第97話 これから
それから数日旅をして、ヴァーフォルに到着した。
「……そういえばメクは国に帰らなくていいのか? 俺へのお礼はもう終わったし……女王に戻った方がいいいんじゃ……」
「む? 何じゃ、わしと別れたいと申すか? 冷たい奴じゃのう」
「い、いや、そうじゃないが。女王に戻らなくていいのか気になって……」
「そうじゃのう。前、サクとおうたときは、帰ってこいと言われたのじゃが……サクは良き女王になっておったし……今更わしが元の姿に戻ったと言って国に帰っても、余計な混乱を招くだけじゃからなぁ。もう何十年もおらんかったわけじゃし。たまには帰ってやるが、好きに元の姿に戻れるようになったとは言わん方がいいじゃろう」
「メクはそれでいいのか?」
「よいよい。お主らと一緒におるのは、楽しいしの」
メクは笑顔でそういった。別れるのは寂しかったので、メクがそう言ってくれて、俺も嬉しい気持ちと少し安心した気持ちを抱いた。
その後、俺たちはリコの家に行き、戻った挨拶に向かった。
「あ、お帰りなさいテツヤさん! あ、メクさんは……戻れなかったんですね……」
メクがぬいぐるみの姿だったので、戻れなかったと勘違いしていたので、事情を話した。
「はぁーなるほど、歳を取らなくなるんですか。何だか羨ましいですね。私にも魔法かけて欲しいかもしれません」
まあ、確かに歳を取らなくなるのは魅力的な効果だ。ぬいぐるみになるのは、問題だけど。
リコとは色々話をした。
俺たちがいないあいだ、何か変わったことは起きなかったと尋ねた。
「ヴァーフォルでは特に何も問題はないんですが……色々噂を聞いていまして……勇者が本格的に大暴れをし始めて、色んな国を滅ぼしていると……」
「勇者が……!」
不良勇者は確か残り二人。
不良どものリーダー格と思わしき奴は、限界レベルが凄まじかった。恐らく、そいつが暴れているものと思われる。
不良どもへの復讐心は今の俺にはほとんどない。
しかし、同じ世界から来たものとして、不良どもを止めなければという気持ちはあった。
この世界にも、色んな人が一生懸命生きているのに、奴らのようなクズに、そんな人達が殺されているのは、理不尽だし、胸糞が悪い。
同じ世界から来た人間として、無関係だとは思っていられない。止めなくてはいけない。
もしかしたら、またヴァーフォルに攻めてくるかもしれないしな。時間が経てば経つほど、勇者達は自身の勢力を拡大させたり、何度も戦うことで自己の強化もしたりと、どんどん強くなっていって、倒し辛くもなる。
動くなら早い方がいいだろう。
「なあ、俺は勇者達を止めたいと思っているんだが……」
「と、止めるですか? しかし、勇者はかなり強いですよ……? 限界レベルが120以上の人も、まだ生きていますし。テツヤさんも強いですし、何人か倒したのも知っていますけど……もしかしたら負けるかも……」
リコが心配そうな表情で俺にそう言ってきた。
彼女の言っていることはもっともだ。
確かに俺は死体吸収スキルで、強くなったが、それでも倒せるという保証はない。
だが、やはり見逃したくはない。
「俺は日本で生まれて日本で育った男で、この世界の住人じゃない。でも、ここに来て仲間もできたし、居場所もできた。時折日本が懐かしくなることもあるけど、でも、今はここが俺の居場所なんだ。そこを害する奴らを放ってはおけない」
「テツヤさん……」
リコは俺を見て頷いた。
「私もヴァーフォルが今では故郷みたいなものです。日本に帰れるって言われても、帰らないと思います。だから、私も勇者を倒すため、全力でお力をお貸しします」
彼女は真剣な表情でそういった。
「異界来たというお主らがやると言っておるのに、わしらがやらんわけにはいかんじゃろうな。また故国に、攻めて来られても困るしのう」
「レーニャも出来るだけのことはするにゃ!」
二人も協力してくれるようだ。
「わかった一緒に勇者を倒そう!」
俺たちの目標は勇者たちの討伐となった。
「まずは情報収集じゃな。勇者の連中について、話を集めよう。このヴァーフォルは色んな連中が出入りしておるから、情報通も多いじゃろう。話を聞きに行くのじゃ」
メクがそう言って、俺たちは勇者についての情報収集を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます