第78章 竜司の仇②


「左目も潰してやる」

 ゲバラは叩き潰そうとしてくるゾルダーの右手を巧みに掻い潜ると、ミサイルの照準を左目に合わせた。


 ブシュ! ブシュ! だが、弾は目玉に一発も当たらなかった。ことごとく巨大な腕に阻まれて眼玉には届かなかった。アリーナの弾も当たらなくなり、逆に叩き潰されそうな状態だった。なにせ、巨大な腕の長さは100メートルを優に超えている。両腕をブーンと振り回すと、まるで竜巻のような物凄い風圧に機体が激しく揺れた。


「どうした? 逃げているだけでは、俺様を倒せないぞ」

 ゾルダーがまた見下した声を飛ばしてきた。


「くそ~、眼を潰さないと、体に傷を負わせたぐらいでは、奴を倒せない」

 ゲバラの歯ぎしりするような声が耳に飛び込んできた。


「ゲバラ、奴の口を開けさせてくれ」

 俺は意を決した声を飛ばした。


「え? 口を」 


「ああそうだ。奴の口の中に入る。あの化け物を倒すには、中から破壊するしかない」

 俺は強い口調で答えた。


「まさか? そんなことをしたら」

 ゲバラが同意できないというような口調で声を返してきた。


「宮島さん、やめて! そんなことしたら、あなたの命が」

 アリーナが悲鳴のような声を飛ばしてきた。


「迷っている暇はない。たとえ眼を潰しても、あの怪物を殺すことはできない。体内に、絶対零度の弾をばら撒いていやる」

 俺は二人の声を押し返すように、再び強い口調で説明した。


 火星の人々を、娘を守るためなら、火の中にも飛び込む。

 その思いだけが、俺を突き動かしていた。

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