第2話ㅤ被写体としては魅力的すぎる

 それから数週間が経った2月14日。女の子たちがそわそわと楽しそうに過ごしている。

 私はこの日、録音に協力してくれた人達にチョコレートを配り歩いていた。朝のうちにほとんどの人に配り終わって、あとは数人の女子と赤西くんだけだった。女の子は比較的話しかけやすいが、男の子はそうはいかない。

 けれど渡さないわけにもいかず、私は赤西くんの教室の前で待っていた。


「あ、赤西くん!」


 ドアから出てきた赤西くんの足を止めた。こちらを見るものの、表情は動かない。悪くいえば感情が読めないのだが、私からしたら被写体としてやっぱり魅力を感じる。


「この間のお礼です。その、録音の時の」


 そう言いながら、包装したチョコレートを渡す。


「ありがとう」


 その時、目元の筋肉が緩んで彼は笑った。

 あの写真に写っていたような、でもそうじゃない。写真よりももっと綺麗で鮮明。

 もしあの時、椿じゃなくて彼にピントを合わせたらこうだっただろうか。人物写真を撮らないからわからない。

 それに対しての興味なのか、ただ単に赤西くんに魅了されただけなのかわからないけど、私の胸はパーンッと弾かれたようにドキドキしていた。



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