明日も晴れるといいね

 私の名前は和田 いつき。男の子みたいな名前が嫌で、外見だけでも可愛くしようと小学4年の頃に化粧を覚えた。


 小学6年の時、中学2年の先輩と初めて付き合った。付き合うと言っても、公園でブランコに乗って、その日の学校での出来事を話し、あとはLINEで「おはよう」と「おやすみ」を送り合うだけの関係。小学生の私には、友達と恋人の違いなんてよく分からなかった。


 それより問題だったのは、彼氏よりも、彼氏の友達であるだんからLINEが来た時の方が、嬉しくなってしまうことだった。暖には「おはよう」に「今日もサッカー頑張ってね」を、「おやすみ」に「明日も晴れるといいね」を付け加えた。


 私が通っていた塾の理科の先生は、中学生が帰る時間まで居残りをさせる厳しい先生で、保護者からは反感を買っていた。だけど私は理科の小テストでわざと低い点数を取って、わざと居残りをした。暖の「一緒に帰るか?」を聞きたかったからだ。


 私は彼氏のいる公立中ではなく、暖のいる私立中に進学した。中学、高校、大学とそれなりに恋をした。恋をしていても、やっぱり暖から来るLINEがずっと、一番嬉しかった。


 暖にはずっと同じ彼女がいて、その人は今、婚約者になった。


 私はウォレットチェーンをつけた男とのディナーで6930円を払った翌日、静かな喫茶店でなぜか友人に電話して、なぜか泣いた。冷めたコーヒーを一気に流し込んで、暖の家に向かって歩き出した。

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