第七十三癖『新たな主の、小さな悩み』
翌日──俺の目覚めはだいぶ遅くなってしまった。
何せ時計を見ればもう九時半。寝坊してしまったなんてもんじゃない。眠気も一気に吹き飛んだ。
「ヤッベェ! 早くしないと……!」
訓練まであと三十分。ああもう朝からツいてない。
慌てて布団から飛び上がろうとした──この辺りで俺は気付く。
「あ、今は産方さんの家に泊まってたんだっけ……」
一瞬にして冷静さを取り戻した俺は、ふと両横の布団を交互に見やる。
左側の布団は綺麗に畳まれていた。こっちには閃理が寝ていたから、すでに起きて行動してるんだろう。
右側にはメル。酷い寝相だが寝息を立てている。
そうか……
何か少し不安だけど、訓練があれば閃理が起こしてくれるはずだし、多分大丈夫だろう。
目覚め直後の頭も徐々に明るくなっていく最中、襖を軽くノックする音が。
この感じ……懐かしい。何故か俺が起きるとめちゃくちゃ良いタイミングでやってくるんだよ。
「ご主人様、おはようございます。お目覚めになられましたか?」
「め、メイディさん……。その呼ばれ方は抵抗あるんだけど」
「あら、私としたことが少々早とちりでしたね。まだ奥様との解約手続きをしていませんので、坊ちゃまとお呼びするべきでしたね。失礼致しました」
正直坊ちゃま呼びもアレなんだけど……。もう慣れた呼ばれ方だしそこの訂正はしないが。
メイディさんの登場は俺の頭を強制的にシャキッとさせてしまう。理由は明らか、昨日の件である。
寄り道という体で人気のない場所に誘導させられ、そこでとんでもない話をいくつか聞かされたからだ。
正直今も信じられないというか、夢だったのでは? と現在進行形で思っているが、今のご主人様呼びから夢オチは期待出来ないんだよなぁ。
「うう~ン……?
「あ、起きた」
俺たちの会話に反応してか、ここでメルがお目覚めになる。
寝癖をつけて顔もだらしない無防備な表情だが、これもいつも通りの光景といえばそう。
しかし、そんなみっともない姿のメルにメイディさんは容赦しない。
「メラニー様もお目覚めになられましたね。閃理様はもうすでに奥様のお手伝いをされております。起きたら畑へ向かわせるよう言われておりますので、すぐに行動をしていただきます」
「えっ、エッ!? What
何をしたかと言うと、突然お姫様抱っこでメルを軽々と持ち上げたのだ。
これには抱っこされた当人も母国語で驚いてしまうのもわけないな。俺も驚いた。
「多少手荒に扱っても良いと許可は出ていますのでお許しください。まずは歯磨きに洗顔、それが終わりましたら軽いストレッチをし、朝食となります。その間にお着替えはご用意致しますのでご安心ください」
「
じたばたと釣れたての魚かってくらい暴れるメルだが、涼しい顔のままメイディさんはそのまま部屋を出ていってしまった。
やはり始まりの聖癖剣士。抵抗されても何ともないのは流石は人間を卒業してるだけのことはある。
朝から騒がしい一幕を見てしまったな……。大人しく言うこと聞いてくれるか心配ではあるが。
とりあえず俺も部屋から出よう。メルと同じ目に遭うわけにもいかないしな。
寝室として使っていた部屋を出て、虚しく抵抗を続ける仲間の姿を横目に俺も着々と朝の準備を進める。
そして今になって気付いたが、洗面台には新しい歯ブラシやタオルが用意されていたり、昨日風呂に入った時に出した服が完全に整えられた状態で用意されていたりしてた。
やっぱメイディさんってスゲェ……。いつの間に洗濯とかを終えてるんだ。これも人間辞めた影響か?
