第七十九癖『輝く太陽、異次元に没する』
試合代行という名のお仕置き開始から数分が経過。
必殺の一撃を難なく防御しきってから、戦いは平行線を保って──否、保たされている。
「ふッ! はあッ!」
「その程度の攻めでは私に勝つことはおろか、近付くことさえもままなりません。もっと食らいつくように攻めることが攻略の鍵ですよ」
厳しい言葉を言うが、如何せん距離という概念を覆すほどの権能を宿しているメイディさんの剣は簡単に捌くことなど出来ない。
異次元空間を介することで変幻自在な動きをする
むしろ完全に劣勢なのに倒されることなくここまで粘っていられる日向もすごい。相手は本気じゃないとはいえ試合に食らい付けている。
「やっているな」
「あ、閃理。やっぱり気付いてたんだ」
「ああ。お前たちが喧嘩を始めたことも知っているぞ。まったく、もう少し仲良く出来ないのか?」
ここで閃理が戻ってきた。事の始終は
まぁ悪いのは俺じゃなくて二度も約束を破った日向だし……。心の中でそう言い訳をしておく。
「それにしてもまさかあの方と試合をすることになろうとはな。日向も幸運な奴だ」
「そんなに貴重な経験なの? 始まりの聖癖剣士って六人中三人は仲間にしてるのに?」
閃理が言うにはやはりメイディさんと手合わせすることはかなり貴重らしい。だが果たして本当にそうなのだろうか?
うっすら気になっていたメイディさん以外の始まりの聖癖剣士。現存する剣と同じく六人いる中で、その半分はすでに組織の手中にあるわけだ。
三人もいれば上位剣士の訓練相手として手合わせしてくれているのではないのだろうか?
一般剣士には物理的にも実力的にも決して手の届かない相手にはなるだろうけど。
「確かに手中にあると言えばそうだが……正確に言えば組織が居場所を把握し、なおかつ協力してくれている剣士は二人だけで、残りの一人は諸事情により厳重に封印されているんだ」
「え、何それ。封印って……何かしたの?」
「大昔にそんなことがあったらしい。あまり口外出来ない話だから内容は明かせないが、他の剣士たちに加え光と闇が一時的に協定を結ぶほどの事件を起こした──とだけは言っておく」
そ、そっか。あくまでも居場所を知っているだけであって、全員が組織に協力的な姿勢を見せているわけではないんだな。
しかし光と闇が協力し合わなければならないほどの大事件……!? この段階でもう爆弾レベルの情報なんだが?
内容は分からんけどやべぇな、その話。始まりの聖癖剣士も味方してくれる人ばかりじゃないとは。
きっと壮絶な戦いだったに違いない。まだ見ぬ他の剣士たちも参戦したってんだから、どれほどのヤバさを秘める話だったのか容易に想像がつく。
怖さ半分でどんな事件だったのか聞きたくなってくるけど、教えてはくれまい。メイディさんは教えてくれるだろうか? 難しいかなぁ……。
「……ちっ。こうなったら奥の手だ! この技ならきっと──」
するとここで試合に変化が。どんなに攻めても近付くことさえ叶わなかった日向が、またも聖癖章を取り出してリードの体勢に。
まさかまた解放撃か? 今度は何の手を使う?
【聖癖リード・『猫目』『スレンダー』『マフラー』! 聖癖三種・解釈一致! 聖癖調和撃!】
流石に二度も解放撃は使わないか。でも今度のは好相性コンボで攻めていくつもりだ。
そしてさらなる変化──日向の目はまさしく猫のような縦割れの瞳孔になり、首元からは白い光がマフラーのような形状となってたなびき始める。
リードした聖癖は三種類。この組み合わせはどのような効果を発揮するのか。
「うっ……おおおぉぉッ! まだまだ、私の本気は、もっと出せるんだから!」
【聖癖暴露・
なっ────!? 調和撃に暴露撃の連続技!? 正気かよあいつ!
予想だにもしないまさかの作戦……。でもそれは本当にやっちゃって大丈夫なのか?
