第73章 まだ死ぬわけにはいかねえ⑤

 駆けつけてきた医療スタッフたちが、再生処置を続けていた。レオニードたちは背後で見守っていた。


「宮島さん」

 レオニードの声に、眠っていた俺の思考回路が動き出した。


「んん~」

 俺は二日酔いで目覚めたような、さえない声を発し、声をかけてきたレオニードに眼をやった。頭がすっきりしないのは、麻酔薬が体内にまだ残っているようだ。


「ここは?」

 俺は眼を動かした。


「ファームの中です」

 レオニードが安堵したような、少し笑みを交えた顔で吐いてきた。


「うっ」

 起き上がろうとしたら、胸がズキッと痛んだ。


「宮島さん、まだ寝ていてください。胸の傷口が広がります」

 今度は心配そうに声をかけてきた。


「この胸は誰が撃ったんだ?」

 俺は痛んだ箇所に眼をやり、しかめた顔で訊いた。


「え? 覚えていないのですか?」

 びっくりした顔で逆に訊いてきた。


「ああ。誰が撃った?」

 仕返しをしてやるという顔で訊き返した。


「それが……」

 レオニードは言葉を濁した。


「アリーナさんです。アリーナさんが宮島さんを撃ちました」

 レオニードが言い出せずにいると、背後にいた道化師のようなひょうきん顔の若い男が代わりに答えてきた。


「アリーナが撃った?」

 俺は俄かに信じられないという顔で訊き返した。


「はい。アリーナさんが撃ちました」

 ひょうきん顔がオウム返しのように、また言ってきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る