第2話
4月半ばも過ぎ、俺が何も考えていなくても間違えずに2年生の教室に入ることができるようになった頃。
通勤快速アクアライン7号、天越行き。
1番ドアの進行方向側、3人掛けシートの1番ドア側。
――可愛い。
俺がいつも立っている場所の真ん前に座っていた彼女。古き良きグレーのセーラー服の彼女から目が離せなかった。誰もが振り返るような美人ではないけれど、と言ったら失礼か。でも整った顔立ち。大和撫子が似合いそうな女の子。彼女のおろした長い髪が電車に合わせて揺れる。淡い水色のブックカバーで包まれた本を読みながらコロコロと変わる表情から目が離せなかった。
話しかけてみたい。でも何て話しかけるんだ?
「可愛いですね」?
初対面でこんなこと言ったら変なヤツ認定されて終わりだ。というか犯罪だ。流石にやめておこう。
「おはようございます」?
仮に挨拶を返してくれたとしてもそこから先の続け方がわからない。
その日は、結局彼女を見つめるだけで終わってしまった。
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