俺も以前、似たような感じで解放撃からの暴露撃をしたことはある。
あの時は体力の消耗もあったとはいえ指先一つも動かせないくらいの反動と聖癖章の消滅、剣をメンテに三日出すほどのダメージという被害を受けている。
日向のやろうとしていることは、一体どれほどまでの反動を受けてしまうのだろうか……? 流石にやや心配だ。
「──聖癖暴露調和撃……ソル・アラウンド・プロミネンスッ!!」
ついに日向が動く! その瞬間、俺の視界は猛烈な輝きによって潰された。
なんて光なんだ……ッ! 何も見えない……強い熱さえも感じる凄まじい光量に目が開けられない!
まさかあれだけ聖癖をリードしておいてただの強烈な目眩ましなのか──とも思わないわけでもないが、そんなことはない。
何も見えない中でも聞こえるそれは剣がぶつかり合う剣戟の音。こんな眩しいのにメイディさんは動けてるのかよ!
でもこのままじゃ何も分からない。どうすれば試合を見続けられる……?
【聖癖リード・『目隠れ』! 聖癖一種! 聖癖唯一撃!】
するとここでまたもや聖癖リード音。今度は何をするつもりだ?
「焔衣。これで見えるか?」
「え? あ、見える……。『目隠れ聖癖章』で見えるようになるのか」
何か急に隣から閃理が俺に確認を取ってくる。
何事か? そう思って目を開けたら若干暗いものの視界を取り戻せていた。
はぇ~、意外な使い方だ。凄まじい光を前にすれば視界暗転も中和されるのか。新たな知見を得た。
とにかくこれでようやく試合を拝め直せるな。さて、戦況はどうなっているのやら。
「うううっ……、だああああッ!」
「それでこそ太陽の剣に選ばれた剣士。ようやく一歩、前に踏み出すことが出来ましたね」
視界に映るのは運動場を照らしながら縦横無尽に駆け巡る日向の姿。
まるで人型の光が猛スピードで獣のように動き回っている感じでメイディさんに連続攻撃を仕掛けている。
この発光はたなびくマフラーが原因らしく、剣士から迸る暴露撃の余剰分を加速力として放出。熱を感じさせる強い光はそれの副産物の模様。
俺が知る限りメルの速さにだって劣っちゃいない。
メイディさんも相変わらず平気な顔をして攻撃を受け流しているが、距離は徐々に詰められてきている。
日向の本気はここまで凄いのか! これはマジで勝てるんじゃないか……!?
「どうです、私の本気はッ! 少しは見直してもらえましたかッ!?」
「はい、流石に驚きました。これで先代炎熱の聖癖剣士による聖癖暴露撃の十分の一レベル、と言ったところでしょうか」
が、日向が求めた答えは別ベクトルで恐ろしさを感じさせる返答であった。
というか俺もビビる。この全力であろう技が先代の本気に全然及んでいないっていう事実に。
日向も俺も愕然とする中で、メイディさんの発言は続きを口にする。
「そして、私の本気にはまだまだ到底及ばないこともご理解いただけると幸いです」
「──ッ!?」
この瞬間、背筋がぞくりとする感覚が俺を襲う。
もしかすれば日向にはもっとはっきりとした悪寒を感じ取っているのかもしれない。
超高速で動く日向の進行方向に、突如として空間の穴が開く。
あまりにも一瞬過ぎて本人も避けることに考えがいかなかったのか、そのまま穴に突っ込んでしまう。
穴は閉じられると、一瞬だけ視界は真っ暗になるが直後に全く見当違いの方向から日向が現れて光は保たれる。
「うっ……!? 何、今の……」
「立ち止まってはいけませんよ。もっとも、動いていたとしても結果は変わりませんが」
これは……第一の権能『空間跳躍』の応用か。
日向を次元の穴に突っ込ませて、そのまま運動場のどこかへと強制的に移動させているんだ。
メイディさんの権能が複数あることを知らない日向には何が起こったのか理解出来てない模様。
暴露撃の最中であるにも関わらず、その脚を一時停止してしまう。
しかし、そんなことはお構いなしと言わんばかりに『異次元』の権能は日向に容赦をしない。
動きを止める日向の足下に突然開く次元の穴。文字通り中へ落ちていくが、そのまま天井付近に再出現。
落下してまたすぐに次元の穴を通って今度は俺たちの目の前に転がり出され、三度穴の中へ。
その途中で暴露撃は持続時間を切らし、元の日向に戻ってしまう。それでも次元の穴は止まらない!
