第76章 ゾルダー⑦

「逃げた船はオリンポス山の火口付近に落下した!」


 俺の耳に、先に追っていた仲間の大声が飛び込んできた。オリンポスの火口は、阿蘇のカルデラがすっぽりと入ってしまう大きさだ。下手すれば、火口湖にドボンだ。


「乗っていた奴は、火星は寒いので、温泉にでも浸かりに行ったのかな?」

 俺は軽口を吐きながら、オリンポス山に向かった。


「あそこに温泉はないわ。あるのは溶岩湖だけよ」

 俺の独り言を聞いていたようで、すぐ横を飛んでいたアリーナが声を返してきた。


「船は溶岩湖に落ちた」

 先着隊員が報告してきた。


「ほら、奴は温泉に入りたかったんだよ。だが、いい湯加減の温泉ではなく、溶岩湖だ。溶岩にのまれて、お陀仏ということだ」

 俺はまた軽口で返した。


「いや、まて。溶岩湖の中で何かが動いている」

 キアヌの声が聞こえてきた。


「出てきた。巨大な怪物だ!」


「巨大怪物だと~?!」

 俺が訊き返す前に、遅れて追ってきたゲバラの声が飛び込んできた。


 火口の上空に集まった俺たちは、目を疑った。

 溶岩湖の淵に、背丈が20mはありそうな巨大怪物が立っていた。

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