第79章 火星の小さな守護神⑦

「あいつの動きが止まった」

 ユーリーが声を飛ばしてきた。


「ああ、奴の体から熱が消えていっている」

 ゲバラが声を返した。


 ゾルダーはひどく苦しそうに顔を歪め、両手で腹を抑えて立っていた。


「冷たいものを飲みすぎて、腹でも下したか?」

 ゲバラが続いて軽口を吐いてきた。


「グォー!!」

 苦悶の顔を上に向け、口を開けて絶叫してきた。


「奴の体が固まりだした」

 ユーリーが興奮したように声をあげてきた。


 すると、ゾルダーは自分の頭を掴まえると、根こそぎ引き千切るようにして首からもぎ取った。もぎ取られた頭は背後の地面に放り投げられた。地面にドスンと落ちると、斜面をゴロゴロと転がり下に落ちていった。


「なんて奴だ。自分の頭をもぎ取りやがった」


 ゲバラの驚愕の声に、みんなぞっとした顔を浮かべていた。なにせ頭無しの巨大な怪物が不気味に立っているという、超ド級のホラー映画でもお目に掛かれない戦慄のシーンを見せつけられたからだ。


「宮島さんは?」

 アリーナがひどく心配した声を上げてきた。


 その声に、みんなの眼は怪物の腹部に注がれた。

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