「こ、これは……!」
「ああ、詰みだな」
間違いない……空間を行き来する無限ループの中に日向は閉じ込められたんだ。
次元の穴の出現に反応して逃げないと一生このままになる。なんて恐ろしい技だ……。
「ぐっ……! ちょっ、タンマ……おぁっ!?」
「お忘れではありませんよね? この試合は代行である前に日向様に対するお仕置きであると。私のご主人様に二度も無礼な真似をしたことへの反省をしていただかねばなりません。このままあと百回ほど空間の穴を行き来していただきます」
「そ、そんな──…………、いやああああ!」
ループに陥る日向にさも当然とばかりにこの試合が元々何だったのかを再確認させるメイディさん。
そういえばお仕置きをするために試合の代行をしたんだったっけ。何か次から次へと色んなことが起きたせいで俺も忘れたわ。
虚しく叫びながら上から下へと延々落ち続ける位置に固定された日向。うわぁ、これもうお仕置きのレベル越えてんじゃん。
降り立てる地面のない事実上の永久落下ってどんな感覚なんだろうか。俺は知りたくないけど……。
「はい、これで私の勝利ですね。もし自力で抜け出せたなら日向様に勝ちを譲っても構いませんよ。もっとも空を飛べる権能が無ければ相当難しい挑戦になりますが」
最後まで余裕たっぷりのまま勝利を勝ち取ったメイディさん。いやいや、勝ったのはいいがこれはやりすぎだろ。
一度のみならず二度も剣を褒めた相手にこの仕打ち。うーん、この人の方が鬼畜だったわ。
流石の閃理も何も言わずにドン引きしている。俺だって気分は同じだぜ。
コレはどうにもオーバーキルだ。いくら俺に暴力的な態度を取ったいけ好かない奴とはいえ、限度ってもんがある。
雇い主として一言言わなければいけないかもしれん。でも何て言おうかな……そう言葉に迷っていたら、先んじて物申す人がいた。
「メイディ、
それはメル。一歩前に出て、メイディさんに英語で苦言を呈した。
相手は始まりの聖癖剣士だっていうのに物怖じしていない。怖いものなしかこいつ。
「しかしメラニー様。私の経験上、日向様のような性格面に難のある人物を矯正するには力を見せつけることが最も有効だと考えております。情けをかけるのは結構ですが、それでは本人のためにはなりません」
「確かに日向、焔衣にキツく当たル。それは本当。ちょっと優しくないのも本当。でも、だからって
持論を展開するメイディさんだったが、メルは真っ向から意見をした。
確かに……俺もメルの言葉に賛成の意を表しよう。
時代がもし過去のままであればこれも一つの方法として認められるかもしれないが、今はそういう人道に反することが厳しく叱責される時代。
ましてや拷問などアウトよりのアウト。もしこれが聖癖剣関連じゃなければバッシングの大嵐だろう。
決心がついた俺もようやく一言物申しに一歩を踏み出す。身内の行き過ぎた行いを止めるのは俺の役目だからな。
「メイディさん。俺からもお願いします。日向を解放してあげてください」
「ご主人様まで……。いいのですか? また同じ事を繰り返すかもしれませんよ?」
「確かにそれは嫌だけど……でもお願いします。日向とはもう一度、ちゃんと向き合って話をするので」
俺が釈放を望むと、メイディさんからは反論ではなく忠告がなされた。
うむ……プライドの高い日向のことだ。そうなる可能性は無きにしもあらずだが、今はどうでもいい。
そもそも日向は俺と対話をするチャンスを作っていたんだから。
さっきの試合内容からして俺の負けになる確率は高かっただろうけど……それでも俺を嫌う理由を話そうとは考えていたんだとは思う。
本人なりのやり方に最初こそ気付けなかったけど、改めて思えばプライドが邪魔して素直にさせてくれなかったんだろう。戦うことで心情を吐ける機会を狙っていたのかもしれない。
