クラスのカースト上位でモデルの幼馴染に甘えたら大変なことになった
ハイブリッジ
第1話
僕の幼馴染の
昔はよく遊んでいて仲は良いと思うのだが、大きくなるにつれて桜佐さんと僕とでは住む世界が違い過ぎるし、迷惑になると思うので僕からはあまり話しかけないようにしている。
「おい、行くぞ」
「ちょっと、わかったから引っ張んな」
桜佐さんはクラスの男子でカーストトップの不二くんとどこかに出かけるみたいだ。
どうやら不二くんが桜佐さんのことが好きらしく、桜佐さんに猛アピール中らしい。
「いいよね不二くん」
「うん。私もイケメン男子にああやって振り回されてみたい」
「あの二人が付き合ったら、美男美女でお似合いだよね」
不二くんもモテモテだ。カッコ良くて運動もできて、男らしくて、僕とは全然違う。
◼️
「やっほー」
ある日の放課後に下駄箱にいたところ、桜佐さんに話しかけられた。
「今帰り?」
「うん」
「なら一緒に帰ろ? どうせ帰り道一緒だし」
「いいよ」
桜佐さんとは家も近く、帰り道もほとんど一緒だ。
「いやー超久しぶりだね。こうやって帰るの。まあ……私が色々と忙しかったのもあるけど」
「うん。…………桜佐さんは体とか大丈夫? 仕事が最近忙しいって聞いたけど」
「えっ全然大丈夫だよ。心配してくれてるの? 優しいなあ君は」
学業とお仕事を両立するのはとても大変なことだと思う。だけど桜佐さんはいつも元気で疲れているところとかを見たことがない。
「ねえねえ。桜佐さんなんて呼び方やめてよ。幼馴染なんだから昔みたいに咲ちゃんって呼んでよ」
「い、いや。咲ちゃんは……恥ずかしいよ」
「えーどうして?」
「ど、どうしても」
「ちぇー。……でも思い出すなー。小さい頃はさ、私が君の周りの事全部やってあげてたっけ」
「う、うん」
僕は運動も勉強も苦手で桜佐さんに全部教えてもらっていた。加えて両親も出張で家にいないことが多いので、近所の桜佐さんがご飯を作りに来てくれたことも多々あった。
桜佐さんもお世話が好きなのか、僕が何もできないことを不憫に思ったのかわからないが、小学生に上がるまでお風呂から着替えとかも全部手伝ってくれていた。
今思い出すと恥ずかし過ぎる……。
「そうだ。君、明日までの数学の宿題やった?」
「あっ……」
すっかり忘れていた。数学は苦手で授業中も何を言っているのか全然わからない。
明日、先生に怒られてしまう。数学の先生は怖いから嫌だ。
「もしかして忘れてた?」
「う、うん」
「教えてあげようか?」
「…………いいの?」
「もちろん!」
「お、お願いします」
「任せなさい! まったく、君だけだよ。私から教えてもらえる男の子なんて」
「その…………あ、ありがとう」
「どーいたしまして」
■
とある雨の日。買い物を終えて帰っている途中、桜佐さんの声が聞こえた。
「いやっ! 離してって!!」
声の聞こえる場所に到着すると、桜佐さんが他校の男子生徒と何か揉めている様子だった。どうしたんだろう。
「いいじゃん! 付き合ってくれてもさっ!」
「だから私はあなたのことを恋人としては見れないって何回も言ってるじゃん!」
「俺、お金いっぱい持ってるし……ほら、これだってあのブランドのやつだよ」
「あーもう、しつこいっ!!」
