第15話 身重のクロ、丸山家の一員に
その夜。🌟🌙
毛布の上のクロを囲み、丸山家の家族が勢ぞろいしていた。
「なるほどね。それでこの子を引き取って来たというわけか」
父親の一郎が言うと、広司がきまりわるげにお道化てみせる。
「とうさん、ごめんね。また扶養家族を増やしちゃって(笑)」
「でもねえ、あんなところを見せられたら、だれだって見捨ててはおけないわよ」
母親の美佐子が口を添えると、ふだんはおとなしい短大生のめぐみまで加勢する。
「とうさん、お願い。助けてあげようよ。ほら、この子、こんなにふるえて、よほど怖かったのね。この世にはひどい人間ばかりじゃないって、わからせてあげようよ」
にぎやかな団らんのかたわらで、クロはようやく穏やかな寝息を立て始めている。
*
その夜の丸山家の食卓は、動物処理場の話題でもちきりだった。(;_;)/~~~~~~
「で、頭陀袋にまとめて入れられていた仔猫たち、それからどうなったんだい?」
「協会の中本さんが引き取ってくれたよ。本当は愛護協会もすでに満杯なんだけど、犬でも猫でも、赤ちゃんのうちなら、引き取り手が見つかるかもしれないからって」
「ガス室のガスはね、せめて二酸化炭素を使えれば動物もさほど苦しまずに逝けるんだけど、予算や環境への影響を考慮して一酸化炭素をつかわざるを得ないんだって。そのために長い時間苦しませ、むごいことですって課長さんがおっしゃっていたわ」
箸を止め、黙って聞いていためぐみが低い声でつぶやいた。
「なんてひどいの。残酷すぎる。人間は思い上がっているわ」
一郎も美佐子も広司も、みんながいっせいにうなずいた。
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