第72章 老人変態VS怪物⑧

 やはり怒りの精神力だけでは、勝つのは無理だった。酸素を必要とする体と、酸素を必要としない体の差が出てきた。ここまでか、と思ったときだった。


「そうはさせないわよ」

 アリーナの声だった。


 その声にザイオンが振り向くのより早く、アリーナが引き金を引いた。弾はザイオンの胸を貫いた。「グォ!」ザイオンは苦悶の声を漏らしたが、一発だけでは倒れなかった。すぐさま瞬間移動のように動いて、アリーナに的を絞らせなかった。弾は足元をかすめる程度で、まともには当たらなかった。射撃の名手のアリーナが外しているのは、おそらく俺がいるせいだ。流れ弾がドームに穴を開けないようにと考えているのだろう。アリーナはザイオンの足下だけを狙って撃っていた。だが、それがあだとなった。ザイオンの突進を止めることはできなかった。アリーナの目と鼻の先まで接近してきた。絶好のチャンス到来だ。この距離なら、100%当たる。


 だがそう簡単に撃たせはしまいと、ザイオンは猛突進しながら、地面を深く抉るように蹴り上げて土埃を起こし、アリーナの視界を遮った。撃った弾はザイオンの皮膚を抉っただけだった。

 バシーン! アリーナの銃を握っていた腕は蹴られて、銃を宙に弾き飛ばされた。


「この俺様を誰だと思っているのだ! ガイガーに代わる宇宙の帝王だぞ」

 見下すように吠えると、今度はアリーナに襲い掛かった。

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