それにメイディさんが横やりを入れる形になってしまったんだ。まぁこれは全部俺の憶測だけど。
第一ここまでする理由を作った相手であっても、俺はそんなことまで望んじゃいない。
俺が求めてないことを俺のためにするのは……むしろ迷惑だからな。
「……分かりました。ご主人様がそう仰るのであれば日向様を解放します」
「良かった。ありがとう、メイディさん」
「ですが、代わりに別の罰を受けていただきます。それでよろしいでしょうか?」
「それは止めないんだ……。まぁ、はい。なるべく優しい内容でお願いします」
日向の解放を認めてくれたメイディさんだったが、お仕置き自体を止めるつもりはないらしい。
流石にそれは厳しすぎやしませんかね……? 一応手加減はしてもらえるよう頼んではおく。
そして日向のいる方を見ると、もう何十回目かも分からない無限落下は唐突に終わりを迎え、メイディさんの真上に次元の穴が出現。落下してくる日向をお姫様抱っこで受け止めた。
あーあ、流石に無限ループに囚われたのはキツかったのか、目を回して気を失っている。
身体的な戒めはもう十分だろう。最後までループしていたらどうなっていたことやら。
「閃理、『癒し系聖癖章』持ってる?」
「今持ってくる」
とりあえず閃理に回復効果のある聖癖章を借りることに。流石に持ち合わせてなかったようだから、しばらく待ってからそれを貸してもらう。
日向を床に寝かせ、俺の剣で聖癖章をリードする。
【聖癖リード・『癒し系』! 聖癖一種! 聖癖唯一撃!】
剣にみなぎる癒しの力を日向に散布。応急処置はこれでいいだろう。
あとは目覚めるのを待つだけ……しばらく様子を見ておく。
「ん……、ううん……?」
「あ、起きた。おーい、大丈夫か?」
ははぁ、この聖癖って気絶にも効くのか。これまた新たな知見を得たな。
とりあえず当人の意識は回復した。お目覚め早々に体調を伺う。
「……あんたなんかに心配される筋合いは──」
「お目覚めになられましたか、日向様」
「ひっ……!?」
つっけんどんな返答も次に声をかけた人物の姿を目にするやいなや、引くような声の悲鳴に早変わり。
そのまま腰が抜けたみたいにバタバタと忙しなく動かして俺の後ろに隠れてしまった。
めちゃくちゃ萎縮してる……。毛嫌いしている俺の後ろに誰彼構わず隠れてるんだもの、こりゃ相当堪えたらしい。
全面的な同情はしないが、流石に少し可哀想かも。
「日向様、先ほどは申し訳ありませんでした。いくらお仕置きとはいえ流石にやり過ぎてしまいました。どうか私の謝罪を受け入れていただきたく思います」
でもそんな日向に構わず、一歩近付いてメイディさんは謝罪を口にした。
俺とメルに怒られた以上、本人が謝らないわけはないよな。礼儀正しく深々と頭を下げる。
これに対し被害者の日向はというと…………かなり訝しげな目でメイディさんのことを見ているようだ。
俺の服の裾を掴む手がプルプルと震えており、どうにもメイディさんにトラウマを覚えてしまった模様。
プライドもきっと折られたに違いない。初めから勝てない勝負だったとはいえ、二度の本気を出しても一歩も及ばずに勝負がついたんだからな。
日向に限らずとも自分の本気が全く通用しないってのは相当にキツいはず。むしろ褒められただけすごいよ、ほんと。
「やり過ぎだって分かってるなら始めから加減してくださいよ……」
「日向、本人的にはやり過ぎてる自覚が無かったからさっきのやったんだぞ」
「はい。ご主人様が止めにならなければあともう四十ループはされていたでしょう。こればかりは感謝するべきです」
「こいつが……!?」
まぁ最初に止めに行ったのはメルだけどな。空気を読んでか今は何も言わないけど。
