あとがきは本編に勝ると信じて――
牛盛空蔵
本文
俺の家には、先祖代々大事にされているものがあった。
布団。そう、寝具であるところの布団である。
ウチの布団の歴史は……そんなに深くない。なんでも明治時代ごろから俺の家にあり、そしてそこにあるにもかかわらず、布団として実用に供されたことがない。誰もこの布団では寝ていないのだ。
なぜ?
そう思った俺は、色々聞いて回った。俺の家は本家なので、分家のじいさま、ばあさま方や、本家傍系の中でも郷土史に詳しい物知り男、知って「いそうな」人間には事欠かなかった。
だが誰も知らない。その布団を使ってはいけない、らしい、ことがわずかに伝わるのみで、それ以上の踏み込んだ情報は誰も持っていなかった。
いつしか俺も、謎の解明をあきらめていた。
それが分かったのは、近くの駐留基地から、誤射か何かでミサイルが飛んできたときだった。
すさまじい速さで飛来するミサイル。
俺がその物体を肉眼でとらえたときと、奇跡の瞬間は、ほぼ同時だった。
布団が瞬間移動してきて、ミサイルが俺の代わりに布団へ着弾。
布団は木っ端みじんに吹っ飛んだ。
そう、この布団は「布団が吹っ飛んだ」のダジャレを体現するために生まれてきたんだ、と俺は悟った。
布団の残骸に、俺は祈りをささげた。
★★★★
あとがき
フワァーwwwやりました遂に完結www
クッソ疲れました笑
思えばこの掌編、構想五年、設定やプロットに三年を費やし、本文の執筆に一年をかけた力作でした!
色々ありましたよ。布団の取材、最新の布団開発事情の調査、民俗学の研究、そういったものが十年の歳月をかけてようやく実を結んだんです。
これほど作者として喜ばしいことがありましょうか!
いやもうメッチャクタクタですよ。
取材のために某掲示板に「どもっす……俺は布団大好きな変態野郎です……同志なんかいるわけねえか」とか書き込みしちゃって!
もうイヤンイヤン! これは変質者ムーブに違いないwwwコポォww
とにかくこれは人生をかけた大傑作なんです。だからこそ、少しでも多くの人に読まれれば幸いであると考えております。
布団「おい」
作者「なんだ布団」
布団「『俺』とこの布団以外に登場人物がいないぞ。手抜きすぎじゃね?」
作者「手抜きとは何だね。分家の人たちとかミサイルとかいるだろ」
布団「アチャー」
作者「あと全部ひっくるめて、この作品には十年を費やしているんだ。手抜きはなかろう。冗談はほどほどにしたまえ。そうでないと」
布団「そうでないと?」
作者「最後のオチがどうにもならないじゃないかね」
布団「ああ……オチね……」
グダグダなところで作者から一言!
構成とか表現の工夫とかには初心者なりの難があったかもしれませんが、布団の伝説は今もあなたの心に住み着いています。
布団が吹っ飛んだ、これを忘れると……。
布団「私がやってくるぞ!」
はい、あとがきにもオチがついたところでまたどこかで!
アデュー!
あとがきは本編に勝ると信じて―― 牛盛空蔵 @ngenzou
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