第3章 番外編③ エーベルの初めてお仕事(クエスト)をする

「はぁ。ベル様は本当に素敵なのじゃ! まさに生涯推せますのじゃあああ!」


「もうわかった。

 うるさいから。」


 フロッケは賞金首のエルフを倒してからずっとこの調子であった。時折、どさくさに紛れて抱きつこうとするが、その都度華麗にスルーされている。エーベルはさすがにうんざりしているようであった。


 そしてあとの3人もキョトンとしていた。エーベルの破壊的な強さもそうだが、実はフロッケのこの取り乱しようにも驚いているようであった。



 そして夜になり、続々と冒険者たちが集合していた。そしてみんな何が起きたのか分からない様子であった。


 残りの3人は都度、到着した冒険者たちに説明して回っていた。フロッケの取り乱しも含めて。



 そして、例のフロッケ推しのモブ冒険者3人も到着したのであった。


「ちょっと、これってどうなってるの? 何から突っ込んでよいのか………。」


「いや、実はね………。」


 先に来た3人のうちのひとりが、このモブ3人と仲が良く、とりわけ詳しく説明してくれたようである。フロッケの取り乱しも含めて。



「フロッケの姐さん!」


 なかなかに入り込みにくい雰囲気であったが、モブ冒険者3人のうちのひとりがフロッケに声を掛ける。


「はぁ。ベル様、ありがとうございますのじゃ! 儂も本当に鼻が高いのじゃ! そして、愛しています!!!」


 相変わらず、エーベルに夢中で周りが完全に見えていないようである。


「ねえ、ほかの人も来たよ。

 いい加減、そっちの相手しなよ。

 本当にうっとしいよ。」


「なっ、なんじゃと? いつの間にみんな集まっておるんじゃ?」


 エーベルに言われてようやく我に返るフロッケである。それに対してモブ冒険者が突っ込みを入れる。


「いやいや、姐さんがずっとベルさんを見ていただけですぜ! もう8割方集まってます。」


「いやいや、本当にすまんことじゃ。もう、本当にベル様が凄すぎて尊すぎて、さらにこんなにも可愛くて………。


 で、なんの話じゃったかの?」


「姐さん。盗賊団の拠点を壊滅するって話ですぜ。一応、概要はほかのメンバーから聞いてはいるんですが、実際何がどうなっているんです?」


「おっと、すまぬ。そうじゃったわ。皆の者! 聞いてくれ!


 御覧の通り、数年我々を悩ましていた盗賊団じゃったが、その拠点を陥落させた! しかも、ここにおられるとても可愛らしいレッドドラゴンのベル様ひとりでじゃ!」


 周りはザワザワとし始める。それもそうである。この2年、数々の冒険者がこの拠点へ討伐を試みたのである。そしてことごとくまともなダメージを与えることもなく返り討ちにあったのだ。


 中には、命を落としたものもいる。いくら、フィジカル系最強の種族レッドドラゴンといえど、さらにまだ子供なこともありにわかには信じられないのであろう。


「本当にひとりでですか? 少なくとも姐さんも手伝ったりとかしてないですか?」


 モブ冒険者が質問をした。


「いや、それはない。本当にひとりでこの拠点を落としたのじゃ! これは魔王様第一秘書(元だけど)の儂が本当じゃと証明しようではないか!


 それに本来は、ベル様は儂なんかよりも圧倒的に強いからな。以前戦闘をしたが手も足も出んかったし魔法も効かんかった。この上級魔族の儂の魔法がぞ? まさに瞬殺されたのじゃ!」


「その話、マジのマジですかい? 姐さんこの中じゃ一番強いですよね?」


「おう、マジなのじゃ! その儂よりも圧倒的に強い!」



『うおおおおおおおぉぉぉ!!!』


 冒険者たちは一斉に気勢をあげたのだ。いちやく中心人物になったエーベルであった。



『パチン!』


 そんな気勢の中で盛大に叩かれる音が響き渡る。そう、エーベルがフロッケの頭を叩いたのであった。


「い、痛いのじゃ。ベル様! 何をするんですか!? でも、ちょっと嬉しいかも。」


「私、目立ちたくないって言ったよね?

 めっちゃ注目された。

 それと、キモイ!」


 エーベルとフロッケのやり取りに対して例のモブ冒険者が言った。


「あ、あのフロッケの姐さんを頭ごなしに叩くなんて………、なんて凄い人だ! 確かにこれは本物だ!」


『うおおおおおおおぉぉぉ。わぁぁぁぁああああああああ!』


「ちょっ! お前たち! そんなところで納得するとは何事じゃ! あ、ちなみに同担は拒否じゃからな!


 で、もうひとつ聞いてくれ! 報酬の件じゃ。クエスト報酬金貨10枚と懸賞金の金貨2枚は全部ベル様に渡そうと思うが良いな?」


『異議な-----し!!!』


「え? 流石にそれは悪いよ。

 みんながいてくれたからクエスト受けれた。

 それに、このあとの処理も私ひとりじゃできないし。」


「いえいえ、そこは大丈夫じゃ。盗賊団の拠点にはしこたま物品があると思う。そこから一部をみんなに回してもらうようにギルドに調整するつもりじゃ。


 それにもしかしたら、追加で報酬がでるやもしれん。それはみんなで分けることにするのでな。」


 エーベルは少し考えた後、みんなのほうを向いた。


「じゃあ、貰っても良いかな?」


『か、可愛い!』


 みんな気勢を挙げながらも、エーベルの言葉にほっこり思うのであった。



「じゃあ、決まりじゃな!


 先に来た5人はこれからギルドへ報告に行くことにする。この懸賞金の奴だけを連れてな。


 で、明日にはここに後始末のためにギルドの役人やほかの冒険者にも来てもらうようにするので、今晩はこの拠点と捕まえた者たちの見張りを頼みたいのじゃが大丈夫かのう?」


「お安い御用です!」


 モブ冒険者3人が元気よく答えた。



 そして、フロッケ、エーベルたちは冒険者ギルドへ戻り、フロッケはことの顛末を報告した。


 もちろん、明日には役人と手伝いの冒険者を向かわせること。クエスト報酬と懸賞金はエーベルに渡すこと、押収した物品の一部を他の冒険者への報酬とすることも調整していた。


 受付のお姉さんはにわかに信じられないような顔をしていたが、賞金首がここにいる以上、何も言えなかったようである。


 そして、フロッケとエーベルはクエストの報酬と報奨金の金貨12枚を受け取って宿に戻ったのであった。



 その後、エーベルのことはギルド内で話題の持ちきりとなったことは言うまでもないだろう。



 ***********************

 いよいよ第三章を書き上げました!

 公彦の実際の仕事の話です!

 エーベルの仕事の話もあるよ!


 たくさんのPV、イイね、ブクマ、そして何より☆をお願いします!

 みなさんの力でこの作品を押し上げてやってもらえると嬉しいです!

 どうぞ、よろしくお願いします!!!

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異世界に転生して、貰ったスキルはスゴイけど、すぐに使えないのでスローライフでもしようかな? Tさん @T-SAN

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