それはそれとしてお仕置きを強制終了させたのが俺だと知ると、日向は目を丸くする。
そんなに意外か? いくら気にくわない奴とはいえ、わざわざ身を案じて止めに行ったことが。
俺だって敵であっても怪我をしてたら最低限の処置をするくらいの思いやりはある。仮にも仲間なんだからそれくらいして当然だろう。
「…………そう。ま、あんたのメイドだもの。一言命令すればそりゃ止めてくれるでしょうね」
「むっ……確かにそれは事実だけど、もう少し言い方ってもんが──」
「でも……あ、ありがとう。嫌いな奴のためにわざわざ動いてくれたことは感謝しとく……。一応ね」
歯に衣着せぬ物言いに一瞬イラッと来たが、直後に思わぬ言葉が飛び出て拍子抜けした。
日向が──素直に感謝した。そんなことがあるのか……。正直意外すぎてムカつきも忘れてしまう。
とはいえ、流石にメイディさんが目の前にいる手前、普段通りの態度を出せないだけかもしれない。きっとそうなんだろう……多分。
「きちんと謝れましたね。では日向様、ご主人様が別のお仕置きに変えてほしいとも仰ったので、内容を変更して続きを致します。お覚悟はよろしいですか?」
「は!? あんた、人がせっかく感謝してあげたのに何余計なことしてんのよ!」
「いや誤解だ誤解! 俺はそんなこと自分から頼んでねぇって! ……まぁもう少し手加減してほしいみたいなことは言ったけど」
「それ結局言ってるようなもんじゃないのぉー!」
おいいいぃぃ! それはあまりにもバッドタイミング過ぎるだろ!
ここでメイディさんが場の空気を無視してお仕置きの再開を説明するという暴挙に出た。
これには日向も立ち上がって俺の胸ぐらを掴み、猛烈な勢いで首を揺すりまくる。
まぁお仕置き自体を止めていないのは確かだから、あんまり否定出来ないのが辛いところ。
うむむ、それはさておき代わりのお仕置きってどんな内容にするつもりだ? 流石にもう少し手心のある物がいいんだが。
「そうしましたら日向様。あなたが私のご主人様である兼人様に対し何故そこまで強く嫌悪するのかをお答えください。それが代わりのお仕置きです」
「えっ──それを言うの!? ここで!?」
はい、とメイディさんは即答で答える。
どうやら試合に勝てば教えてくれる予定だった理由の告白をここでする、という物らしい。
うむ、確かにこれなら罰の内容としても十分だし、俺も知りたいことを知れる。ナイスペナルティだ。
「うんうん、確かに気になル。教えテ」
「そうだぞー。こっちからしてみればいきなり嫌ってきた上でこんなことされてるんだからな。答える義務は発生してると思うぞ」
これに便乗して、ここぞとばかりに理由を知らない組の俺たちも参戦。とっとと理由を吐くよう野次を飛ばしていく。
閃理はどうせ知ってるだろうから何も言わないままだが、少なくともあっちに味方することはないはず。
逃げ場は今度こそ無くなったぞ日向。さぁ、大人しく言うのが吉だぜ。
「う、うぅ……。分かったわよ。話すから待ちなさいよ……」
「よし! 言質取った」
「せっかくだから録音しとク。支部に着いたら頼才とか透子に嘘言ってないか聞くかラ」
「あーもう好きにしなさいってのよ……。何でこんなことになるのよほんと……」
ここでメルのアシストが発動。スマホの録音機能で発言を一字一句記録するつもりだ。
最早全てを容認する他無い日向。身勝手に俺のことを毛嫌いするツケが回ってきたな。
後悔でしょぼくれた顔をしながら、深呼吸で落ち着きを取り戻すと、ついに理由を明かし始めた。
俺を忌み嫌うその真相──聞かせてもらおうじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます