通勤快速アクアライン7号

楓月

第1話

『7時13分発、通勤快速アクアライン7号、天越行き、発車します――』


 毎朝聞くアナウンス。

 俺は毎朝、3号車の1番前の扉の前でそのアナウンスを聞く。



 朝の7時13分発、俺は鷹米駅から港町線通勤快速アクアラインに乗って登校する。港町という名の通り海沿いを走るこの列車は青い海が見られ、朝から清々しい気分にしてくれる。

 この沿線には俺の通う龍聖学園と、県内トップ成績を誇る古き良き伝統校の県立星蘭高校がある。ただでさえスーツ姿のサラリーマンの中に制服姿の高校生は目立つのに、港町線の沿線には2校しかないためなおさらだ。龍聖学園はブレザー、星嵐高校はグレーのセーラー服と学ランだからどちらの高校なのかはすぐ見分けがつく。

 だから朝のSHRで「マナーの悪い学生がいたと通報されました」とよく言われる。本当に勘弁してほしい。

 俺は毎朝3号車の1番前の扉(1番ドアというらしい)の前のつり革に捕まりながらヘッドフォンで好きなバンドを聴き、スマホで小説を読む。最近は趣味で小説を書いた人たちの集まるサイトから好きそうなものを選んで読んでいる。

 自分で書こうとは思ったことはない。作文は苦手だ。でも本は好きだ。俺を新しい世界へと連れて行ってくれる。


——まさに、本は新しい世界へと俺を連れて行こうとしている。

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