第7話 おとうさんとのとつぜんの別れ



 

 高原都市の短い夏が終わった。

 秋が急いで駆け抜けていき、里山颪さとやまおろしが乾いた粉雪を運ぶ季節がやって来た。

 

 ある寒い夜、いつものようにクロを膝に乗せてテレビを観ていた孝夫は、急に身体をふたつに折り曲げ、うっと低い呻き声をあげると、そのままソファに倒れこんだ。


 キッチンで夕食の後片付けをしていた洋子がリビングの異変に気づき、「あなた、どうなさったの?!」慌てて駆け寄って来たとき、孝夫の意識はすでになかった。

 

 それからの出来事を、クロはあまり覚えていない。(ノД`)・゜・。


 けたたましいサイレンの音をひびかせて救急車がやって来たこと。

 救急隊員がどやどやと家に入りこんで来たこと。🚑

 孝夫を担架にのせて運び出したこと。

 あとから洋子がオロオロしながらついて行ったこと。

 

 玄関の扉が閉まり、「ピーポ、ピーポ」という悲しげな音が遠ざかって行くのを、タンスと壁のわずかな隙間にもぐりこんだクロは、ふるえながら聞いていた……。


      *

 

 そして、つぎの朝。


 ひと晩で老女のようにやつれ果てた洋子が、息子たちに抱えられるようにして帰宅したが、ほっとしたのもつかの間、黒い服を着た見知らぬ人たちがやって来て……。


 すすり泣き。

 お線香の匂い。

 読経の声……。





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