第百十五話『僕が描くは、闘いという名の芸術』
翌日──焔衣兼人、定刻通りただ今お目覚め。
寝起き早々の冗談はさておき、時刻は朝の八時半。最近はこの時間帯によく起きるようになっている。
メイディさんが来る前はもう一時間は早く起きてたんだけど、朝の準備を全部やってくれるようになったから余裕を持った睡眠が出来ている影響だ。
これが地味に助かるのなんの。夜練に熱中して遅くに寝ると朝が辛いからな。
そんな振り返りはさておき、起きたらまず身なりを整えないと。
顔を洗い歯を磨き、着替えたら朝食。その後は支部の剣士が来るのを待ちつつ、十時前には目標人物を探しに行く予定だ。
「ふぁ……、ぁあ。今日はなんかやたらと眠ぃ。そんなに疲れてたかな、俺」
眠気に耐えつつ布団を畳み、剣士の必需品である聖癖剣を鞘に戻し入れる。
後で着る服を適当に拵えてから、ようやく自室を出て階下へ降りて行く……のだけれども、その先で朝から衝撃の光景を目の当たりにすることとなる──
「……良い。素晴らしい。スカートの裾さえ揺れないバランス感覚とは恐れ入る。モデルとしてここまで完璧な人物は初めてだ」
「ふふ、そう言っていただけて光栄です」
「え、な……。えぇ!? 何やってんの!?」
俺が階段を降りた先で見えたもの──それは、バレリーナさながらのそれっぽいポーズでホール中央にある台の上で不動を維持するメイディさんの姿。
そしてそれを見ながらイーゼルに立て掛けた画用紙にメイディさんの姿をデッサンする謎の男がいた。だ、誰だこの人!?
おいおいおいおい、こいつぁ一体どういう状況だ?
朝から意味不明な状況が展開されちゃ眠気もぶっ飛ぶというもの。本当に何やってんだこの人たちは。
「おはようございます、ご主人様。早々に申し訳ないのですが、実は少々手が放せない状況でして」
「それは見れば分かるけど……。どういう状況?」
「こちらの方に絵のモデルになって欲しいと頼まれたのです。こういったお願いされたのは久しぶりでしたので、せっかくですしお受けしようと思いまして」
ぎょろりと目を俺に向けて普段通りの調子で挨拶をしてくれるメイディさん。口には出さないけどちょっと怖いぞ……。
一ミリも動かずポージングをしているのは、どうやらこの謎の男による指示らしい。
まさか人のメイドを無断で使うとは。一体何者……というのもの無粋か。
俺の記憶の中で絵に関連する身近な人物は何人かの候補がいる。その中で、唯一出会ったことのない剣士が存在していた。
まさかとは思うけどこの人がそうなのか?
そういえば舞々子さんに困ったような顔をさせる変人みたいだし、可能性として十分考えられるな。
取りあえず挨拶しておくべき? 初対面で好印象を持たれるに越したことはないし、声を掛けてみるか。
「えっと……あのー、すいませ──」
「メイディ氏、申し訳ないが身体の向きだけをもう少し右へ逸らして貰えないだろうか?」
「かしこまりました。この塩梅で如何でしょう」
「良いね。本当に素晴らしい調整加減だ。朝からこれほどまでに有能なモデルと出会えたのは幸運に他なら無い。増援に志願したのは正解だった……!」
まさかの無視!? それどころかメイディさんにポーズの微調整をさせてやがる。
もしや俺の存在に気付いていないのか? そういえば作品に熱中してると話を聞かないとか何とか舞々子さんも言ってた気がする。
これ、どうしよう。無理に割り込んで存在に気付いてもらおうとしたら間違いなく怒られるし悪印象だ。
ってか緊急の要請でここに呼んだはずなのに、何で暢気に絵なんか描いてるんだよ……。
ここは閃理に頼んでみるべきでは? メルとは違って起きてるだろうし、この人から見ても上司同然の存在だろうから何とかしてくれるはず──
「安心したまえ。今は手が放せないだけだ。自己紹介は完成してからで構わないだろうか」
「あ、俺のこと気付いてたんすね……」
「当然さ。氏は僕に何度も会おうとしていたことくらい知っている。氏と僕との縁はこれまで巡り会わせることを許してくれなかったが、それはこの絵を描き終わるまでだ」
どうやってコンタクトを取ろうか考えを巡らせていた時、不意に声をかけられた。
どうやら俺の存在に気付いてないんじゃなく、作品に集中したいから敢えて無視してたらしい。それはそれで少し意地悪だな。
