第74章 防衛戦再び⑥

 俺は触れた部分が何かを確かめるように、右手を動かした。すると見えなかった機体が、またスーと現れた。俺は驚いたまま後ろに後退し、戦闘機を凝視していた。操縦席に乗っていた男が、元に戻したのだ。


「見えないだけでなく、他にもう一つ、武器があります」

 マルコフがプレゼンターのような顔をして、戦闘機の後部を触った。


「機首の発射口から眼に見えない網が噴射し、100m四方に広がります。その網に敵の戦闘機がかかったところを攻撃します」

 機首を指さし、説明を続けてきた。


「なるほど、網々作戦の騙し討ちか。卑怯じゃないか。でもいい作戦だ」

 俺は感心した口調で声を返した。


「これもゲバラが考案したものです」


 後で知ったが、ゲバラはガイガーと戦った経験から、相手が瞬間移動しながら攻撃してくる相手を防ぐ方法として考案したらしい。網に引っ掛けて相手の動きを封じ、身動きができなくなったところで仕留める。いうなれば蜘蛛の巣戦法だ。


 俺の瞼に、この見えない網に引っ掛かる戦闘機の様子が浮かんだ。それでも相手はAIの戦闘機だ。動きを止められる時間は3~5秒程度だろ。その間に相手を撃破しなければならない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る