夏に起こった。花火の下での奇跡は一生の思い出となりました。

星海ほたる

夏に起こった花火の下での奇跡

僕の名前は加山裕貴かやまゆうき――町の公立高校に田舎から通う普通の高校3年生。

夏休みが始まり卒業も近いし進路のことで精一杯。

だけど今年の夏こそはずっと好きだったクラスの女子、八重森やえもりさんに告白する。





八重森さんはクラスでも1,2位を争うくらいの美少女で優しい女子。

俺はというとクラスでも影が薄い八重森さんとは真反対の男子だ。

八重森さんとは中学校から同じだったけど高校生になって始めて喋り最近では一緒に登下校するくらいまでに仲がいい。

なので他の男子に冷たい視線を向けられることもあるけどそれをかき消す程に実川さんの隣にいられて幸せだった。

でもこんな幸せもいつかは終わりが訪れることを俺は知っていた。

あと半年もすれば僕たちは皆卒業だから。





――ある朝いつものように僕は八重森さんと学校へ登校しながら話していた。


すると八重森さんは夏休みの話に話題を変える。


「加山くんは夏休みに何か予定とかあるの?」

「今のところはないけど進路で毎日学校行かないといけないんだー」

「ふーん、忙しそう」

「卒業したくないなぁー。皆に会えなくなると辛いし」

「だねー」


それから八重森さんは少し考えてから何かを思いついたかのような反応をした。


「だったらさぁー。思い出作りに二人で河川敷の夏祭り行かない?」

「え!? 二人で?」

「なんでそんなに驚くのぉー。嫌だった?」

「そんな事ない。でも俺なんかでいいのかなって……」

「私は加山くんと行きたいんだよ?」


含みのある笑いで僕を少しからかった後、八重森さんは『約束』と言って笑顔で笑った。


「約束破ったら針千本飲ますからねっ!」

「えぇー」


こんな他愛のない日常が僕にとっては何よりも幸せなのだ。





――そしてついに約束の夏祭りの日を迎える。

今日の祭りは全国的に有名で毎年決まって行われるイベント。

そんなこともあってか、会場には沢山の人が押し寄せ身動きするのも大変。

待ち合わせした場所についたものの人混みのせいで視界も悪く八重森さんを見つけられない。

僕はこの日をずっと楽しみにしてきた。なのに八重森さんに会えないんじゃあ全く意味がなかった。

その後も屋台やテントを点々と周り気づいたら一時間以上歩いていた。

連絡を取ろうにも電波が悪くて送信できませんと表示されるばかりで僕はどん底にいるような気分だった。

すると、ヒューゥーと言う音が聞こえ空一面に綺麗な光の結晶が映し出される。

最後のプログラムの打ち上げ花火だ。

僕は空を見上げながら祈った。『どうか八重森さんに会わせてください』と。





花火から目を離し隣を見ると横には八重森さんが朝顔柄の浴衣姿で立っていた。

その横顔はとても綺麗で温かくて目が離せない。

そして僕はつい彼女の手を握ってしまった。

最初は驚いた様子だった八重森さんは僕の方を見てニコッと笑う。

花火もクライマックスを迎え時間的にもあと少し。

僕は最後花火の音が途切れた瞬間、


「八重森さん僕と付き合ってください!」


渾身の告白をした。

フラれるかもしれないと分かっていても気持ちを抑えることができなかった僕に八重森さんは耳元で『うん』と言って頷いた。




――大人になった僕はIT企業に務める新人サラリーマン。

急いで家に帰るとキッチンには僕の大切な人が笑顔で待ってくれていた。

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夏に起こった。花火の下での奇跡は一生の思い出となりました。 星海ほたる @Mi510bunn

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