十五
日が傾き始めた頃、真備は琵琶を抱えブツブツ呟きながら家に帰ってきた。
歩きながら、殺す以外で皇子を救う方法があるのか考えてみたが、麻呂の許可が得られず目の前の妖孼を取り逃がしてしまった今回の結果が悔しく、頭の回転が鈍り妙案が浮かばない。
「お、帰ってきた!!」
聞き慣れた声に真備が頭を上げると、家の門の前で加丹麻呂達近所の住民がたむろしていた。
「なんかさ、けんとーし様の家に入れなくてさ!どーなっとんの?押しても引いても蹴っても戸が開かんよ」
加丹麻呂が不思議そうな顔で真備に聞いた。
「それは四方に対賊用の陣を張っているからで……」
真備はしまったという顔をした。
唐から持ち帰った品々が盗まれないようにと陣を厚く張りすぎた結果、自分が入っても構わないと思う人まで固く締めだしてしまっていた。
後で入れる人を限定できるように陣を張り直そう、と髭をしごきながら考える。
「あ!いや、考えるのは後だ。それより、何かありましたか?」
「そうなんよ、実はな……ほら、
「は?」
男達の後ろから、痩せこけた少女が顔を出した。
「……は……はじめまして……」
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