「…………」
「メル、メイディさんにはあんまり抵抗しない方がいいぞ。どうやっても勝てないから」
「うン……。
俺が一足早く用意を済ませてから数分後にメルがげんなりした様子でやってくる。
英文はよく分からんがこりゃ相当絞られたな。朝から絶不調になってるのがよく分かる。
対するメイディさんは何事も無かったかのように朝食の準備に取りかかっていた。パワフルというか何というか……尊敬するわ、ほんと。
「お待たせ致しました。しっかり食べて、本日のお仕事に取り組んでくださいね」
「おお……、これまたすごい。昔から思ってたんですけど、こういうのっていつ作ってるんですか」
「ふふふ、まだ企業秘密です」
お出しされた料理は和風の朝ご飯。焼き鮭に漬け物、お揚げの味噌汁に白米。ご機嫌な内容だ。
メルにも同じ物が配られてるかと思いきや、こっちは何とフルーツたっぷりのオートミールに固めの目玉焼き、カリカリのベーコンというザ・アメリカって感じの朝食だった。
まさか個人の食の好みに合わせて別々に作ったのか……!? 手間がかかってるどころか手際が良いってレベルじゃねぇぞ!
「美味シー! こんなの久々に食べタ!」
「ゆっくりとお召し上がりになってくださいね。お口についてますよ」
この朝食には絶不調だったメルも一気にテンションが跳ね上がる。
というかメルって野菜は苦手なくせにオートミールは好きなのか。知らなかった……。
「お食事の途中ですが本日の予定をご説明させていただきます。メラニー様は先ほど申しました通り昨日同様閃理様と共に奥様の畑仕事をしていただきます。兼人坊ちゃまは私と家の炊事洗濯をし終えた後、昨晩のお話の続きをします」
「話の続キ? そーいえば昨日の夜、何してたノ?」
「メルには関係ない話だよ……多分」
敏腕マネージャーさながら本日のスケジュールを口頭で伝えられる。俺は家事ね、了解。
でも昨日の話のことをメルの前で堂々と言うせいで訝しげに見られてしまっていた。
メイディさんがここを離れて俺の下につく……それってつまり光の聖癖剣協会に付いてくれるってことなのかな?
だって移動拠点に住んでる以上メイディさんもそこに住み着くわけになる……のか? どうなるんだ、そこは?
疑問もそこそこに朝食を終えると、説明通りメルは閃理らの所へ行った。俺は勿論メイディさんと一緒である。
午前中は掃除をメインに作業を行う。皿洗いに風呂掃除、各部屋の整理整頓──なんだけど、正直なところ俺の存在は不必要かもしれん……。
文字通り次元が違う仕事捌きに何も出来ていない。
メイディさんの手際が良すぎて俺が手伝えることは殆ど無かったんだな、これが。
「坊ちゃまもずいぶんと家事がお上手になられましたね。カエ様が見たら嫉妬していたでしょう」
「カエ様って……もしかしてそれ、俺のばあちゃんのこと?」
そして追いやられるように手をつけられてない玄関周りの清掃をやっていたら、様子を見に来たであろうメイディさんが急にばあちゃんの話を振ってきた。
作業の手を止めるわけにもいかないから振り返らず返答しておく。
にしても嫉妬ねぇ……。別に人をそこまで沸かせるレベルとは思ってないけどなぁ。
ていうかばあちゃんってそんな人だったの? 初耳なんだが?
「はい。坊ちゃまのおばあさま──焔衣カエ様はとても負けず嫌いな方でしたから、今もご存命であればきっとむきになって出来ないことをしたでしょう」
「それ大人としてどうなんだ……?」
俺のばあちゃんってそういう人だったのか……。マジで知らなかった。
何せ俺が最後に会ったのは生まれて間もない頃らしい。顔はおろか声なんか覚えてるわけないよな。
生前がどんな人間だったかはじいちゃんや父さん、親戚らの話でしか知らない。そもそもあんまり話題にもしなかったから、知らないことだらけだ。
予想しないタイミングでばあちゃんの人物像の一部が判明したところで俺は仕事にスパートをかける。
中を拭いた靴棚に靴を戻し、窓の縁や床も手早く雑巾がけでしっかりを拭く。これで良しとするぜ。
「これでよし、と。玄関の掃除は終わった──って……!?」
掃除の完了を報告しようと振り向いたその瞬間──俺の両頬を挟むように手が伸びてきたのだ。
思わず固まる俺。何故かは分からないが、いきなりメイディさんが触れてきたんだ。
「こうして坊ちゃまのお顔を見ると本当に若い頃のカエ様によく似てらっしゃいます。赤毛の髪、目元や鼻の高さまで。まるで生き写し……あの方が男性であれば、きっと坊ちゃまと同じ顔になっていたでしょう」
メイディさんは過去を懐かしむように俺の顔をまじまじと見つめくる。ちょ、顔が近い……!
てかそんなに似ているのか? ばあちゃんの若い頃と今の俺が。性別だって違うのに。
だが疑問に思うのもそこそこに、今の状況をこれ以上続けるのは困る。
言わずもがなメイディさんは美人だ。そんな人の顔が間近にあるのは思春期が過ぎている俺でも流石に恥ずかしく感じるわけだしな。
「……! も、申し訳ありません。私としたことが次のご主人様になる坊ちゃまのお顔を掴むなど……。大変申し訳ありませんでした」
「メイディさんが焦ってるの初めて見た……。俺は別に気にしてないよ。恥ずかしかったけど、少し嬉しかった……かも」
そして自分が何をしているのかに気付いてか、そそくさと手を離して謝ってきた。
まさかのタイミングで初めて焦りの表情を見せてくれたメイディさん。こんなこともあるんだな。
今の一幕で俺は少し気付いたことがある。それは昔と今じゃメイディさんの美貌の感じ方が変わっているということ。
昔はさっきくらい顔が近い状況になってもドキドキなんかしなかったはずなのに、今は結構心臓の鼓動が早まっている。
よせよせ、家族だと思っている上に尊敬してる人物の一人なんだぞ。そういう意識は持っちゃダメだって絶対。
なんだか小恥ずかしい気分になってきて居心地が悪いな。もしかしたら今、顔が赤いかも?
それは相手方も同じなようで、俺から目を逸らすように向こうの方を向いている。
「で、では次の仕事に取りかかりましょう。もうすぐ昼食のお時間になりますので、皆様がいただくお食事のご用意をします」
「うん。料理なら俺も得意な方だから大丈夫。今度はしっかりと手伝えるよ」
「ご謙遜なさらずとも最初からお役に立てていますよ? ふふっ、謙虚さは祖父や父親譲りですね」
今さり気なく聞こえようによってはばあちゃんの悪口になりそうなこと言わなかったか? そんなに気難しい人間だったのかよ。
まぁいいや。次の仕事は昼食作りね。文字通り汗水垂らして頑張ってる産方さんたちのために料理をお出しする……俺の得意分野だ。
口では否定してくれるけど、俺が納得しないと意味がない。今度こそメイディさんの役に立ってみせる。
成長したのは身体だけじゃないってことを証明したいからな! 和洋折衷何でもこい!
んでもって調理開始。何が出来上がるかは畑仕事組が来るまで秘密である。
そして時刻は午後となり、畑仕事から戻ってくる者たちが。
「あぁ~、終わっタァァ~……」
「うむ、普段のトレーニングよりも負荷を感じるな。やはり畑仕事は重労働だ」
「お二人とも、ご苦労様でした」
ガラッと玄関を開ける音が聞こえたと思えば、入って早々メルの疲れ切った叫びが台所まで届いてきた。
ナイスタイミング。俺たちの方もちょうど昼食の準備を整い終えたところだ。
続々と居間にやってくる畑仕事組。慣れている産方さんや閃理はともかく、メルだけは明らかに疲労度が違う。
あの様子じゃ相当だな。普段振り回してるのは剣だから、農機具とかとは使い勝手が違うから慣れないんだろう。
「いつもの運動より
「その前にまず手荒いうがいです。不衛生なままでお食事はいけませんよ」
本日の昼食は塩分補給の塩むすびに食べやすい漬け物を少々、あとは昨日の夕食の残りを軽く手直ししたりリメイクした物を数品って感じかな。
それらが並べられているテーブルにふらふらと向かい早速フライングしようとするメルだったが、それは当然メイディさんに阻止されて洗面所に連行されていった。
変わらん奴だなぁ……。メルらしいといえばそうなのだが。
「では閃理さん。私たちも食事の前に手を洗いに行きましょう」
「はい。食後は休憩時間を取り、二時から再開でよろしいですね。我々はまだまだ動けますよ」
「今の時期は植える物も多いから人手があるのは本当に助かります。お願いしますね」
こっちもこっちで仕事の話をしながら洗面所に向かって行った。閃理、ちょっと馴染んできてない?
まぁいいか。本人もまんざらでもなさそうだし。
俺は俺に出来ることをするべきだな。皿とか箸を用意したりしておこう。
そこから数分後に全員が戻ってきていただきますをする。飢えた獣みたく料理にかぶりつこうとするメルを宥めながらだったが賑やかな昼食となった。
食後は閃理が言った通り休憩タイム。午後の仕事に備えて英気を養う時間なのだが、俺は見逃さない。
メイディさんが産方さんを呼んで、別室に行ったのを。何をする気だ……なんてことは言わない。
不躾ながら俺は二人が入っていった部屋の近くで聞き耳を立てる。
何をするか分かってはいても気になるものは気になってしまうからな。
「では奥様。こちらの契約書にサインを」
「何だか寂しいですね、ずっとここで働いてもらったからか、どうにも渋りたい気持ちがあります」
「奥様に仕えてからの五年間、私もメイドとして充実した日々を過ごせました。ですので個人の都合で奥様をお一人にしてしまうのは私としても非情に心苦しい選択なのです」
やっぱり……。メイディさんは産方さんとの契約を解除するための書類を書かせているんだ。
本気で次の主人を俺にする気なのと同時に──産方さんから離れるつもりなのだと。
何か……すごい悪いことをしてしまった気分だ。
俺がここに来てしまったから、産方さんから大事なメイドを奪ってしまったんだって。
本来ならば俺は何も悪くないはずなんだけど、この罪悪感ときたらありゃしない。
孕川さんの感じた違和感に食いついてなければこんなことにはならなかっただろう。他人事なのに、俺も産方さんの悲しみが伝播してきた。
「……これで解約手続きは完了です。では奥様、残り三日間というごく短い間になりますが、最後のメイドとしての役目を果たさせていただきます」
「ええ、こちらこそ。でも最後の日くらい一緒にご飯を食べましょう」
「はい。喜んで」
勝手に悲しんでいたら解約手続きの書類にサインをしてしまったようだ。産方さんの声はどこか涙に潤んでいるように聞こえる。
俺に止める権利なんてないからどうしようも無いとはいえ、もう少しくらい渋っても良かっただろうに。
次の契約者になるであろう俺はそれを許す。もっともそれも意味のない行為だろうが。
「あっ」
「坊ちゃま……。盗み聞きはいけませんよ」
再びもやっとした気分になっていたら、不意にガラッと障子が開いてしまい、中にいた二人と出くわしてしまう。
しまったなぁ……。勝手に曇ってたら二人が戻ってくる気配に気付けなかった。
流石に怒られるかと思ったけど、俺はそれに怯えるよりも先に疑問を口にしていた。
「メイディさん。本当に産方さんと契約を解除するの?」
「……厳しいお言葉になってしまいますが、これは坊ちゃまには関係のないことです。元より私の下に坊ちゃまが尋ねて来るまでの内容で交わした契約ですので、何も問題はありませんよ」
俺の問いに対し、珍しくメイディさんはきつく反論をしてくる。
やはり産方さんが教えてくれた通り、俺が来たらその時点で全ての契約を完了したことになる内容だったらしい。
今ならその理由も教えてもらったから分かるが、だからってそんな身勝手に今の雇い主を一人にしてもいいものなのかを疑問に思ってしまう。
そもそも俺はまだメイディさんを雇うとは言っていない。俺──いや、第一班は目的があって会いに来たんだからな。
「確かに俺たちもメイディさんを連れてくるよう言われて来たけど、それがずっと疑問だった。産方さんはそれでいいの? さっきも言ってたでしょう? 渋りたい気持ちがあるって。俺には……そんな人からメイディさんを奪うべきだとは思えない」
