第82章 みんなで火星を守るのだ④

「俺たちがこうして帰還できたのは、恵美さんのお父さん、宮島さんのおかげです」

 ゲバラが親子の気まずい雰囲気を察したのかのように、声をあげてきた。


「おとうが?」

 恵美が少し驚いたような声で訊き返してきた。


 みんなの前では、おとう、と呼ぶな! お父様と言え。マイナス2点を3点にするぞ! それと、ゲバラは、よくぞ言った。俺は脳みその中で採点表を示して娘を非難し、ゲバラを褒めた。


「はい。火星が救われたのは、恵美さんのお父さんのおかげです」

 ゲバラ、良いこと言うじゃねえか。


「ふ~ん。おとうに、そんな力があったかしら?」

 恵美が疑いの目を向けてきた。その眼は、アリーナも見ていた。


 やはり、アリーナと一緒に並んでいるのが、気に食わないようだ。


「いまここで、ゆっくりしている時間はないわ。計画の見直しを始めないと」

 そこに、たわいない親子の話に水でもさすかのように、アリーナが少し声を張り上げてきた。


「ああ時間がない。一分一秒も無駄にはできな。さあ、急ごう」

 ゲバラが同調する声を上げると、遅れてやってきたマルコフたちの出迎えを受け、車に乗り込んだ。

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