第7話
結論から言うとガラテア・アズールゲイザーこそが〈触〉だった、ヘリワード団長は彼女に命令を下し――スコル総長の直属部隊である〈触〉は支団の長以外には命令を受けることはない――粛清を実行した。おれは果実を手にしていた、〈狂騒〉のしもべの宿主はエイトリ司教だった、この老練なドヴェルはダグローラではなく異形の悪魔に仕えていた。彼の体内から果実を抜き取るとたちどころに正気に戻りおれに感謝を述べた。おれは謝礼として荷車一杯の聖灰を授かり街を出奔した。
ハーフマークがごく小さな点になった辺りでガラテア班長が追い付いて来た。〈触〉の鎧は白く輝いている、朔月の騎士が纏う黒く歪んだそれとは対照的だ――お互い呪いを用いて殺しを行うって点では同じなのだけど。
特に何か口上を述べたわけではなく、班長は剣を抜くことすらしなかった。おれもまた、抵抗することはなかった――そうしても無駄だと分かっていたからだ。既に未来の一点において、おれの肉体が両断されることは確定していた。ガラテア班長は、おれよりも熟達した崩牙流の使い手だ。彼女が未来につけた傷は深く、動かしようがない。ただ、彼女の目がいつものように蒼穹を流し込んだように透き通っているのにおれは畏怖を覚えながら倒れ、空を見た。
そこに陽炎でできた天使が浮かんでおり、〈狂騒〉が除かれたことを知らせていた。
〈膿み傷〉とダグローラ教会内の破壊分子、〈潜界存在〉の操り手は〈触〉とヘリワード団長によって捕縛・処刑されたがまだ前辺境伯とその一派は、最上部に立てこもって抵抗を続けている。封鎖は完了したが迷宮から食料を得ているので餓死する様子もない。ことによると最上部のみが独立するかも知れない。
おれの首級をガラテア班長は持ち帰りはしなかったので、そのまま街の外の荒れ地で肉体は腐り、魂魄はアンデッドになることもなく自然と消え去った。
死後、ローギルはおれを彼の聖人に加えた。彼の混沌の一部になることを拒否し、おれは彼に、またハーフマークで朔月の騎士を努めたいと告げた。もちろんローギルの湛える混沌の一部を、あの街に変容させた疑似的な空間であるが、実物とは変わりないので実質まだおれは死んでいないようなものだ。
そのハーフマークでおれはまた、ガラテア班長の下、エメリーとともに、呪いを日々破壊している。そのうち自分が死んでいるということも忘れるだろう。つまりは幸福で平和だということだ。
DUNGEONERS:HALFMARK 完
DUNGEONERS:HALFMARK 澁谷晴 @00999
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