第5話 穴掘り職人(笑)クロの鼻面


 

 コロコロ太って愛らしくなって来たクロを、ある日、庭へ出してやった。

 すると、早くも一人前の成犬のように、しきりに土の匂いを嗅ぎたがる。


 翌日も出してやると、さっそく前足で引っかいて一心に穴を掘り始めた。

 夢中で掘り進んで、自分で掘った穴へグイグイと鼻先を突っこんでゆく。

 まるで、地中にすばらしい宝玉でも埋まっているかのように熱心に……。

 

 そうこうするうちに、横の道を通りかかった下校の小学生たちに、🎒

 

 ――やあい、ク~ロのお鼻は真っ黒け~。

   あ、ちがう、穴を掘って真っ白け~。


 にぎやかに囃し立てられると、乾き始めた土を鼻にこびりつかせたまま、きょとんと不思議そうに、そして、とてつもなく愛らしげに小首をかしげてみせるのだった。


 そうして掘った穴に気に入りのおもちゃ、おやつのジャーキー、玄関から失敬して来た靴やサンダル、洗濯物を埋め、見つからないように土をかぶせることも覚えた。


「だれが教えたわけでもないのに、本能って、ほんとうに不思議だよねえ」🐕


 おもしろがった洋子がわざと穴の周囲を歩きまわってみると、クロは困ったように眉根を寄せ、尻尾を垂れて、「すみません、白状します。ここに隠しました」とでも言いたげに、いかにもバツのわるそうな顔をしてみせるのだった。(・´з`・)

 

      *

 

 クロの身体は鮮明にその個性を主張し始めた。


 つるんと丸くて、身体に比べてやや小さ目な頭。

 胸から腹にかけ引き締まったシャープなライン。

 さらに先に伸びている、すらりと長い4本の脚。


 薄いピンクに盛り上がった肉球が、しっかりと大地を踏みしめている。

 被毛は漆黒の短毛で、胸には真っ白な十字があざやかに浮き出ている。


 最初ピンと立っていたビロードのような耳は、いつの間にか中ほどで三角に折れ、歩くたびに愛らしくピロピロ揺れた。月夜の散歩では、長く引いた影の耳も揺れた。

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