第77章 進撃の超巨大怪物⑦

「なるほど、核戦争で火星の空気は超温室状態になり、それを冷やそうとしてこの爆弾を使った。だが効果が効きすぎてしまい、逆に火星は冷えすぎた惑星になったということか」

 俺が眼を覚ますと、ゲバラが独り言のように声を発してきた。


「それは本当なの?」

 俺の傍らにいたアリーナが、ゲバラに眼を合わせ確かめるように訊いてきた。


「ああ。火星人たちの科学力は、人間のはるか先をいっていた。だが彼らの精神は人間とさして変わらなかったということだ。特に権力者たちはね」

 ゲバラが言葉を継ぎ足してきた。


 俺は口を挟まず、二人の顔に沈んだ眼をやった。なぜなら俺の脳裏には、この物質とは別に当時の地獄絵が、こびり付いていたからだ。


「それで、これをどう使う?」

 ゲバラに元気が失せた声で訊いた。


「あの怪物は高圧高熱の金星で変異したそうです。おそらく巨大化したのは、溶岩と金星とは真逆の火星の弱い気圧の差が理由だと思います。火星の気圧は地球の10%まで上昇しましたが、金星は地球の100倍近い超高気圧です。絶対零度のこの物質を奴の体内にぶち込めば、奴はエネルギー源を失います」

 ゲバラが力強い声で説明してきた。


「体内をカチンカチンに凍らせて、エネルギーを奪うということか」

 俺はよくわかったような口ぶりで応じた。


 だが本当は、ゲバラの説明をよく理解してはいなかった。なにせ絶対零度の物質は、野球のボールほどの小さな球体だ。200個ほどもあるが、これを野球のバッティングピッチャーよろしく、怪物に投げるのだろうか?

 自慢じゃないが俺に任せれば、コントロールはいいぞ。火星で証明済みだ。


「でもどうやって、これをあの怪物の体内に?」

 アリーナが、俺の口が動く前に訊いてきた。



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