そして今の会話でこの人物が日本支部で唯一面識が無かった剣士、絵之本描人であることが判明した。
この人が最後の日本支部所属の剣士……。俺は邪魔にならないよう静かに近くへ寄る。
汚れた眼鏡にボサッとした頭髪。口周りにうっすらと生える無精髭。服も飛び散った絵の具かそういう柄なのかは分からないけど、全体的にやや無精な印象を持たせる。
総じて作品作りに没頭して自分のことは後回しにしまくってる人、というイメージ。実際にその通りなんだろうけど。
「……ふむ、まぁこんなものか。モデルは完璧でも描き手がダメなら当然の出来だ」
「この完成度でダメなのか……」
絵之本……さんとでも呼ぼうか。一応年上っぽそうだし。
んで、その人の風貌を確認してる間に絵が完成したようだ。失礼を承知で横からチラ見して確認する。
ただのデッサン画なだけあって鉛筆のみで描いたようだが、その出来映えはモノクロで撮った写真と言われても信じるレベル。
驚くほどに描き込まれた繊細なタッチは本当に鉛筆一本で描いたのかを疑うほど。
こういう絵にこそ『まるでそこにあるかのような』という表現が当てはまるんだろうな。
なるほど。確かに幻狼も尊敬するわけだ。
あいつの画力を下に見るわけではないが、これは次元というか格が違う。
下手すりゃ大金稼げそうなレベルの絵だけど、本人はこれをイマイチと評す。結構自分に厳しいようだ。
「メイディ氏、ご協力感謝する。またいつかモデルになっていただけたら幸いだ」
「いえいえ、おかげで私も懐かしい気分になれました。こちらこそありがとうございます」
絵之本さんはモデルとして協力してくれたメイディさんに感謝を述べると、出来上がった絵をもう一度眺める。
十秒ほど見てからイーゼルから取り外すと、唐突に画用紙を俺に手渡してきた。
「自己紹介だ。僕が“
そう言って絵之本さんは手を出して握手を求めてくる。ちょ、俺今あんたに渡された絵を持ってるんですけど!?
貰った絵の被写体はメイディさんだし、捨てる理由は無いからありがたく貰っておくけど。
でもまぁ、何というか聞いてた話よりかは真面目そうな人だ。
変人っちゃあ変人だけど、思ってたほどキテレツな感じじゃないかも……?
何とか貰った絵を傷つけないよう慎重に扱いながら、握手に応えようとした時──
ガッ! っと掴まれ、強めに引っ張られて急接近させられる。いきなり何だ!?
「ところで……焔衣氏の剣、実は前々から興味があってね。その絵の対価としてスケッチさせてくれやしないだろうか?」
「ひょえ……」
うわぁ……。ごめん、ちょっと訂正。人当たりは良さそうだけど、やっぱり例に漏れず変人だったわ。
†
「というわけで増援要請に応じてくれたのは絵之本描人だ。絵之本、今回はよろしく頼む」
「ああ、任せたまえ閃理氏。氏たちの手を焼いている相手を倒せばいいんだろう? 大船に乗ったつもりでいてくれ」
メルも起きたところで、閃理からの紹介を経てようやく正式に増援の剣士としてやって来た絵之本さん。
今は俺が貸した
にしても相手の権能が厄介なのを考慮して一名だけの要請にしたものの、果たしてこれが吉と出るか凶と出るか。
「早速だが
「うン。怪しいところがあったら
「じゃあ全員バラバラで行動すればいいのかな? それともチーム作って別れて探す?」
紹介はそこそこに作戦会議へスムーズに移行しつつ、本日の動きについて話し合う。
どうやら閃理が一晩でやってくれたようで、スマホアプリに便利な機能を追加した模様。これを使って町中を探し回る予定らしい。
となると次は探し方を決めないとな。チームを組むのか、あるいはバラバラで行くか。
それだけで効率とかが大きく変わるから、ここも慎重に決めないと。
「メルはバラバラが良イ。せっかく四人集まったから、満遍なく探す方が
「俺はチーム組みたいけどな。もしまた遭遇して襲われたら怖いし」
メルと俺の意見は相反した。効率を重視するか警戒を強めるべきか。どっちも悪いものではないが、両立は難しい。
せめてもう数人来てくれれば出来ることなんだがな。こればっかりは敵の権能のせいだ。
「俺もチームを組むべきだと思っている。剣有りと剣無しの二人組を作り、警戒しつつ探す。増援も剣を奪われてしまっては元も子もないからな」
閃理の考えは俺と同じな様子。これで二対一となるが、当の増援である絵之本さんはどうなんだ?