「坊ちゃま……」
「焔衣さん……」
俯きながらも、俺は本心を二人に告げていた。これには困ったような顔を浮かべられても何も言えない。
俺だって他人を思いやる優しさの一つや二つある。契約を解除すれば孤独になる産方さんが不憫で仕方がないんだ。
俺たち光の聖癖剣協会はメイディさんに組織へ味方をしてくれるよう説得しろと言われている。
対するメイディさんは俺が剣士として成長し、自分の下を訪ねてきたら生涯に渡り仕えるよう先代の炎熱の聖癖剣士から言われているわけ。
どちらの選択を選んでも結局産方さんは独り。旦那に先立たれ、子や孫は家に来ない。他人事とはいえ、そんなの……寂しすぎるだろ。
打ち明けた本心からの言葉には、流石に沈黙も流れざるを得ない。でも、それはすぐに破られる。
「……お優しくなられましたね、坊ちゃま。成長を信じて焔衣家から離れたのはやはり正解でした」
「ええ、ご両親の教育がしっかりしているのがよく分かります。あなたがメイディさんの次の雇い主なら、私もこの選択に後悔はありませんよ」
「……え? ちょ、どういうこと?」
メイディさんと産方さんは顔を合わせた後、いきなり笑い合ったのだ。これには俺も困惑する。
というか何で次の雇い主が俺だって産方さんは知ってるんだ? さっきの話し合いで教えられたのか?
「他人である私の心配をしてくれるその気持ちだけで私は十分です。昨日も言いましたが、元々一年延長してくれていますので、これ以上頼りきりになるのもいけませんから」
「それに私たちはすでに折り合いをつけております。確かに奥様は今後お一人で過ごすことになりますが、だからと言って金輪際関わらないつもりもありません。これからは家政婦としてではなく、一人の友人として時折ご様子を伺いに参りますのでご心配なく」
「え、そうなの……?」
俺の心配は杞憂に終わった。契約終了後は友人として様子を見に行くとか、そういうのアリなん!?
離れることに代わりはないにせよ、定期的に様子を見に行くのであれば心配する必要は無いのでは……?
どうやって行き来するのかはさておいて、それじゃあ俺の心配って意味無かったじゃん!
それに気付いた途端、急に猛烈な恥ずかしさが俺を襲う。
心配して損した──なんて言わないけど、格好付けて契約続行の話をしたのが馬鹿らしく感じてきた。
「昨日の話でもやけにあっさり認めるんだなぁとは思ってたけど、そういう話が通ってるなんて……」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。まさか坊ちゃまがここまでお気になされているとは思わなかったもので」
ほんとだよ……。端から見れば解決済みの問題に首を突っ込んでるんだから。なんと愚かしいことをしていたんだろう。
でもまぁ良かった。産方さんは独りぼっちにならないし、メイディさんは心置きなく次の場所へ行ける。
安心したらどっと疲れてきた。自分でも意外だったがかなり心配してたんだなぁ。
「とはいえまだ三日はメイドとして産方家にいますので、そちらの件については後々話し合いましょう。もっとも私の考えは決まっていますが」
そっちの問題が解決しているのなら、今度はこっちの問題解決に取り組むのは道理か。
表の顔は雇われ放浪
近々話し合いの場を設けるようだが、答えはもうすでに出ているらしい。
果たしてそれは俺たちにとって好ましいものなのかそうでないのか……まだ分からないよな。
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