……。
「たっ、武留ちゃんのせいなんだからちゃんと責任取って貰わないといけないんだからねっ!」
そういう事か。
僕だって考える頭くらい持ってるし、残念ながら幼馴染系物語に出て来る鈍感主人公属性は持ってない。
つまり、面と向かって好きだと言えない亜美が、僕を好きになるツボを押したせいにして告白しようとしてるんだな。
可愛いやつめ。
正直、僕も亜美の事は好きだ。
と言ってもどっちかと言うと『幼馴染として』って方が強いけど、だからと言って『異性として』何とも思ってない事でもない。
亜美の作戦を逆手に取って付き合う事になるのもまた一興だ。
「分かった……。」
「え?」
「責任取るよ。僕が責任取らないといけないもんな。」
「と、当然よ……」
亜美は口を尖らせながら、床に広げたマットの上にうつ伏せに寝転んだ。
「え?」
「何よ?」
「あ、いや、何で寝転がったのかな……と……」
「何でって責任取ってくれるって言ったじゃない。武留ちゃんを好きになるツボを押したんだからそれを無くするツボもあるんでしょ?」
「へ?」
「へ?じゃなくて早く治してよね。」
完っっっ全に勘違いだったっ!!!
恥っっっずっ!!!
だがどうする?
亜美は本気で僕の事を好きになってしまってるみたいだけど、そんなツボ押した記憶も無いし、そんなツボがあるなんて聞いた事も無いし……それを『治す』ってどこをどう押せばいいんだよ……。
僕は取り敢えず亜美の背中のいつも押すツボを軽めに押しながら、どうすればいいんだと、答えの出ない治し方を頭の中に巡らせていた。
亜美は少し赤く染めた頬のまま顔を横にして目を閉じていた。
「武留ちゃん……」
目を閉じたまま亜美が声を掛けてきた。
「んん?」
ゆっくりと目を開けながら、亜美が言葉を繋いだ。
「人の気持ちをあんな技で動かそうとしちゃダメだよ。あれじゃ本当に好きなのか分からなくなっちゃうでしょ?だから……あんなの抜きにして……治してくれた後、私が普通になってる時にちゃんと言って欲しいな……」
え?
本当に僕を好きになるツボがあって、知らず知らずの内に押してたって事?
さっきの亜美は、本当に僕が押したその謎なツボのせいであぁなっちゃってたって事?
それで治ったら何?
僕から告白しろ……って……
一体何がどうなってるんだぁぁぁ!!!???
僕は混乱した頭のまま、気持ち良さそうに目を閉じた亜美の背中を押し続けた。
幼馴染に指圧をしてあげたらえらい事になった話 月之影心 @tsuki_kage_32
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