未だに
一瞬遅れて視線を浴びていることに気付き、手を止めた後に意見を口にする。
「僕はどちらでも構わない。閃理氏の意見に従うさ」
「そうか。ならチームを組んで捜索する。俺と絵之本、メルと焔衣で行くぞ」
どうやら作戦内容にはあまり関心は無いっぽい。よって結果的に票が多かったチームを組んで探す方向性で決まった。
それぞれ二人組を作り、いざ捜索へ────
……行けたら良かったんだが、ここで問題が発生してしまう。
「あの、俺の剣返してもらっていいですか?」
「ダメだ。まだ全体の七割しか描けていない。
そう、俺の剣【
七割も描けていれば十分では? 俺はそういうのは分からないけど、絵描き的にはイヤなのかな。
しかし困った。剣無しじゃメルと組んだところで仮に奴と遭遇してしまったらどうしようも出来ない。
というか絵に熱中してる以上、動く気配もないから閃理もチームを組めないじゃん。
まさかいきなりこんなとこで躓くなんて……。正直想定外だ。
絵之本描人、絵描きとしては満点かもしれないが、協調性の無さは随一。勘弁してくれよ……。
「こうなってしまってはテコでも動かん。仕方がない、焔衣は絵が描き終わるまで待て。俺とメルで組み、先に行く。終わり次第二人で捜索に出てくれ」
「まぁそうなるよな……」
味方の我が儘で時間をロスしてしまうわけにはいかない。
急遽予定を変更し、お互いの相手を変えて閃理とメルが先に出発する。
この間に
二人が先に行くのを見送り、俺は剣のスケッチが終わるのを待つ。
「あのー、まだですか?」
「まだだ。せっかちは損するぞ、焔衣氏」
あーあ、こんなんになるなら貸さない方が良かったかもしれないな。
内心そう愚痴りながら絵の完成を待つのであった。
そういうわけで、数十分遅れで俺たち剣持ってるチームは捜索へと出ることとなる。
絵が完成してもまた納得した出来にならないと言うし、当然のように画材の片付けも手伝わされた。
絵之本さんは悪い人ではないけど、めんどくさい人ではある。それを思い知らされた数十分間だった。
「うーん、やはりあそこの描き込みはもう少し軽く抑えて、別の箇所を集中的に描くべきだったかな。いや、でも全体のディテールアップを……」
現在俺たちは町の商店街を探索中。人もそれなりにすれ違う場所を男二人は横並びで歩く。
絵之本さんは歩行中も構わずぶつくさと独り反省会中。流石にそれは控えて欲しいのだけれども。
見た目の無精さも相まって、隣を歩くだけで周囲の視線が痛いんだよな。
決して怪しい者ではないのだが、このままではお巡りさんの職質に遭いかねないんだけど。
「あの、聞いてるとは思うんですけど、今一応警察の人が結構歩いてるから、あんまり怪しいことはしないでくださいよ──って、あれ!? どこ行った!?」
よって俺は指摘も含めた注意事項を教えるために隣を振り向く……のだが、ここでまたしても事件発生。
隣を歩いて然るべき人物は、何故かもうそこに存在していなかったのだ。
嘘でしょ……。我が儘出遅れの次は迷子。もう本当に勘弁してくれ。
もはや手を焼くどころの話じゃない。芸術家の
「マジでどこ行ったんだよあの人は! まさか方向音痴とかじゃないよな!?」
あーもう! 最初に閃理がこの人と組むつもりでいた理由が今分かった。
メルにも引けを取らない奔放さ。多分この人とメルが組んだら捜索どころの話じゃなくなるな!
心の中ではがっくしと膝を突いて落ち込むけど、表には出さない常識くらいある。
頑張って行方を眩ませた相方を探すこと数分。奇跡的に当人のいる場所を捜し当てることに成功した。
「ちょっと! いきなりいなくなんないでくださいよ! そんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「ああ、すまない。本屋に置かれた画材たちが僕を呼んでいてね。つい身体が引っ張られてしまったんだ」
見つけた先は本屋。ああ、一応芸術家だもんな。
任務に全く関係ない画材を持って来てるくらいだし、どこかに寄るとしたらここだと思った。
本っ当にこの人は……。何で今回の増援要請に志願したんだよ!
「ところで氏の好きな色は何色だい?」
「本当に唐突だな……。まぁ、赤色とか」
「赤か。ふむ、王道で悪くない。今回は暖色を中心に色を付けてみるか」
いきなり好きな色を聞かれたが、変に反発する理由もないから素直に答えておく。
一体何に色付けるんだか。まぁ任務に関係ないことに変わりはなさそうだけど。
絵之本さんは絵の具セットをいくつか購入すると、無造作に開封してそれらをポケットに突っ込んだ。
なんつーアバウト……。落としてどこかに無くしても知らないぞ?
