第4話 とうさんは勇敢な狩人です


 

 ついさっきまでモゾモゾと動きまわっていたかと思うと、そのままの格好でことんと眠ったりしていた赤ん坊たちも、生後1週間もすると目が開き始めました。つるんとした頭の横にふんわりと垂れていた両の耳も、少しずつ起き上がりかけています。


 上の子のシロとゴロは、男の子。👦

 下の子のモモとミイミは女の子。👧


 シロは茶と白のブチ、ゴロは目の覚めるような金色、モモはクロと白の縞もよう、末っ子のミイミは、兄のテツと同じ銀色の被毛……個性もはっきりしてきました。


 テツたち兄弟姉妹は、愛らしいおちびさんたちのそばを離れようとしません。


 あるかなきかのちっぽけな手で、かあさんの乳房を押しながら、うくん、うくんとのどを鳴らしておっぱいを吸うようすを飽かずに見守り、ほんのちょっぴりの排せつ物を丹念にかあさんに舐めとってもらうところを、おもしろそうに観察しています。


 お腹が満ちると、ころんと仰向けになる。

 そのあどけなさといったら……。(笑)

 

      *

 

 でも、女の子はともかく、男の子たちは、ずっとそうしてばかりはいられません。


 テツ、ヤマト、サブは長女のアカリにあとを託し、とうさんと共に狩りに出ます。


 巣穴で待つ女性や年寄り、幼児などの家族のために、雨の日も嵐の日も雪の日も、男たちは一定量の獲物を運んでくる……それがオオカミ社会のおきてなのですから。

 

 とうさんはとても勇敢な狩人です。

 狙った獲物は、決して逃しません。


 どんなに逃げ足の速い動物だって、とうさんの手にかかったらイチコロです。

 お得意の待ち伏せ作戦を駆使して、息子たちに背後から獲物を追いつめさせると、やぶのなかから飛び出して来たところを、猛ダッシュして一撃で仕留めるのです。


 そして、獲物を捕獲したとうさんは、誇らしげに息子たちに宣言するのでした。


 ――いいかい、おまえたち。狩りはチームプレーなんだよ。

   ふふ、頭のいいオオカミにしかできない高等技なのさ。

 

 仕留めた獲物に狩人の身体をこすりつけることも、たいせつなセレモニーです。

 なぜかって、匂い付けをして初めて、その獲物が自分のものになるのですから。


 神妙な表情で念入りな匂い付けを終えたとうさんは、たくましく肉球が盛り上がった4本の脚で大地をしっかり踏みしめて立つと、太い首を思いきり強くのけぞらせ、


 ――ウォ~ン、ウォォ~ン!!


 大空のオオカミの神にも届よとばかりに、勝利の雄叫びをあげるのです。

 テツたち兄弟は、そんなとうさんを、憧れのまなざしで見つめています。

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