簡潔でありながら詩的な文章、浮遊しているようで芯がある、そんな読み心地で気持ちよく物語の世界に誘われました。夜の公園の空気や中学の教室の雰囲気、そしてそこにいる主人公の心情まですっと入ってきます。うまく自分を伝えらえないもどかしさや小さな喜びに胸を高鳴らせるところなども、等身大の中学生がそこにいるようです。不器用な女の子が詩を通じて出会った人は、いったい何を伝えたかったのでしょうか。思わぬ展開も、そのあとの種明かしも含めて、巧みに構成された繊細で良質な短編です。ぜひご一読ください。
うっかり、あとがきから読んでしまい本編に。ささやかな勇気と巨大な勇気は同じで、蛮勇では無い背負う物を抱きしめた勇気に踏み出す事こそが尊く価値があるような読後感を感じました。表現や内容は極めて日常感で、そこにリアリティと人物の生身を感じました。素敵だと思います。ありがとうございました。
あるスーパームーンの夜、中学2年生の茶露こと「私」は、SNSアプリ「Chatter(チャッター)」にて「ちゃとら」という女性を知る。そうして、「私」と「ちゃとら」の不思議な交流が始まる。 一方、同じ夜に公園で偶然出会った、クラスメートの猫也に、「私」は想いを寄せるようになるーー。 甘酸っぱい青春の日々が、透明感あふれる文章で見事に表現されています。 読了後は、驚きとともにジーンと優しい気持ちになることができるでしょう。 素晴らしい一作に出会うことが出来ました。