もう終始振り回されっぱなしだ。否応にもストレスが溜まってしまうぜ。
「さて、それじゃあ捜索に戻ろう。僕らはどこへ行けば良いんだったか?」
「えーっと、閃理たちは住宅地の方を中心に探してるらしいので、俺たちはこの商店街周辺ってことになってます」
「なるほど。人目は多いがまぁ大丈夫だろう。いざという時は僕に任すといい」
ここでようやく真面目に任務をこなす気になってくれたようだ。改めて俺たちの役割を説明する。
この町の商店街では昨日事件が起こったばかり。そのため犯人は強化された警備を避けるために商店街近辺で再び犯行を起こす可能性は低いと言える。
もし次に引ったくりなどの事件が起こすのなら、商店街以外の場所が適任ということだ。
ちなみに何故商店街に俺たちがいるかについては、向こうが裏の裏をかいて同じ場所で犯行を行う可能性も視野に入れての判断らしい。あわよくば擬人化体の犯行に遭遇し、一石二鳥を狙うという魂胆だ。
そして今回は犯人を捕まえるのではなく、その後を追うことが目標になっている。
真犯人の目的は擬人化体を使って窃盗を繰り返し、金銭を集めていると考えられているからだそう。
現に昨日、
「そういえば今回の相手について聞いてたりしてます?」
「安心したまえ。それについては要請があった時点で最低限のことを聞いている。それにここへ来てからより詳細な内容を一通り頭に入れているからね。氏が心配する程僕は無知ではない」
「あ、さいですか……すみません」
ふむ、念のために本件についてどこまで知っているのか訊ねてみたけど、それについては俺の杞憂だったみたいだな。
仮にも増援に来た剣士。ましてや俺よりもずっと先輩の剣士なんだから、それくらい出来てて当然か。
言動には困らされてばかりだけど、それ以外は特に問題はなさそうだ。
「…………」
「……ふーむ」
だが無用な心配をする必要が無くなったのは良いけれど、今度は会話が途切れてしまった。
別に無理に話を続ける必要はないとはいえ、ただ黙って横並びで歩くのも何だかなぁ。
何か良い感じの話をして、可能なら仲良くなっておきたいところ。俺はそう目論む。
それっぽい話題……どこかに無いもんかな。いや、あった。思い立ったがすぐにそれを口にする。
「えーっと、話は変わるんですけど、絵之本さんの剣ってどんな感じのなんですか?」
俺が話題として出した内容は絵之本さんの聖癖剣について。
剣士としての名前が“絵描の聖癖剣士”なんだし、多分絵に関する権能だろうなとは予想出来る。
でも逆に絵に関する権能って何だよ、って話だ。予想は出来ても内容がイマイチ分からないな。
「僕の剣は【
「現象化……?」
特に勿体ぶるようなことはせずに淡々と剣のことを教えてくれた。
聖癖も気になるところだけど権能の現象化ってどういうことだ? これについてはマジで分からない。
「描いた絵に現実性を持たせ、具現化させるのが
「つまり絵を物質化させられるってことですか? 普通にすごい権能だ」
「物質化と具現化は正確に言うと違うものだが、まぁその解釈で概ね正解ということにしよう」
ははぁ……そういうことか。
絵を実体化させられるってことは、事実上やってることは始まりの聖癖剣士が聖癖物質で物を作るのと何一つ変わらないわけだ。
あらゆる状況を聖癖章を使わずに対処が出来ると考えると、その潜在能力は計り知れない。
まさかこの能力なら現状を解決出来ると踏んでの選出なのだろうか? だとしたらこの人を選出した彗眼の持ち主には頭が上がらないな。
「ところでだが、あそこの少女……少し怪しいと思わないかい?」
「え、急に何を? ってか少女ってどれのことを言ってるんですか?」
すると絵之本さんは何かを見つけたらしい。人混みの向こうを指差した。
俺も示された先を同じように眺めるけど、当人には見えていても少女と呼べる年代の人はそれなりに多い。だから誰がその人物なのか分かんないって。
「あそこの迷彩柄の服を着込んだ、髪が頭頂部から赤、オレンジ、黄に染めた派手な頭髪の子だ。背格好から察するに年齢は16~18歳程度だろう。年頃の少女が手ぶらでどの店にも寄ろうとする素振りを見せず、それどころか頭を僅かに逸らして周囲を窺っている様に見える。まるで獲物を狙うハンターだ」
「すげぇ洞察力……」
一体いつ頃からそれに気付いていたのやら。絵之本さんの説明により、俺も当該の人物を発見する。
派手目な髪色、迷彩柄の服。そして辺りを執拗にキョロキョロと見渡す不自然な仕草……。
言われてから気付くのも便乗してるっぽく思われても仕方がないが、確かに怪しいな。
その人物は俺たちからそれなりに離れた位置で歩いていたけど、普通はすぐに気付ける距離じゃないぞ。
やっぱり支部の剣士なだけはあるな。一目で年齢と動向を見抜くとは。その洞察力も並外れている。
「僕の推測が杞憂ならそれで良い。だが念には念を入れるべきだろう」
「尾行……するっていうことですか?」
絵之本さんはどうやらあの怪しい少女の動向が気になるらしい。それについては俺も概ね同意見だ。
明らかに周囲から若干浮いているし、今は平日。高校生くらいの年頃の女の子が昼間っから商店街をほっつき歩いているのも違和感がある。
ここは当初の予定通り、怪しい人物を見かけたら追跡して、動向を探るのがいいかもしれない。
俺はその案で話を進めようとすると──
「焔衣氏、ナンパしに行きたまえ」
「ラジャ、ナンパをしに──って、ちょっと待てぃ!?」
下された指示はまさかのナンパ! ちょっと待て、何故ナンパなんだ!?
「ん? どうした、早く行きたまえよ。聞いているぞ、最近新しく入った剣士も氏のナンパがきっかけで所属になったとか何とか。慣れてるんだろう?」
「違う違う! 俺別にナンパが得意とかじゃないから!」
しょ、衝撃の事実を突きつけられてしまった……。
どうやら俺、この人にナンパ常習犯と思われているらしい。そんな事実は無──……いことも無いけど。
もしや朝鳥さんと孕川さんからの情報なのか?
そうだとしたら、何でそんな最後まで語弊たっぷりな証言なんかしてしまうんだ……。
「手段としてナンパを使ったことは本当ですけど、別に下心ありきでやったわけじゃないですって! 語弊! 誤解! 勘違い!」
「3・3・5のリズムに合わせて言い訳してないで早く行きたまえ。目標が商店街を抜けて見失ってしまうぞ」
抱かせてしまった誤解を解く暇も与えて貰えることもなく、俺はまたナンパを手段として目標と接触することに。
どうしてこんなことになった。俺はただ、普通に人と接したかっただけなのに……。
しかし、そんな悲しみを表に出す訳にはいかない。与えられた仕事はきちんとこなす。
俺はそそくさと絵之本さんから離れ、商店街を出るまで何十メートルもない地点にいる迷彩柄の女の子の所へ向かう。
話しかける前に相手の装備品を遠目からチェック。
袖無しの迷彩柄ミリタリージャケットを羽織った姿で、髪色は俺よりも遙かに明るい。今時の陽キャな高校生って結構派手に染めるよな。
今はスマホ一つあれば買い物が出来る時代だし、手ぶらでいることはそう珍しいものでもないけど、若者がこんなとこを昼間っからほっつき歩くもんかなぁ?
取りあえずチェック終了。頭の中でどういう感じの話を展開するか考えながら様子を窺い、そして声をかける。
「へい、そこの彼女。今暇してるんでしょ? もし良かったら俺と一杯お茶でもしない?」
「…………」
タイミングを見計らって俺は突撃。後ろから這うように回り込み、進行方向上に躍り出る。
俺だってこんなこと言うの嫌だし恥ずかしいけれど、仕事だから我慢して演じきってやるさ。
「俺も暇しててさー、せっかくこの町に来てもやることあんまりなかったんだけど、君みたいな可愛い子を見かけたから声かけちゃった。で、どう? 俺と一緒に来てみない?」
……そんなこと言ってるけど、内心じゃ台詞の捻出と羞恥心を堪えることで精一杯になってるんだぜ。
俺の中にあるナンパする若者のパブリックイメージで何とか紡ぎ出せている言葉の数々。ああもうこれ黒歴史確定だよ……。
「…………」
「んー……無視かぁ」
しかし俺の迫真のナンパ台詞だが、これに対する迷彩柄の少女の反応は薄い。
訝しんでしまうのも訳ないが、それを抜きにしてもあまりに無口。
言葉を交わすのも嫌って思うのも分からないでもないけど、流石に無言はきついぜ。
さらにこの少女、会話を無視するわりに俺のことをまじまじと見てくるのだ。
まさかナンパするくせに服装がそれっぽくないことを見抜いた? あるいは俺のことを品定めでしているのか?
何かしらの目的でもあるんだろうな。それが何なのかは分からないけど、警戒しておくに越したことはない。
「…………」
「え、何? もしかして……付いて来いって?」
数十秒ほどの沈黙を経て、ついに迷彩柄の少女が動く。
俺の服の裾をちょんちょんと軽く引っ張ると、そのまま自身と俺、そして最後に商店街の外を指差した。
これは……同行しろってことか? 発言は一切無いけど明らかに行動で意志を示した。
待ち受ける結末は怪しいが、一応ナンパ成功か?
ならば一応連絡はしておこう。俺は振り返って絵之本さんのいる方向を見る……けど、案の定その姿は消えていた。
あのさぁ……と思うけど、今は後回し。怪しい少女を調べるためにも気にしすぎてはいけない。
そんなわけで俺と迷彩柄の少女の二人組となり、商店街を出る。
マップによればこの先に学生らが放課後に入り浸りそうな喫茶店や飲食店が点在する区域にたどり着けるけど……、そこへ到着したとして何を話す?
絵之本さんが怪しいって言うから声をかけたら、普通にどこかへ案内されてるという現状。これじゃ本当にただのナンパじゃねーか。
そんな趣味など無ければこんなことしてる暇も俺には無いんだよなぁ。
仕方ない。彼女には申し訳ないけど、タイミングを見計らって適当に理由付けて離れよう。
「えーっと、あのー……。ちょっと良い、かな?」
「…………」
考えは直ちに行動へ移す。迷彩柄の少女に呼び掛けるもまさかの無言。
無視……。俺に声などまるで気付いてないかのように案内を続けている。
うーん、どうしよう。もう金輪際再会しない間柄とはいえ、しつこく接するのも悪印象だからなるべくしたくない。
目的地に着いたらそこで断る作戦で行く? いやしかし、それはそれで当人の労力をふいにしてしまう。これも却下だ。
じゃあ少しでも人気の無い場所に来たら『目隠れ聖癖章』を使って去るってのはどうだ?
怪異チックに去ることで都市伝説っぽく演出しつつ、また姿を眩ませた相方探しへシームレスに移れる。うん、これで行こう!
逃走方法に名案が浮かんだタイミングで、少女の案内は意外な場所で止まることとなる。
「ん? ここは……」
歩みが止まった先は路地裏。いつの間にか表の通りを抜けてしまっていた。
スマホで現在地を確認すると、俺が予想していた区域にほど近い場所ではあるようだ。
まさかここが目的地? 俺が言うのも何だが、あまりにも場違いでは?
それにこの状況……年頃の女の子が路地に男を連れてくるって、まさかとは思うけど──
「…………っ」
「ちょ……!?」
うぉ……!? っと、ここで驚くべき事態が発生。
一瞬色めいた予感が展開されそうになった時、迷彩柄の少女が突然俺に抱き付いて来たのだ!
これには俺も心の中で騒ぎ出してしまう。だって普通そうなるだろ!?
うっすら予感していた援交少女の疑惑が秒で証明されるとは誰も思うまいて。
まさか目を付けた人物がこんなことをしてくるなんて思いもしないだろうよ。
ただまぁ……彼女が求めてるであろうことを俺は何一つしてあげられないが。
「……っ、ちょ、ストップ! 一旦落ち着け。考え直せ、な? そういうのはマジでダメだって」
俺は咄嗟に抱き付いた少女を引き剥がして説得を試みる。
だってさ、普通はこんなことでお金を稼ぐような真似は良くないと考えて当然だろ?
確かに現代社会じゃこういう表立って言えないことをしていかないと生活出来ない人が大勢いることも理解してる。
でも、それをこんな若い内からやっちゃダメだ。ただの理想論だけど普通に働くとか、そういうのは出来ないのかよ!
「…………」
「ごめん。俺からナンパしておいてこんなこと言うのもアレだけどさ、人間真面目に働くのが良いと思う。もしあんたが生活に困ってる人なら、せめて今日一日分の食費くらいなら奢ってやる。だからこういうのはもう止めようぜ? な?」
必死の説得にも少女は無言のままだが、その目はしっかりと俺の方を向いている。
話は聞いてくれてるんだと信じ、俺はポケットに忍ばせた財布に手を伸ば──そうとしたんだけど。
「……あれ? ん、あれ? 財布どこだ?」
無い。俺の財布が無くなった。おいおい嘘だろ? このタイミングでどっかに落としたのか!?
あんなカッコつけておいて財布の紛失とかダサすぎる! あぁ、もう最悪だ……。
「あー、えっと。ごめん、俺の財布どっかにやっちゃったみたい。探すの手伝ってくれたら──……って」
思わぬアクシデントは仕方がない。少女には一言謝りつつ、ついでに探すのを手伝ってもらおう、そう思って改めて前を見た時のこと。
少女の右手には見覚えのある物が掴まされていた。
剣士になってから買い換えたばかりの長財布。それに酷似した……否、実物がそこにあった。
この事態に一瞬混乱するけど、すぐに状況を理解。
ついさっき、盗まれるには十分な
「ちょ、あんた、それ俺の財布──うぉっ!?」
「…………っ!」
それを指摘した瞬間、少女は俺を突き飛ばすや否や、そのまま逃走を図りやがった!
ま、まさか、そんなことが……。援助交際で稼ぐ少女かと思ったら、姑息にもスリとは予想外!
これは俺の甘さが招いた招いた悲劇。責任は俺が取らねばならない!
でも残念だったな! 俺は聖癖剣士、剣に触れれば通常の人間の数倍は動けるようになるんだぜ?
「んにゃろぉ……! 財布返せ、ドロボー!」
すぐさま剣に触れて速攻で動き出す。
相手は女性だから手荒な真似はしない。だが相応の報いは受けて貰うぞ!
相手もそれなりに足が速いようだが、今の俺の前では無意味な健脚ぶりだ。
あと一歩の所まで近付いた時、またしても信じられないことが起きてしまう。
「…………ッ!」
「ぐぉっ!? がッ、目が……!?」
襟首を掴みかけたその瞬間、スリの女から突如として猛烈な閃光が瞬いたのだ!
