人間は神に愛される存在足り得るか
惟風
人間は神に愛される存在足り得るか
やあ。神だょ。
神は何でもできちゃうょ。世界とか簡単に作れる。神だから。
見て見てこのネコチャン! はい最高。完璧に可愛い。さすが神。
でも神、何でも思いのままにできすぎてちょっとアレっていうか、退屈って言うかアレだから、遊んでみることにしたんだ。
神は賢いから?何でもお見通しなんだけど?わかりすぎてもアレだし?
だから、“縛り”作ってみようかな、なんてネ。
ということでハイ人間ドーン!
理性と本能どっちも持ってて、他の生き物達よりも複雑な思考回路をしてるから、どんな行動を起こすかは神でもちゃんと真面目に考えないと予測がつかないょ。
ちょっとだけ神に似せて創ってあげたょ。ネコチャンほどではないけど可愛いネ!
人間達は知能も能力も高くて利己的で愛情深くて、美しく助け合う時もあれば醜く殺し合う時もあって、見ていて本当に飽きないネ。
しばらく楽しみたいからボーッと眺めていることにしたょ。ネコチャンをもふもふしながら。可愛いねネコチャン。チュール食べる?
そしたら、別に神が教えたわけでもないのに「私達は神に創られた存在である」って言い出す者達が現れて、その勢力はあっという間に拡大して、神を崇める者同士が集まって文明を築くようになったょ。
その名もウンダス文明の始まり。
最初は良かったんだよねー。神の存在を認識してくれて、めっちゃ讃えてくれて、捧げ物とか儀式とかやってくれて、神めっちゃチヤホヤされて嬉しかったのね。
そこで止まってたら良かったのにさ、何ていうか、過激派ってやつ?
ちょっとヤバい思想の持ち主が現れはじめてさあ。
「我々は神に似せて創られた、神の子供達である」
うんうん!
「神は尊い存在である」
うん。そうだね!
「神の子である我らも、尊い存在になることを目指し努力しなければならない」
うん?………うん、まあ気持ちはわかる。
「だが未熟な我々は、“尊さ”とは最も遠いシロモノを、定期的に
おやおや何の話だ?
「目を背けるほど醜悪で、鼻が曲がるほど悪臭を放ち、最も不潔なブツを、両脚の間にある繁みに秘された穴から」
ホントに何の話してんの?
「これは神への
待って待って待って
「
そんなことないと思うよ?
「神は何故、我らにこのような試練をお与えになったのか」
他の生き物もやってるコトだよ?
「この試練を克服することが、神への敬意の証明となるのではないか」
ならないんだよなあ。
もうそこからは、思考の飛躍が半端なかった。
物理的に排泄を止めようとして穴を塞ごうとする者。
排泄しなくなるように断食する者。
他者の排泄行為を
まあ死ぬよね。誰も彼も。
あっという間にウンダス文明は滅んじゃった。“ウンダス”つってんのに。出せよ。
えええこっわ。ホント人間って何しでかすかわかんないなー超ヤバいじゃん。勝手に暴走して滅ぶとか神もドン引きなんですけど。誰だよこんな種族創ったの親の顔が見てみたいわ。
コレどうしよっかなあもう、て思いながらネコチャンと遊んでる間に、別の文明が
名前はフグリス・ヌーブラテス文明。
男性も女性も、造りが違うそれぞれ二つのモノを身体にぶら下げてて美しいねー、人間って素敵だねーっていう考えが発端の、わりと平和的な思想の人達の集まりから成った。
この文明もけっこう神のことを強く信仰してくれててまあ有り難かったんだけど、強火ファンの怖さをウンダス文明の時に見ちゃったからさ、今回はちょっとだけ導いてあげることにしたんだ。わあ優しい! さすが神!
めちゃくちゃ偉い神官の夢枕に立ったの。
「私が神だ」
「アナタが神か」
神官は話がわかる人だった。
あんまり自分や他人を傷つけないでほしいなー悲しくてやりきれない神泣いちゃうから、って言ったらわかってくれた。
「神は何と慈悲深い方であらせられるのか」
超感動してくれてんじゃん。ありがとうね。
「私達は神に祝福された存在である」
うんうん。
「であるのに、何故私達はこのようなおぞましい“実”を毎日体外に」
あっここでもそっちのルート行っちゃう?
「優しい神が、私達の身体から忌まわしい物体が生成されることを許すハズがない」
前の文明の時にも言ったけど生き物はだいたい排便するからねあっストレートに便って言っちゃった神恥ずかしい。
「恐らくこれは、神が私達に与えた試練なのである」
人間、すぐ試練を与えたがられるじゃんちょっと自意識過剰が過ぎない?
「この直視することも忌々しい塊を、神の祝福に
えっちょっと何言ってるかわかんない
そんで、もっとわけがわからなくなった。
“悪臭がひどいのがダメなんだ、だから臭いが出なくなるような食べ物を開発しよう派”
“見た目もキモいから出した後に飾り付けるとかどうよ派”
“醜いと思うからダメなんだよ神的にはコレすらも愛しい存在かもしんないじゃん我々の認識が間違ってんじゃないのそんな不届き者は脳を改造しちゃおうぜ派”
色んな派閥ができた。
クッソ(これは感嘆詞としてのクソ)!!!
みんな取り憑かれたようにクソ(これは排泄物の方のクソ)のことばかり考えやがって!!!
どうしよっかなあ、もう
でも、神がウンウン唸ってる間に、何とさっきのイカれた研究をしていた派閥が、それぞれ副産物的に食料問題を解決できる農産物や難病の特効薬、世界中を魅了する芸術作品なんかを次々と生み出して、それはもう瞬く間に文明は発展していった。
こういうのだよこういうの!
神が見たかったのは!
いやー今回はどうなることかと思ったけど、何となく良い感じの方向に進んで良かった神ホッとした。
これ以上ひどくなったら、洪水を起こして全人類を水に流そうかと思ったょ排泄物だけにネって痛い痛い痛いネコチャン爪痛い!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
人類の文明の発展に寄与した研究対象であるその物体は名誉を大きく回復し、ついには“黄金”とまで讃えられるようになるのはこれからもう少し先のお話でした。
人間は神に愛される存在足り得るか 惟風 @ifuw
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます