第25話

「ありますよ」


みつき君はさっと立ち上がって、冷蔵庫の中をのぞいた。


「あまり冷えてないようだけど。ハイボールは冷えてる」

「いいの。ビールちょうだい」


1時間ほどだったろうか。

10以上年上のある意味、おばさんがおもいきり聞き上手になって、会話を紡いでいた。

そこはママ活の斡旋所だった。要は男娼だ。金のない男が身売りする話は噂には聞いたことがあるが、まさか真澄がその常習者だとは、もちろん、知らなかった。

みずき君は、一人なら普通のバイトプラス奨学金で、学費と生活費を賄えるが、なんと母親と弟のために仕送りしなければならないそうだ。


「僕も無理いって都会にでてきたし。弟は看護学校に行きたいっていうから」

「21歳かぁ…」


その頃、私何してたかな。そうか専門学校か。でも曲がりなりにも仕送りはあったから。バイトはしてたけど、そこまで苦労した覚えはない。そこからだらだら、男と同棲して…

ある意味、少年?の方が自立してしっかりしているかもなぁ。


「スズキさんは結婚しているんですか」


桃子は飲んでいたビールを思わず、ふきだしそうになり、

「してるわけないじゃん。まだそんなおばさんじゃないよ。もちろん君からみればおばさんだけど」

「結婚してても、僕は気にしないです」


まあ、君はお金、だから。ここへ来たのも間違いだし。小黒さんにばれたらエライことになる。

そうこうするうちに、スマホが鳴った。


「桃子、どう?延長?」

「いや、あの。そろそろ」

「じゃ、私も帰る。出るね」


彼が察したように、さっと立ち上がった。


「楽しかったです。お話だけでお金いただいて」

わかってる。愛想笑いとサービス言語…


「いえ、こちらこそ。なんか気をつかわせたみたいで」

「また指名して、あ、いやずうずうしいかも」

桃子は返事に困り、ちょい、笑顔を作った。


そこから虚脱にまみれた真澄を肩に、

「あんがと、カードで」

とPEACEを着けたマスターに、スマホのチェックをいれて、表に出た。

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