この直撃を受けた俺は、光に視界を塗りつぶされて転倒。目潰し状態にされてしまう。
今何が起きた!? いや、何をされたのかは分かってても、何でそんなことが起きたのかが分からない。
逃走用に閃光を発射するスリなんて聞いたことないんだが!? 用意が良すぎて驚きを通り越して最早賞賛レベルだ。
とはいえマズい状況に変わりはない。視界は回復してないし、スリは今にも逃げられそう。
そうか……俺のナンパに応じたのは、財布に目を付けてあえて引っかかったんだな。
絶対に逃げきれる秘策も仕込んでいるのも含め、相手が数枚上手だった。
くそぉ……。昨日閃理が俺に言った『抜かるなよ』という言葉が深く突き刺さる。
まさかの凡ミス。無念……と思ったその瞬間。
「やれやれ、氏は甘いね。でもそういう甘さは嫌いじゃない」
「……え!?」
危機的な状況下で不意に届いた絵之本さんの声。
行方を眩ませていたのに一体どこから……と思ったその刹那のこと。
「ふぅ、焔衣氏。移動はもう少し落ち着いて行きたまえ。何度も揺れて落ちそうだったんだから」
「え、絵之本さん!? 一体どこから……」
俺の背後から急に絵之本さんが出現。さも最初からそこにいましたと言わんばかりに、当然の如く立っている。
マジでどこにいたんだ? またどこかに迷子になってるとばかり思ってたんだけど……。
「どこって、氏の背中だよ。『ジゴロ聖癖章』があれば、小さくなって他人に気付かれずに密着出来る。氏が僕から離れた瞬間に引っ付いた。それだけのことさ」
「そんな局所的な能力の権能が……って、そんなこと言ってる場合じゃない! 絵之本さん、あの人スリじゃないですか! 俺の財布が!」
聖癖章の内容も気になるところだが、今はスリのことが先決だ!
予想もしない事態の発生に、視界も回復しきっていない俺は焦ることしか出来ない。
だが一方の絵之本さんは他人事だからか、かなり落ち着いていた。
あんたが行けって言ったから言ったのに……。ちょっとだけ恨みがましく思っていると、当人が動く。
「まずは落ち着きたまえ。氏を先行させておいて僕自身が何もしないわけがないだろう」
「それってどういう……」
「こういうことさ」
【
ここでついに絵之本さんが自分の剣を抜く。
まだ光の影が視界に映る中で見えた
俺のボキャブラリーで言うなれば、それはまるで小さな松葉杖。先端に向かって行くに連れて細く尖った剣身が付いている。
さらに妙ちきりんな部分もあり、それが刃とグリップの間に付いたローラーらしきパーツ。そこが様々な色のインクで染まっているのだ。
例によって異形な聖癖剣を手にした絵之本さんは、それを指揮者のタクトの如く振り回し始めた。
「戦いに芸術は両立し得るのか──その答えは可だ。僕自身戦いは好まないが、僕が描く芸術が権能により具現化されるのであればその限りではない。つまり……」
何やら聞いてもないのに戦う理由とやらを口にし出して来たぞ。
曰く戦うのは好きではないらしいが、剣を使う場合じゃ違うらしい。それでつまり……何なんだ?
そして内容の理解に困惑するよりも速く、今にも逃げられてしまうはずだったスリの女に異変が起きる。
「…………ッ!?」
何が起きたのかと言うと、スリの女の手や足から縄のような物がいきなり飛び出したのだ。
勢い良く射出された縄は壁や地面などに粘り付き、完全にその動きを封じてしまう。
少女本人も自分の身体から突如として出現したオブジェクトに驚きを隠せない様子。一体いつの間に仕込んだんだ……!?
だが、それだけで『現象化』の権能は終わらない。
相手を拘束したかと思えば、今度は
さらにポケットからある物を取り出した。
それはついさっき購入していた絵の具。白色のそれを乱暴に握り潰し、それをローラーに塗りたくる。
十分に色付いたそれを捕らえた相手に向けると、空に何かを描き始めた。
「相手が誰であろうとも……僕に敵対する者は全員、僕の芸術の一部に仕立て上げてやるってことさ」
【聖癖開示・『ペインティング』! 描く聖癖!】
そして──開示攻撃が発動。さり気にヤバい台詞を吐きながら、空中に浮かぶ白い絵が実体化した。
何を描いたのか──それは蜘蛛の巣。何重にも重なった幾何学的な網目の線を作り出し、それをスリの女に向かって打ち出した。
当然相手は動けない。抗う間もなく直撃を食らうと、糸でぐるぐる巻きにされた状態で路地に転がされてしまった。
「す、すげぇ~……」
「これで尻拭いは済んだろう。氏の財布を取り返したまえ」
これでチェックメイトだ。スリの逃走は絵之本さんの技で防がれ、ギリギリ未遂に終わる。
あと縄が出た時点で俺の財布はスリの手から離れており、すぐそこに転がっていた。
私物を無事に回収し、ほっと一安心。だがまぁ……治安の悪い町だな、ここは。
「……ん? もしかしてこの人……」
ここで俺はとある違和感に気付く。捕まったスリの女を見て、その考えをさらに練っていく。
さっき思った通り、この町には聖癖剣の力を悪用している奴のせいで治安がすこぶる悪い。昨日もそれを目の前でみているくらいだしな。
もしかしてだけど、この人、人間じゃないって可能性があるんじゃないか……?
