第79章 火星の小さな守護神②

 ゾルダーの巨大な喉が迫ってきた。まるで地獄の入り口のようだ。いや俺にとって本当の地獄の口だ。その口が閉じる前にどうにか中に入ることができた。口が閉じたことで、いきなり暗黒の世界に飛び込んだような感じになった。


 ヘッドライトを点灯させた。瞳に飛び込んできた周りの異様な光景に、眼を見張った。だが周りをつぶさに観察する余裕などなかった。いきなり滝つぼにでも落ちるかのように押し流された。


 なんで本物の生物でもないのに、食道のようなものがあるんだ? 不満を飛ばしている間に、戦闘機は溶岩池のような場所にドンと落ちた。いったいなんだここは? さしずめ人間でいえば、胃袋のようなところか? しかし人間のように飯など食う必要がないはずなのに、なんでこんなものがあるんだ? 思わず口の中にまた声を飛ばした。


「まずい! 戦闘機が溶け出したぞ!」

 急いで戦闘機を発進させようとしたが、エンジンがかからなかった。


「まずい。非常にまずいぞ!」

 俺は焦りまくった。何度操作を繰り返しても、エンジンはガス欠のような音がするだけだった。


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