@su03su07

第1話

夫は「水」だ。


衝動が勝つ時があって激流の如く物事を勝手に進めてしまう。

周りは見えてない様で常に自分自身が1番な自己愛者なのだと思っていた。





2021年8月17日

朝から様子がおかしかった。

夫は青ざめた顔で

無理に作った笑顔で体がカタカタと震えていた。

「大丈夫?」と聞いても「大丈夫だよ」と返ってきた言葉を鵜呑みにしてしまった。


出勤する夫から10分後位に電話が来た。

「ごめん、事故起こしちゃった」

私は確信していた、これは絶対に自殺しようとしたのだと。


「なにしてるの?」


腹が立って腹が立って仕方なかった。

怪我してない?どういう風に事故になってしまったの?他に犠牲者は?

頭の中では渦巻いているのに言葉にならなかった。


「ごめん、ぼーっとしてたら中央分離帯にぶつけちゃって。単身事故だよ」

そう言うと夫は電話を切ってしまった。


待って、そうじゃない、怪我は?無事なの?

色々と聞きたかった事が聞けなかった私は落胆とパニックになった。


事故処理を自分で出来たらしく

「今から代車で帰るよ」と言う連絡に冷静になった私は止めた。


「車を運転できる精神状態なの?そんな状態じゃないよね?迎えに行くから待ってて」

気付くとそう言葉が溢れていた。


迎えに行った時、夫は真っ青な顔でまるで「死にたかった」とそんな顔をしていた。

どこも怪我はしていなさそうだった。

泣きそうになった、夫はこんなにも何に苦しんでいるんだろうと。


助手席に座った夫を抱きしめた。

「怪我してない?大丈夫じゃないじゃん」

そう声を掛けた。

夫は初めて泣いた。

苦しかったと会社に行きたくないと。

会社に行くなら死にたいんだと。


ほっといたら死んでしまう。

本人は喋れる状態じゃない、病院に連れていかなきゃ。

とっさにそう思った私はコンビニに車を止めて、手当たり次第に心療内科に電話した。

10件以上に数ヶ月待ちだと言われ、こんなにも苦しんでる人っているんだと初めて実感した。

でも、諦めきれず県内でも有名な精神科に電話をしてみたら明日なら予約が取れると言われて安堵した。


帰宅してまず最初に夫の上司に連絡を入れた。

夫は嘘をついて、体調不良で本日休みを頂きますと。

何も解決しないと思い、私から本当の事を話した。

「会社の直属の上司からパワハラを受けているらしく夫は自殺未遂をしました。明日、病院の方に連れて行くので暫く休みを頂けますか?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@su03su07

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る