「あの、絵之本さん。正体を暴くみたいな権能の聖癖章とか持ってません?」
「その様な都合の良い物は無い……が、人によっては拷問同然のことをする聖癖章ならある。使うと良い」
バレずに相手へ引っ付くというご都合みたいな権能持ってるくせに……と頭の中で思いながら、借り受けた聖癖章をリードする。
【聖癖リード・『くすぐり』! 聖癖一種! 聖癖唯一撃!】
おおう……くすぐりか。これは確かに人によっちゃぁ拷問だな。
ってことで読み込んだ権能を疑惑のかかるスリの女に向けて放つ。
剣から薄いガス状の手が出現すると、蜘蛛の巣でぐるぐる巻きにされた少女へ迫り、そして──
「…………~~ッッッ!?」
全力でくすぐりにかかった。蜘蛛の巣を貫通して人間の弱いところを執拗に攻めていく。
見かけ上は人と同じ身体だからか、くすぐりは効いてはいるようだ。それでも声は出さない……いや、出ないんだろう。
「うわぁ……。えげつな」
声にして出せない苦しみにスリの少女が悶絶する様を眺め、俺は思う。ちょっとやり過ぎかなぁ、と。
自分で使っておいて思うのも何だけど、これ絶対受けたくねぇ。恐ろしい権能だわ。
くすぐりの刑の処すこと数分。少女の身体に変化が起きた。
「…………ッッ!!」
「うおっ!? また光ったってことは、こいつ……」
「ああ、話には聞いている、例の剣が作り出した擬人化体なのだろう」
再び閃光が炸裂。今度のは咄嗟に目を守れたから目潰しにはならなかったな。
そして今のアクションでスリの女の正体が完全に判明。案の定これも擬人化体のようだ。
ド派手な髪からの発光とは……不自然な髪色だとは思ってたけど、そんな機能が付いていたとは。
「…………っ」
そして無意味な抵抗による閃光が数度瞬き続けるも、くすぐりに耐えかねた擬人化体はついに限界を迎えてしまう。
「あ……」
「元の形に戻ったようだね」
糸に巻かれた人型は、ミニカーの擬人化体同様一瞬にしてその姿を消失させる。
がしゃん、と地面に落ちたのはランタン。キャンプとかに使うようなガス式の物だった。
「ふむ、なるほど。頭髪の色は炎の色だったというわけか」
「気付くのはそこですか……」
どうでもいいことに興味を持つ絵之本さんは放っておくとして、まさか本当に商店街にも擬人化体がまだ蔓延っているとはな。
知ってか知らずか、これを見破った絵之本さんもすげぇや。ただの偶然だとは思うけれど。
このことは閃理たちにもきちんと報告しておかないと。そう思いながらスマホを取り出そうとした時、タイミング良く着信が来た。
相手はメルのようだ。何か進展でもあったのかな? 出ない理由は無いからすぐに出る。
「もしもし、メル? どうした、何かあった?」
『うン。閃理が怪しいとこ見つけたから焔衣に伝えろっテ。そっちは何かあっタ?』
「ああ、擬人化体にスリされて、絵之本さんがそれをどうにかしてくれたところ。んで、その場所ってどこだ?」
電話越しにお互いの情報を共有。どうやら向こうも進展があったみたいだな。
会話の全容は省くが、どうやら俺たちにそこへ来て欲しいみたいだ。
こっちも俺の財布は取り戻せたから、特に問題は無い。じゃあそこに移動しますか。
「絵之本さん。閃理たちのいる場所に今から移動するんで、きちんと着いてきてくださいよ──って、あれ!? また居なくなった!?」
「失礼だな、焔衣氏は。僕はここにいるよ。その場所まで案内してくれ」
「あーっ! 何それズルぅ! 自分の足で歩いてくださいよ!」
メルとの電話を切るとすぐに行動へ移る……んだけど、絵之本さんはまたやらかす。
移動が面倒臭いのか、また聖癖章の力で俺の背中に張り付いてやがる。何たる他力本願っぷりだ。
くそぉ、とはいえ財布を取り戻してくれたわけだし、これ以上の文句は言いづらい。
はぁ……しょうがねぇ。幸いにも重さはそんなに感じないわけだし、甘んじて受け入れるか。
というわけで俺たちはマップに従って次の場所へと急行する。
閃理たちは何を見つけたのか。そこで何が起きるのか。早いとこ行って確かめなくちゃな。
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