どうやら男子生徒の方が桜佐さんに振られたことに対して納得していないみたいだ。
桜佐さん、すごく困ってる。ど、どうしたら助けられるだろう。
考えていると桜佐さんと目が合う。桜佐さんは一瞬の隙をつき、男子生徒から離れることに成功すると僕の方に走ってくる。
「私、この人と付き合ってるからっ!」
「え?」
「だから二度と近づかないでっ!」
「お、おい待ってーー」
手を引っ張られると相手の呼び止めも無視して、そのまま走り出した。
◼️
桜佐さんに手を引っ張られながら走ったので、傘を上手く差せず全身びしょびしょになってしまった。
そのまま家に帰ろうとすると『申し訳ないから、家でシャワー浴びていって』と言われる。
家も近いから大丈夫と断るも聞いてもらえず、無理矢理桜佐さんの家まで連行され、シャワーを浴びることになった。
シャワーを浴びた後、部屋に案内され先ほど何があったのかを話してくれた。
「ごめんね。巻き込んで、勝手に彼氏なんて言って」
「大丈夫。あんなことで桜佐さんの助けになれたなら、全然……」
「ありがとう。…………さっきね、あの人に告白されて断ったの。あの人何回も告白してきて、めちゃくちゃ面倒くさくてさ」
「そ、そうなんだね」
やっぱり桜佐さんはモテるんだな。他校の生徒からも告白されるなんて。
「うん。…………ほら私って、見た目がいいでしょ。だからさ、男の人によく言い寄られるんだ。学校の人とかモデルの人とか。
『俺、男らしいでしょ』『運動神経抜群で頭も良いんだよ』『こういうのが女子は好きなんでしょ』って言ってさ。
知らねえっつうの、勝手に決めんなっ!」
桜佐さんはすごく苛ついているようで、話しながら足をとんとんと忙せわしなく動かしている。
「でもさ、私も一応モデルとかやってるから、そういう風に言い寄られても周りの目を気にして我慢するわけ。
でもそれが良くなくて『桜佐はああいうのがいいんだ』って何でかわからないけど広まって、男子は皆あんな感じ。
マジ最悪、何もわかってない」
め、めちゃくちゃ怒ってる……。
「私の好みは逆だから。引っ張ってくれるより私から引っ張りたいし、何なら好きな人のお世話をめちゃくちゃしたいのに……」
「そ、そうなんだね」
「……………………」
無言のままじっと僕のことを見つめる桜佐さん。
「ど、どうしたの?」
「……何でもない。君には今日、とことん愚痴に付き合ってもらうからっ!」
この後も桜佐さんの愚痴に付き合わされ、結局家に帰るのが遅くなってしまった。
◼️
翌日風邪を引いてしまい、学校を休むことになった。両親も今日から出張なので、今は家に僕一人だ。
うぅ……体の節々が痛いし、辛いな。ゆっくり横になっておこう。
「………………ぅん」
どれくらい寝ただろう。ちょっとだけ楽になったかも……。
…………ん? 何かご飯のいい匂いがする。
「あっ起きた。おはよう」
「えっ…………どうして、桜佐さんがいるの?」
僕の寝ているベッドの隣にある椅子に座っている桜佐さん。
「ん? 君の看病しようかなって」
「……が、学校は?」
「サボったよ。だって風邪引いたの私のせいでしょ? 君って昔から体弱いもんね」
「そんなこと……ゴホッ!」
「ほらほら。病人はしっかり休む」
「……学校はサボっちゃだめだよ。あとどうやって家に入ったの?」
