第11話 保健所管轄の動物処理場



 

 北風が吹きすさぶ平野のただ中に、鉄柵で囲われた殺風景な四角い場所がある。

 荒れた畑や野原がどこまでもつづき、建物はおろか、木1本、人影ひとつない。


 はるか西方を通っている国道には、点々と連なる車列がちらちら見え隠れしているが、その騒音はここまで届いて来ない。🚙 🚚 🚙 🚚 🚚 ……………………

 一般社会と隔絶された異世界、それが地域の保健所が管轄する動物処理場だった。

 

 頑丈な鉄柵のなかには3つの建物がコの字型に配置されている。🏠🏢🏠

 入ってすぐ左手がプレハブの事務所で、その向かいが動物の一時保管所。

 そして、突き当たりの大きな建物が、ガス室を備えた動物処理場である。


 3つの建造物に囲まれた中庭は、昨夜の雪が溶けて、びしょびしょに濡れていた。


 その陰気な地面に、灰色の作業服を着た黒長靴履きの男性3人と、赤と黒の半コートを羽織った女性2人、それに高校生らしい少年が1人、所在なさげに立っている。


 男性たちは保健所の職員、女性と少年は近くの動物愛護団体のメンバーだった。

 そろそろ到着するはずの野犬狩りのトラックを、保管する側、助ける側、それぞれの立場で、それぞれの思いを抱きながら、黙りこくってじっと待っているのである。





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