第6話

彼女が言った通り仕事が始まったのだろう。


彼女はここ最近、登校してこない。


おかげで俺は彼女に勉強を放課後に教える必要が無いので、暇になった。


だが、俺は時間を有効利用する人間。ということで・・・



「お届けに参りました。こちら熱いのでお気をつけください。」


俺は食品をレストランから個人宅へ届ける、アルバイトをしていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いや~、文明の進化に圧倒的感謝!!」


俺は誰もいない道で自転車を漕ぎながら、そう言う。


急に空いた時間でもアルバイトできるなんて、ありがたくてしょうがない。



(あいつに勉強を教えると、成績評価をしてもらえるが、お金は入ってこないからな。


 いまのうちに稼がして、もらうぜ・・・)


そんなことを思っていると



ピロンッ!!



次の仕事が入ったことを、スマホの音が伝えてくる。



(よし、気合入れていくぜ!!)


俺は腕をまくって、次の仕事場所へ自転車を向けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(こんなことがあるなんて・・・)


俺はモデルの子が撮影している現場に、料理を届けていた。


まぁ、確率的にこういうことが起きることもあるが、めったにないことだろう。



(あいつの仕事現場なんて見たことないから、ちょっと見てみたいな。


 でも、彼女に見つかったら・・・)


ここ最近、彼女と会ってないので、いい感じに彼女との距離感が遠くなっている。


それを壊してしまうのはもったいないと思った俺はそこから離れようとすると



「よっ!! 私の撮影を見て、惚れてしまったか!?」


モデルの子が俺に声をかけてきた。


丁度、休憩時間に入ったようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「貴重な休憩時間に、俺なんかと話していいのかよ」


「大丈夫、大丈夫」


(何が大丈夫なんやら・・・)


届けた料理を食べながら答える彼女を見て、俺はそう思う。



「俺バイト中だからさ、あんまりここにいられないんだ」


俺は彼女から離れたかったので、そう言う。



「あれ、そのバイトって、アプリのやつでしょ。


 拒否すればいいじゃん」



「なんで拒否しないといけないんだよ。


 俺の貴重な収入源だぞ」



「・・・はい」


「!?」


彼女は使っていない割りばしを使って、俺の口に料理を突っ込む。



「うま・・・」


届けたのは高級焼き肉チェーン店のものだったので、味はピカイチだ。


いきなり箸を口に突っ込まれ、怒ろうとしたけど、その気分は吹っ飛ぶ。



「まぁ、これでも食べて、話そうよ」



俺は料理で買収され、なんだかんだ彼女と話してしまう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「はぁ・・・」


アルバイトを終えた俺は、溜息をつきながら、風呂に入っていた。



(どうしたもんだか・・・

 

 せっかく、彼女を離れられたのに、また近づいてしまった)


中学デビューによって受けたいじりのせいでできた、傷を俺はさする。



(もう二度と、こんな思いはしたくないんだが・・・)


そう思いながら、今日彼女と話して、なんだかんだ楽しくなってしまった自分に、呆れてしまう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よし、明日から彼女と距離を置くぞ!!」


風呂から上がった俺は決心する。



ブルブルブル・・・



俺のスマホが振動する。着信が来ている証拠だ。


(母さんか、父さんだな。


 今日は俺一人、家にいないといけないから、心配しているんだろうな)



スマホの画面を見ず、着信にでると



「おーい、今暇?」


「・・・」


「おい、声をだせや」


電話の向こうから、モデルの子の声がした。



(なんでコイツ俺の電話番号知っているんだ!?


 ・・・あっ、あのときか!!)


彼女を声を聴いて錯乱していたが、俺は冷静になる。


今日、彼女の仕事現場で、彼女と話している間、バイトのアプリを見てみたいって言ってきて、無理矢理携帯を短時間強奪された。


(そのときに、俺の電話番号を見ていたのか・・・)



なんで、彼女がそんなことをしたのかは知らない。


が、とりあえずだ



「おいこら、人の電話番号を勝手に覗くとか、ストーカー野郎じゃねえか」


「・・・しらないし、適当に電話かけたら、アンタがでてきただけだし」


「そんなことありえねえだろうが!!」



無理な言い訳をする彼女に文句を言う俺。


彼女はずっと俺の説教を聞いていると、今から直接謝罪をしたいと言ってきた。



「いや、そこまでしなくていいから・・・」


「いやいや、謝罪の意を表したい」



そう言って、この後、彼女はごり押しして俺の家に来る。


今日、家に俺しかいなかったことに、彼女は一線を越える行為をしてくる。



これをきっかけに、彼女との関係がとんでもないことになるのだが、それはまた今度はなそう。



Fin

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モデルが隣にいるとか羨ましすぎだと?馬鹿め!! ~モブだと自覚している俺は自重して学園生活を送る予定です~ マシュマロ @marshmallow0905

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