「君のお母さんから鍵貸してもらったの。まあ私最近仕事も立て込んでて疲れてたから、休みたいと思って。ほら体を
う、うーん…………なら仕方ないのか? お母さんも簡単に鍵を貸すのはどうかと思うけど。
「今日は私に甘えてもいいからねー」
「わ、悪いよ。そんなの」
「悪くないから。そうだ、お腹すいてるでしょ。ほらお粥作ってきたよ」
いい匂いの正体はお粥だった。桜佐さんは茶碗にお粥を掬うと、お粥を一口僕の口の前まで持ってくる。
「あーん」
「じ、自分で食べれるよ」
「口開けて? あーん」
桜佐さんは僕の声を聞こえないふりをしている。状況は変わらずだ。ここは恥ずかしいけど、食べさせてもらおう。
「あむっ。……………………お、おいしい」
「でしょー。私の手作りだからね。ゆっくり食べようね」
とても嬉しそうな桜佐さん。
「熱くない? ふぅふぅした方がいい?」
「だ、大丈夫。食べ頃だよ」
「そう? はいあーん」
桜佐さんに食べさせてもらって、半分ほど食べてお腹がいっぱいになる。
「ごちそうさまでした」
暖かいお粥を食べたからか体がポカポカしてきて、喉も渇いてきた。
「ねぇ桜佐さん」
「どうしたの?」
「水、取ってもらってもいい?」
「いいよ。ちゃんと飲める?」
「飲めるよ」
「………うーん。やっぱり心配だから手伝う」
僕の手を支えて飲むのを手伝ってくれた桜佐さん。
お粥を食べ終わった数分後、熱がまた高くなったのか急にボーっとしてきた。
「桜佐さん……」
「どうしたの?」
「ちょっと…………寝てもいい? なんか……体がまた熱くて」
「もちろんだよ。ゆっくり休んでね」
優しく微笑んでくれた桜佐さんの顔を見て、僕は眠りについた。ここから後のことはほとんど覚えていない。
「…………………………寝たかな。じゃあ体、拭こうね。汗かいてるし」
「まずは服を脱いで……。きみ……肌綺麗だね、白いし。腕、細い……ちゃんと食べてるの? はい、後ろ向いてっと」
「氷枕、替えよっか。ちょっと待ってて」
「ついでに冷えピタも替えようね。……よしっ。あっ冷たかったかな? ふふっ可愛い」
「寝顔、子どもみたい…………ふふっ。髪もサラサラだ。ほっぺもぷにぷに。本当に高校生?」
「はぁ…………もっと甘えてほしいなぁ」
◼️
看病してもらった日から今まで以上に桜佐さんから話しかけられるようになった。今では学校でも一番話してると思う。男子たちからの視線が痛い。
でも一つ気になるのが、すごく僕に対して過保護というか、お母さんみたいになった気がする。
何かにつけてと誉めて頭を撫でてきたりとか、抱きついてきたりとかしてくるのだ。
すごく恥ずかしいから止めてって言っても『照れてるの? 可愛いね』と逆効果だった。
そんな毎日を送っていると、僕にある大きなイベントが発生した。
「告白された?」
「うん。昨日の放課後に……」
「誰から?」
「それは…………さ、桜佐さんでも教えられない」
「………あの図書委員の子? それとも剣道部の先輩かな?」
「…………」
「どっち? 言って?」
「…………剣道部の先輩の方」
「やっぱり。前に仲良いって言ってたもんね」
入学した時に助けてもらってから仲良くさせてもらっていて、すごく優しくて尊敬している先輩だ。
…………あれ。桜佐さんに先輩のこと話したことあったけ?
