第19話
「真澄さあ、彼女、どれくらい友達なの」
桃子が帰った後、トオルが真澄の肩を担ぎながらいった。レモン酎ハイからワインに速やかに直行した真澄は、赤く染まった顔でよろよろと寝室へ歩いた。
「あーしたい、したい」
「べろべろでやっちゃって、ベット汚しても困るしょ」
「と、お、る、君!」
真澄はトオルの首筋を無理やり引き寄せた。
「いやいや、ちょいちょいちょい、だから。友達かって」
「えー、なによ。大事な友達だよ。文句あんの」
真澄は改めてトオル君を正面に見据えた。
「文句はないけど。銀行にカネ積んでるってのが、気になって」
「銀行でいいじゃないの。安心でしょ。何が悪いのよ」
「だって、あの銀行、収益悪化してて、ただいま株価、絶賛暴落中だからなぁ」
「どういう意味よ。預けた財産は自分のものじゃない。銀行が食べるわけでもないでしょ」
「預けた資産そのものに手をつけるんじゃなくて。カモをみつけて、売り買いさせて手数料を稼ぐのが常套手段。ゼロ金利で利ザヤがとれないから、客に変な株や投資信託、売って儲けているところもあるからね。桃子さん、預けた資産のポートフォリオちゃんとみてんのかな、年間手数料の割合とか」
「そんなこと。私に聞いたって。今度、アンタが聞いてみてよ」
真澄はもはやそんなことどうでもいいというふうに、トオル君の首筋に唇を吸い寄せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます