第3話 2代目クロとして迎えられる
気を取り直した夫婦は1匹だけ生き残った仔犬を頭陀袋からそっと出してやると、まるで人間の赤ん坊をあやすように、やわらかな声音で、やさしくあやし始めた。
「あらまあ、なんて愛らしいんでしょう」(´▽`*)
「おお、よしよし、いい子だ、いい子だ」(=^・^=)
最初のうち、仔犬は小さな身体を小刻みにふるわせて怯えていたが、やがて、鉛筆の先ほどの尻尾をチロチロふりながら、赤い舌の先で夫婦の手のひらを舐め始めた。
くすぐったい感触を懐かしみながら、ためらいがちに妻が言う。
「ねえ、あなた。この子、なんだかあの子の生まれ変わりみたい」
「そうだな。目鼻立ちから耳や足のかたち、胸の白い十字架もように至るまで、なにからなにまであの子にそっくりだ。……これも、神さまの思し召しかもしれんなあ」
それで決まりだった。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
愛犬を天国へ送った悲しみから長いこと立ち直れず、歳も歳だし、もう二度と動物家族を迎えることはないだろう、ふたりとも心に決めていたはずだったが……。🐶
――ミュー、ミュー、ミュー。
仔犬がふたたび風の子のような声で鳴き始めた。
「よしよし。いい子。あなたはきっと運の強い子。兄妹の分まで幸せになるのよ」
「そうだな、1匹だけ生き残って、こうしてわたしたちに出会ったんだからなあ」
「そうだわ、あなた、この子の名前、クロにしましょうよ」
「天国へ行ったクロの2代目、か……いいな、そうしよう」
仔犬を扱いなれた妻の手のひらにすっぽり収まった黒い仔犬は、すっかり安心したのか、ぷくっと丸い腹を仰向けにして、すやすやと穏やかな寝息を立て始めている。
東山の頂から昇り始めた大きな満月が、冬枯れの河原を淡々と照らしていた。🌕
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