「それで、付き合うの?」
「それは…………ちょっと迷ってる。先輩のこと尊敬はしてるけど、好きかどうかまだわからないから」
「ふーん。じゃあさ……迷ってるならその告白断って、私と付き合ってよ」
「え?」
桜佐さんは僕の両手をグッと握ると、まっすぐ顔を見つめる。
「私なら幼馴染だから君のことを何でも知ってるし、学校の誰よりも可愛いじゃん。料理もできるし、勉強だって君に教えられる。
ほら、この前の風邪を引いた時みたいに辛い時も私なら支えられるよ。それに私、君のこと大好きだし」
話しながらどんどん握る力が強くなっていく。痛いくらいだ。
桜佐さんは無表情のまま僕を見つめていて、どこか圧のようなものを感じてとても怖い。
「でも……ぼ、僕なんかじゃ桜佐さんとは釣り合わないよ」
「………………………………そっか」
そう言いながらうつむくと、桜佐さんは握っていた手を離す。
「なーんてねっ! 冗談だよ、びっくりしたでしょ?」
顔を上げた桜佐さんはいつもの桜佐さんに戻っていた。
「う、うん。ちょっと怖かった」
あんな桜佐さんは今まで見たことない。
「あっそうだ。私、ちょっと用事を思い出しちゃったから、先帰るね」
「うん。また明日ね」
◼️
次の日の放課後、不二くんに校舎裏に呼び出される。校舎裏に到着すると不二くんと他に二人男子生徒がいた。
「あ、あの話って……」
「…………お前さ、気持ち悪いんだよ」
「えっ?」
不二くんはそう言って近づいてくると、僕の頬にパンチをくり出した。
突然のことで防御することもできず、殴られた勢いで地面に倒れこむ。
「…………っ!? な、何で急に殴るの?」
「お前、移動教室の時に女子の体操服盗んだらしいな」
「や、やってない!? 僕じゃないよ!」
「嘘ついてんじゃねえぞ!! お前が盗んでるところ見たってやつがいるんだよっ!」
「だ、誰がそんな…………」
移動教室の時、僕はトイレに行っていたので一番最後に教室から出て行ったけど、体操服を盗むなんてことは絶対にしない。
「前から気持ち悪いって思ってたんだよ。おどおどしてて、運動も勉強も何もできない!」
不二くんたちは倒れてる僕に何発か蹴りを入れる。
「こんな変態野郎に咲も騙されてたなんてなっ! いつもいつも咲にくっつきやがって!!」
「や、やめて不二くっ、ん………お、お願い」
「二度と咲に近くなよ、グズ」
「……………っ」
◼️
帰り道の途中、桜佐さんとばったり会ってしまう。
「ど、どうしたのその傷っ!?」
「……………」
話しかけられるが無視をする。もし不二くんに見られたらまた殴られるかもしれない。
「誰かにやられたの?」
「………………っ」
「………ちょっと来て」
「えっ。は、離してっ!?」
振りほどこうとするが桜佐さんの掴む力が強く振りほどけない。手を掴まれたまま桜佐さんの家の前まで連れてかれる。
「ぼ、僕家に帰るから、離してっ!」
「駄目」
そのまま桜佐さんの部屋まで連れていかれ、ベッドに座るように言われる。
抵抗しても帰れないことはわかっているので、大人しく指示に従う。
ガチャンと鍵を閉めた後、僕の横に座る桜佐さん。
「さてと…………じゃあ何があったのか教えてくれる?」
「…………何でもないよ」
「………嘘。話すまで帰させないから」
そう言って僕の手を優しく包み込む桜佐さん。
そこから何分、何十分と沈黙が続いたが桜佐さんは僕が話し出すのを待ってくれた。
「……………ぼ、僕……………な、何もやってないんだ」
「うん……大丈夫。教えて。ゆっくりでいいから」
「不二くんが、盗んだって。僕が、女子の体操服を………」
「うん」
「それで…………な、殴られて、蹴られて」
「不二に?」
「…………う、うん」
「あいつ…………」
桜佐さんの目付きが一瞬とても鋭くなったが、すぐにいつもの優しい目に戻る。
「不二くんは僕が盗んだのを誰かから聞いたって…………。誰がそんな酷い嘘をつくんだろう……」
「私ね、知ってるの。その嘘を流した犯人……」
