第98話 山下海斗
勇者山下海斗と酒井礼二は、同じ城に集まり話し合いをしていた。
「や、山ちゃん……俺たち仲間だろ?」
話し合いというより、酒井礼二が山下海斗に、懇願しているような様子であった。
「仲間? それは昔の話だ。俺はこの世界の誰よりも強く、偉い存在だ。つまりこの世界は全て俺のものってことだ。だから、お前は俺の仲間ではなく、手下だ」
威圧的な態度で海斗はそう言った。
はっきりと見下すような態度であった。坂井礼二は言い返したそうな表情をしていたが、しかし、何も言わなかった。
言い返すと痛い目に遭うだろうと分かっていたからだ。
「とにかくお前が攻め取った領地は、今日から俺のものだ。お前は勇者で強いから、高い地位をくれやろう。これからは俺の命令には絶対服従だ」
元々各々勝手に領地を攻め取っていた二人で、それぞれ自分の城や家臣を持っていたのだが、礼二はその全てを海斗に差し出せと迫られていた。
当然すぐ頷けることではない。日本にいた頃から、海斗は格上であるとは思っていたが、それでも歳も同じの仲間で、明確な上下関係があったわけではなかったが、頷いたら海斗手下になることになる。
彼にもプライドはあったが、しかし、拒否をしたら何をされるかわからない。
海斗と礼二の間には、大きな実力の差があった。
「…………分かった」
返答まで長い時間を要したが、結局坂井礼二は頷いた。
こうして海斗は大勢の手下を得た、大勢力の主人となっていた。
○
「調べた情報によると……予想以上にやばいみたいだな」
知らなかった情報がいくつも出てきた。
まず、勇者は召喚した国の王様を完全に服従して、やりたい放題やっているようだ。
征服した場所はかなり多い。
疑問なのは元々勇者たちは、目標の土地を征服したら、元の世界に帰るみたいな感じだったはずだが、これだけ征服しても、まだ目標を達成していないのだろうか?
もしかしたら、この世界にいた方がいい思いが出来ると思った勇者たちが、目標の変更でもしたのかもしれない。出来るかどうかは知らないけど。
とにかく相当戦力を増強させているようなので、こちらが兵を率いて勇者の軍を粉砕するのは、正直言って現実的ではない。
仮に出来たとしても、敵軍、味方に甚大な死者が出るのは必至だ。
あくまで俺たちが止めたいのは、勇者だけである。民間人への被害はなるべく少数にとどめたい。
何か勇者達だけを釣り出して、倒す方法がないだろうか?
俺はみんなと意見を出し合い、勇者の倒し方を考えた。
限界レベル1からの成り上がり ~廃棄された限界レベル1の俺、スキル【死体吸収】の力で最強になる~ 未来人A @abcddi23
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