第26話
「ありますよ」
みつき君はさっと立ち上がって、冷蔵庫の中をのぞいた。
「あまり冷えてないようだけど。ハイボールは冷えてる」
「いいの。ビールちょうだい」
1時間ほどだったろうか。
10以上年上のある意味、おばさんがおもいきり聞き上手になって、会話を紡いでいた。
そこはママ活の斡旋所だった。要は男娼だ。金のない男が身売りする話は噂には聞いたことがあるが、まさか真澄がその常習者だとは、もちろん、知らなかった。
みずき君は、一人なら普通のバイトプラス奨学金で、学費と生活費を賄えるが、なんと母親と弟のために仕送りしなければならないそうだ。
「僕も無理いって都会にでてきたし。弟は看護学校に行きたいっていうから」
「21歳かぁ…」
その頃、私何してたかな。そうか専門学校か。でも曲がりなりにも仕送りはあったから。バイトはしてたけど、そこまで苦労した覚えはない。そこからだらだら、男と同棲して…
ある意味、少年?の方が自立してしっかりしているかもなぁ。
「スズキさんは結婚しているんですか」
桃子は飲んでいたビールを思わず、ふきだしそうになり、
「してるわけないじゃん。まだそんなおばさんじゃないよ。もちろん君からみればおばさんだけど」
「結婚してても、僕は気にしないです」
まあ、君はお金、だから。ここへ来たのも間違いだし。小黒さんにばれたらエライことになる。
そうこうするうちに、スマホが鳴った。
「桃子、どう?延長?」
「いや、あの。そろそろ」
「じゃ、私も帰る。出るね」
彼が察したように、さっと立ち上がった。
「楽しかったです。お話だけでお金いただいて」
わかってる。愛想笑いとサービス言語…
「いえ、こちらこそ。なんか気をつかわせたみたいで」
「また指名して、あ、いやずうずうしいかも」
桃子は返事に困り、ちょい、笑顔を作った。
そこから虚脱にまみれた真澄を肩に、
「あんがと、カードで」
とPEACEを着けたマスターに、スマホのチェックをいれて、表に出た。
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