第11話

「少額からはじめた方がいいとおもう。米国指数の積み立てが無難だよ。毎月積み立てで、そこをコアにして、あとのそうだね、20%枠の資金で個別株を買うといい。まあ誰でも知ってる有名な会社から伸び盛りまで、会社の規模にあわせて資金をいれるといいよ」


小黒は具体的なプランと株のティッカーシンボルをプリントして、桃子にみせた。実をいうと投資の話はしばらく消えていた。そんなことはどうでもよかった。彼との時間が桃子にとっては唯一だった。


出会って、3か月、今日になってようやく投資指南をうけることになったのだ。


「アプリで買えるからね。最初は僕がやるから、覚えて」

小黒はAY証券のアプリを押して、子気味よく注文を出した。


「アメリカは夜中に相場が動くけど、設定すれば予約注文ができる」

桃子は小黒の手元の動作を見ているようで、あまりみていなかった。横顔ばかりみていた。


「ほら」

桃子の視線を受けると小黒は優しく唇に触れてきた。


「ありがとう」

桃子は待ちきれずに小黒からスマホを取り上げ、導くようにその場で横になった。

外で食事の後、ここ3回ほど桃子のアパートで夜を重ねていた。


「愛してる」

小黒は桃子の瞳をみながら、ささやいた。

ずっとこの人といたい、もはや小黒なしでは桃子の生活は成り立たなかった。

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