第73章 まだ死ぬわけにはいかねえ⑥


「アリーナが、俺を?」

 俺もオウム返しで訊き返した。


 あまりのショックに、俺の頭はひどく混乱していた。いまでは家族以外に一番信頼している、いやそれ以上の存在の彼女に、銃で撃たれて殺されかけた? まさかとは思うが、嫉妬なのか?ある日、街に出かけたときだ。棺桶から目覚めて以来、人間の美女にお目にかかった。その俺の眼が、彼女は気に食わなかったのか? ありえない連想をするほど、撃たれた理由が思いつかなかった。


「宮島さん、撃たれたことを覚えていないのですか?」

 今度はレオニードが少し驚いたような顔で訊いてきた。


「あ、ああ、怪物と戦ったことと、アリーナが現れたことまでは覚えているが、その後の記憶が消えている」

 俺は記憶をなぞるように答えた。


「アリーナさんが撃ちました」

 ひょうきん顔の男がまたオウムのように喋ってきた。


「アリーナさんが撃ちました」

 オウム男が繰り返してきた。


「もういい、おまえは後ろに下がっていろ。すみません、彼は射撃の腕はいいのですが、頭は少し変わっていて」

 レオニードがオウム男を遠ざけて、事情を説明してきた。


「実は、宮島さんの胸には」

 改めてアリーナが胸を撃った理由を説明してきた。


「なるほど、そのために、奴らは俺の体を改造したってわけか」

 アリーナの判断で俺を改造できたことに少なからず疑念があったが、説明を聞いて納得した。ガイガーが筋肉隆々の肉体への改造を認めた理由は、別にあったということだ。


 俺にガーピスを殺させるために、超人に改造した。だがそれは不発に終わり、皮肉にもザイオンを倒す役にたったということだ。


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