「ほ、本当に?」
「ーー先輩だよ。あの剣道部の」
「えっ?」
犯人の正体を聞かされて、僕は頭が真っ白になる。
「先輩が言ってたの。たまたまうちの教室に通った時に君が体操服を盗んでるのを見たって」
「な、なんで……」
「私はね、もちろん信じなかったよ。だって君がそんなことするわけないこと、幼馴染みの私が一番知ってるから。
でも不二とかその場にいた他の人たちは信じちゃったぽくって……ごめんね。止めとけば君がそんな怪我をしなくてもよかったのに」
「………せ、先輩。何で、どうしてそんな、嘘…………」
あの誰にでも優しい先輩が…………。僕に、こんなことを……どうして……。
「……たぶん遊びだったんだと思う。君は知らないと思うけど、あの先輩裏では性格悪いで有名でさ。人がいじめられるところを見て興奮するんだって」
「そ、そんな……」
「ひどい女だよね。そんなやつとは付き合わなくて正解だったよ」
「…………うぅ…………っ」
ショックで涙が次々と溢れでてきた。
あの優しい先輩も、僕のことを好きって言ってくれた先輩も全部嘘だったんだ。
「大丈夫……大丈夫だよ」
桜佐さんは泣いている僕をぎゅっと抱き締めてくれた。
「私は……君の味方だから。こういうときは、甘えてもいいんだよ」
「…………ぅっ………ぐすっ………ん」
どれくらい泣いたのかわからないくらい泣いてしまった。たぶん人生で一番泣いたと思う。
「ありがとう桜佐さん。……スッキリした」
「よかった。いっぱい泣いたからね」
「……ごめんなさい。服とかに付いちゃった」
ずっと桜佐さんに抱き締められながら泣いていたので、涙や鼻水も桜佐さんの服に付いてしまった。
「ううん。大丈夫だよ。……あっまだ涙が、ちょっと待ってね」
涙は出し尽くしたと思っていたがまだ少しあったみたいで、桜佐さん手で涙を拭ってくれた。
「んっ………くすぐったいよ」
「……………ごめんね。もう無理かも」
「えっ」
桜佐さんにベッドへ押し倒され、僕の体に馬乗りの状態になる。
「………だ、駄目だよ。桜佐さん」
「私、君のことが好きなの。大好きなの。愛してるの。……駄目?」
「で、でも………僕なんか」
「なんかじゃない。君がいいの」
「う、嬉しいけど一回落ち着こう?」
馬乗りのままで自分の気持ちを伝えるのはさすがに嫌だ。
「それじゃあ……咲ちゃんって呼んでくれたら退いてあげる」
「……恥ずかしいよ」
「じゃあずっとこのままだねー」
桜佐さんは言うまで絶対に退いてくれないだろう。
「…………………さ、咲ちゃん」
「うん。良くできました。…………そんな君にはご褒美あげるね」
「え、んっーー」
桜佐さんに唇を塞がれる。僕が戸惑っている中、桜佐さんは舌で僕の口の中や唇を舐め回す。
「ぷはっ………。やっと、夢が叶った。小さい頃からね、ずっーーーーとこうしたかったんだよ?」
その後も何回も何回もキスを繰り返し、口腔内を刺激される。
とても気持ち良くて、頭がふわふわして何も考えられなくなる。
「はぁ……可愛い。本当に可愛いよ。もっとぐちゃぐちゃにしたい」
「咲……ちゃん」
「あぁ駄目だよ。そんな目で見ながら名前呼ばれたらさ……止まらなくなっちゃうから」
涙がつたった頬を舐めたり、ついばんでくる桜佐さん。
「や、やめ……き、汚いから」
「んっ……あむっ……汚くないよ。ちゅっ……君の体は、全部綺麗だよ」
頬だけでなく耳や首、腕……色々なところにキスをされる。
「ねえ。明日さ、学校行かなくてもいいんじゃない?」
「えっ……」
「いじめてくる奴らがいるところなんかに行かなくていいよ。ずっとここにいよ、ねっ?」
僕の頬にキスを一回した後、耳元で囁く。
「私だけが君の味方だよ。君の辛いこととか嫌なことも全部、私が受け止めてあげる。私が君を守ってあげる」
…………桜佐さんの言う通りだ。もうずっとこのままでいいのかもしれない。
僕には桜佐さんしかいないのだから。
「もっと私に甘えて。私なしでは生きていけないくらいに……」
◼️◻️◼️
「ごめんね不二。私、まだ誰とも付き合いたくないんだ」
校舎裏、私は不二から告白をされるが当然断った。
何が楽しくてこんなやつと付き合わないといけないのか……。
「そ、そっか。……いやこっちこそごめんな」
「ううん。……………あっそうだ。そういえば不二、体操服の件、ありがとうね。お礼言ってなかったや」
「ああ……。あれはあの変態野郎が悪いからな。まさか女子の体操服を盗むなんてな……。
咲も教えてくれてサンキューな。まあ……マジ許せなくて、あいつを殴っちまったけど」
「駄目だよ。暴力は」
「でもよ、殴ってわからせないと女子の体操服がもっと盗まれるかもしれなかったからよ。……咲もあいつが学校来なくなって安心してんだろ?」
「うん。そうだね」
まあ……不二のことは好きではないが、感謝はしている。
だって不二のおかげで私は彼をこの敵だらけの学校から離すことができたのだから。
◻️
「すまない。ちょっといいかな」
「はい。何ですか?」
授業も終わり足早に家に帰ろうとした時、下駄箱で声をかけられた。以前彼が仲良くしていた剣道部の先輩だ。
「いや、君のクラスメイトで最近不登校になった子がいるだろう」
「いますね」
「その子の家を知っていたらでいいんだが、場所を教えてくれないかな? ちょっと話したいことがあって」
「…………すいません。ちょっとわからないです。メールで連絡は取れないのですか?」
「メールも送っているのだが…………返事が来ないんだ」
当然だ。だって私があの子の携帯を持っているんだから。この女、何十回もメールを送ってきてしつこいんだよなー。
「……先輩はその子と仲が良いんですか?」
「ああ。ちょっと前に私から告白をしたのだが、まだ返事をもらえてなくてね」
「そうなんですね。また何かその子のことでわかったら連絡しますよ」
「ありがとう……」
◻️
「ただいまー……うわっ。もぉー。急に抱きついてきて、びっくりしたよ」
「…………ごめんなさい」
部屋の扉を開けるや否や、彼が抱きついてきた。
今両親は二人とも海外にいるので、この家には私と彼しかいない。彼の両親も出張中だという。何とも都合が良い。
「…………ふふっ。寂しかったの?」
「うん」
抱きついたまま彼は返事をする。私の方が身長が高いのでちょうど胸辺りに顔を埋めている。すごく可愛い。
「あっそうだ。帰りに剣道部の先輩に会ってね、君に会いたがってたよ」
「……会いたくない。あの人、嘘つきだから嫌い」
「そっかぁ。この前までは付き合おうか迷ってたのにね」
「そ、そんなことない! 僕は咲ちゃんが一番好きだから!」
「ふふっ嬉しい。でもね……私今日、不二に告白されたんだ」
「えっ」
私の言葉に彼は顔を青ざめる。彼はどの顔もとても魅力的だ。
「どうしようかなー。迷ってるんだよねー」
「ど、どうして……い、嫌だ。嫌だよ咲ちゃん」
「どうして? だってさ、不二の方が君よりカッコいいし、運動も勉強もできるし……。付き合ったら美男美女カップルで学校でちやほやされるじゃん」
「だ、駄目っ!! ぼ、僕には咲ちゃんしかいないし、咲ちゃんがいないと生きていけない。……何でも、何でもするからっ!」
「ふーん。何でもねー。…………じゃあ口開けて」
私の命令に従い、何の躊躇いもなく彼は小さな口を開けてくれた。
私は溜めていたストレスを発散するように彼の舌や唇を苛める。
「……んっ……れろっ………ぷはっ………。ふふっ冗談だよ。私が不二と付き合うわけないじゃん」
「ほ、本当に?」
「本当だよ。だって君のこと愛してるんだもん」
「よかった……。僕、咲ちゃんがいないと何もできないから」
「ふふっ。じゃあ……続きしよっか」
終わり
クラスのカースト上位でモデルの幼馴染に甘えたら大変なことになった ハイブリッジ @highbridge
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