第19話

「真澄さあ、彼女、どれくらい友達なの」


桃子が帰った後、トオルが真澄の肩を担ぎながらいった。レモン酎ハイからワインに速やかに直行した真澄は、赤く染まった顔でよろよろと寝室へ歩いた。


「あーしたい、したい」

「べろべろでやっちゃって、ベット汚しても困るしょ」

「と、お、る、君!」


真澄はトオルの首筋を無理やり引き寄せた。


「いやいや、ちょいちょいちょい、だから。友達かって」

「えー、なによ。大事な友達だよ。文句あんの」


真澄は改めてトオル君を正面に見据えた。


「文句はないけど。銀行にカネ積んでるってのが、気になって」

「銀行でいいじゃないの。安心でしょ。何が悪いのよ」

「だって、あの銀行、収益悪化してて、ただいま株価、絶賛暴落中だからなぁ」

「どういう意味よ。預けた財産は自分のものじゃない。銀行が食べるわけでもないでしょ」

「預けた資産そのものに手をつけるんじゃなくて。カモをみつけて、売り買いさせて手数料を稼ぐのが常套手段。ゼロ金利で利ザヤがとれないから、客に変な株や投資信託、売って儲けているところもあるからね。桃子さん、預けた資産のポートフォリオちゃんとみてんのかな、年間手数料の割合とか」


「そんなこと。私に聞いたって。今度、アンタが聞いてみてよ」


真澄はもはやそんなことどうでもいいというふうに、トオル君の首筋に唇を吸い寄せた。

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