第29話 酸素を吸っているときに、タバコを吸ってはいけません!
いろいろなところで宣伝されているが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因は、日本では喫煙が第一位である。もちろん、タバコを吸っている人みんながCOPDになるわけではなく、遺伝的な素因もあるのだが、逆に、COPDの方は、ほとんどの人が喫煙者、あるいは以前に喫煙をしていた人である。
COPD、IPF(特発性肺線維症)、肺がん、あるいは慢性心不全の方で、常に酸素吸入が必要な方には、在宅酸素療法を行なうのが一般的である。自宅には酸素濃縮器を置いて、一定量の酸素を継続投与し、外出時には酸素ボンベを引っ張って酸素を吸いながら移動するのである。COPDやIPFの患者さんは増加傾向で、しばしば、酸素を吸いながら外出されているところを見かけるようになっている。
在宅酸素療法を受けている方は、いや、そのような呼吸器疾患をお持ちの方はすべて、禁煙が必要なのだが、なかなかタバコの中毒性は強く、在宅酸素療法を受けながら、タバコを吸われる方もおられるのである。
ご存知の通り、酸素は助燃性があるので火気厳禁なのであるが、それを知っているのか知らないのか、在宅酸素療法を受けておられるのに、外来受診された際には、タバコを持つ指が黄色く変色している方も少なからずおられるのである。気づくたびに、「酸素を吸っているのにタバコを吸うと、大変なことになりますよ」と注意を喚起している。
当然、そのような危険な行為を頻繁にされているので、時には事故も起こるのである。私が九田記念病院にいる間で記憶しているだけで、数名が在宅酸素療法+タバコによる事故、すなわち「火災」を起こされている。火事を起こされた方のほとんどが火災で亡くなられたが、1名だけ、家は丸焼けになったものの、ご本人は怪我をすることなく無事であった方がおられた。家が全焼したので、住むところがなくなったため、施設調整目的で入院された。
ご本人にお話を聞くと、タバコの火が酸素チューブに引火したそうで、チューブがまるで導火線の様に炎がシューッと走っていき、酸素濃縮器に燃え移って火事になった、とのことであった。状況を伺うと、思わず笑ってしまいそうになるが、それで命を落としてしまうことになるので、笑えない。
よく似たようなことだが、人工呼吸器を長期間つける方は、気管切開をして、口や鼻から挿入した挿管チューブから気管切開孔にチューブを切り替えるのだが、気管切開術の際に、うかつに電気メスを使って、挿管チューブが気管内で燃えてしまう事故が全国で時々起こり、厚生労働省から注意喚起がされていた。
そんなわけで、酸素の近くで可燃物を燃やしたり、火花を出してはいけない。特に、在宅酸素療法を行なっている方は、決してタバコを吸わないようにお願いしたい。病気だけでなく、火災でも命を落とす危険がある!
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